詩を詠んだ。
「大いなる山が崩れ、
広き海が干上がった。
鳥や魚は、居所を失ってしまった」
「崩」とか交えてくるのが、
なかなかに厄い。
桓温さまの簒奪謀議に
賛同していた、ってとられても
おかしくないですよ顧愷之さん。
ある人が、顧愷之に問う。
「あなたが桓温を
大いに頼りとしていたのは、
誰もが知っているところです。
葬儀では、さぞ盛大な
哭礼をなさったのでしょうね」
そんなに桓温好きなのかよお前、
なにもしかしてお前も共犯?
的ニュアンスがこもった問いである。
顧愷之は答える。
「すごかったよ。
鼻から漏れるのは荒涼とした北風、
目からは堤防が決壊した濁流。
だから、その泣き声は
雷鳴が山を打ち崩すかのようだったし、
その涙の滂沱たるや、
顧長康拜桓宣武墓、作詩云:「山崩溟海竭。魚鳥將何依?」人問之曰:「卿憑重桓乃爾。哭之狀、其可見乎?」顧曰:「鼻如廣莫長風、眼如懸河決溜。」或曰:「聲如震雷破山、淚如傾河注海。」
顧長康の桓宣武の墓を拜せるに、詩を作して云えらく「山は崩れ、溟海は竭く。魚鳥は將に何にか依らんか?」と。人は之に問うて曰く「卿の桓に重に憑せること乃ち爾れり。哭せるの狀、其れ見るべけんや?」と。顧は曰く「鼻は廣莫の長風の如く、眼は懸河の溜の決せるが如し」と。或いは曰く「聲は震雷の山を破るが如く、淚は河を傾け海に注ぐるが如し」と。
(言語95)
知るかボケ、悲しいもんは悲しいんじゃ、
ってなもんですな。