許詢、これにすっげえムカついていた。
あるとき
そこには王脩が参加していた。
何だとあの野郎、王脩のくせに
ご立派な講義に参加しやがって!
ムカついた許詢、西寺に出張ると、
いきなり王脩に論戦を吹っ掛ける!
対立する概念、AとB。
この両者はどちらが優れたものか。
そのような感じの議論だったようだ。
王脩がAの立場に、
許詢がBの立場に立つ。
喧々諤々の議論の末、
王脩、許詢に大敗を喫した。
すると許詢、今度は言う。
「おい今度は俺がA、お前がBだ」
そうして議論を再開してみれば、
やはり許詢が、王脩をコテンパン。
ドヤ顔の許詢、支遁のほうに向く。
「ハハッ、あなたのお弟子サマも
大したことはありませんな!」
すると支遁、
落ち着き払った面持ちで言う。
「なるほど、あなたはいっぱしの
論客でいらっしゃるようだ。
しかし、そこまで
けちょんけちょんにする必要が
どこにあるのだろうね?
議論とは、理を求めて
なされるものだと思うのだがね」
許掾年少時,人以比王苟子,許大不平。時諸人士及於法師並在會稽西寺講,王亦在焉。許意甚忿,便往西寺與王論理,共決優劣。苦相折挫,王遂大屈。許復執王理,王執許理,更相覆疏;王復屈。許謂支法師曰:「弟子向語何似?」支從容曰:「君語佳則佳矣,何至相苦邪?豈是求理中之談哉!」
許掾の年少なる時、人は以て王苟子と比ぶるも、許は大いに平らかならず。時の諸人士、及び法師の並べて會稽の西寺が講に在りたるに、王も亦た在り。許は甚だ忿なるを意え、便ち西寺に往きて王と論理し、共に優劣を決さんとす。苦はだ相い折挫せるに、王は遂にして大いに屈す。許は復た王が理を執り、王は許が理を執らば、更ごもに相い覆疏す。王は復たも屈す。許は支法師謂にうて曰く:「弟子の向の語は何に似たりや?」と。支は從容として曰く:「君が語の佳なるは則ち佳なれど、何ぞ相い苦なるに至らんや? 豈に是れ理中の談を求めたるか!」と。
(文學38)
許詢さん隠者のくせにエグいよなぁ……