会稽郡府に務める兄弟がいた。
兄弟にして、上司と部下。
そんな関係の二人だ。
要地の長官として、何充さん、
多くの客を対応しなければならない。
日々に追われる中、何充さんは
みるみる疲れていった。
これを心配した虞謇、
応対を絞った方がいいんじゃないか、
そう思い、家族のひとに
応対させる客人を選別させようとした。
うーん、じゃあ、どんな人物を
通すことにすればいいのかしら。
虞謇、その基準について考え、
虞存に見てもらう事にした。
虞存と虞謇が一緒に食事をする。
で、食事中にこの話を持ち掛けられた。
そうしたら、どうもこの基準が
「人品に優れた人」
的なものだったようだ。
虞存、ひとまず言う。
「なるほど、その考えはとても良い。
ならば、食事を終えたらさっそく
私からのコメントを付けよう」
そうして虞存、
虞謇が書いた基準案の後ろに、
こう書き加える。
「門番に
見識優れたものを置けるのであれば、
この通りにするとよい。
しかし、そんなすごい人物を、
お前はどうやって見つけてくるのだ?」
ピャンッ!
虞謇、慌ててこの話を取り下げた。
何驃騎作會稽,虞存弟謇作郡主簿,以何見客勞損,欲斷常客,使家人節量,擇可通者作白事成,以見存。存時為何上佐,正與謇共食,語云:「白事甚好,待我食畢作教。」食竟,取筆題白事後云:「若得門庭長如郭林宗者,當如所白。汝何處得此人?」謇於是止。
何驃騎の會稽に作さるに、虞存が弟の謇は郡主簿に作され、何を以て客に勞損せるを見、常客を斷たんと欲し、家人をして量を節せしめ、通ずべき者を擇ばしむ。白事を作して成り、以て存に見す。存は時に何が上佐と為り、正に謇と共に食せば、語りて云えらく:「白事は甚だ好し、我が食の畢りを待ちて教を作さん」と。食の竟うるに、筆を取り白事の後に題して云えらく:「若し門庭長に郭林宗が如き者を得たらば、當に白したる所が如くせよ。汝は何處にて此の人を得んか?」と。謇は是に於いて止む。
(政事17)
虞存、虞謇
郭泰