【…………とりあえず分かった自己紹介しよう! 一応初対面だよね二人は。しれっと一ノ瀬さんが会話に混ざりこんでたからあんまり初対面感なかったけど】
厳密には初対面といっても対面はしてないけどさ。
【……え、いま?! 絶賛私たち戦闘中なんだけど??……あ、右から敵が二人きてる!】
画面内では、一ノ瀬さんのキャラが空中戦闘しながら弾を当てている。
弾凄い当てるなぁ……
【ちょっ、あお自分は死んで暇だからって余裕ぶっこいてるじゃん。絶対自己紹介するタイミング今じゃないって! というか自己紹介させるならまずこんな敵いっぱいる激戦区に降りるなあぁぁぁぁ! あ、後ろ別パーティーです!】
画面ではあおたちが四方八方いろいろな敵から撃たれている。
大変だなぁこれはうん。……俺死んでるから何もできないけどあはは。
【いやー、なんかジャンプマスター任されちゃったから、行くしかないなぁって。やっぱ空の1週間のエイムの錆は戦闘の中でしか取れないと思うからさ】
空のためを思って、ここに降りたとまで言ってもいい。
【そんな気遣いいらないんだけどぉぉぉぉ、やばーいいいいいい!】
【葵君普段鈍感なのに変な気をつかわないー!煙を幼馴染ちゃんのとこにだしたよー!】
【わっ、ありがとうございます!助かりますぅぅ!先輩アーマーわたしますぅぅ】
【ありがとー!ナイスすぎるぅぅぅ】
いやーいい連携!
俺は死んじゃったけど、こうやって二人の連携を深められたと思えば死んだ意味もあるってもんだ。
……あれもしかして、これが百合ってやつ?
なんか二人一緒にいたら、すごくいい匂いしそう。
うんうん。
それにしても、身体が言うことを聞かない。
肩が痛くて、微妙にいつもと動きに違和感がある。
やっぱこういう感覚が大事なゲームだと、少しのずれでもかなり変わってくる。
というか画面では、二人ともいい連携で敵を倒し続けてる。
あ、終わった倒し切った。
【ナイスないす!ナイスファイト!】
すごい、3パーティーくらいいたのに、全部倒し切った。
死んだ俺にできるのは応援のみ。
でも間違いない、これはみんなでつかみ取った勝利だ。
【あお】
【あおいくん】
と思ったけど、なんか勝った割に二人して声が低い。
【みんなの勝利だね!】
【ショック療法過ぎない?!】
【私初戦は顔合わせ程度にゆっくりやるとおもってたよ!】
なぜか避難囂々の嵐。
【戦闘に集中して、緊張をほぐそうかなって…………俺の】
【【
そりゃもちろん俺のだよ。
だってこんな仲人みたいなことしたことないんだもん。緊張しちゃうに決まってる。
【じゃあ落ち着いたところで改めて自己紹介しよう、俺のことはいいよね今更。じゃあまずは先輩のサキュバスマドンナこと一ノ瀬さん】
【葵君? 何しれっとサキュバスとか言ってんの? さすがに許さないよ? 私性にそんな奔放じゃないし、ね? …………そんなの付き合ってる葵君が一番わかってると思うけどなぁ、だって…………ねぇ?】
…………続きはぁぁぁ?!
なんでそこで止めるのぉぉぉ!!
そこで止められたら大変俺が気まずいんですけど?!
【…………あお? これ私カップル自慢聞かされそうになってるのかな?かな?】
や、やばい。
空がぴきぴきして暗黒微笑を浮かべそうになっている。見えないけどたぶんそうなってる、幼馴染だから分かる。
一ノ瀬さんも俺にヘイト向けるように黙っているし、こ、これはまずい。
【いやそうじゃなくて!…………一ノ瀬さんすいません、サキュバスなんて言ってすいません、ちょっとエッチでおっぱいがとても大きくてお綺麗で小悪魔っぽい先輩を表現したらそうなっちゃっただけですって】
【……まぁそれならいいかぁ】
ふぅあぶなぁ。
【…………あお、情けなぁ】
空には笑われたけどしょうがない。
なんせ一ノ瀬さんの機嫌損ねすぎるとリアルアタックありうるからね。
【で、自己紹介だっけ? ずっと話してみたかったんだよ! 葵君が自慢の巨乳幼馴染がいるっていつも私に話しててさ~】
【え、あおが?私のことを?】
【うん!話してくれたよー!】
話したっていうか一ノ瀬さんが聞いてきたから話したんだけどね。
【めっちゃ可愛い巨乳幼馴染がいるって!】
【…………】
あ、これ空照れてるな。
マドンナにそんな風に言われたら普通に照れるよね。
【整っているくらいしか言ってないと思うけどなぁ】
てかかわいいとか言ったっけ?
【あおいくんしゃらっぷ!】
【あおもう完全にしつけられてるじゃん】
【俺は一ノ瀬さんに躾けられてるんじゃない、一ノ瀬さんの料理の奴隷なだけだ!】
【あおいくーん?】
【はい!】
【なんで自信満々なの、というかそんなにおいしいの一ノ瀬さんの料理】
空が戦慄してるけど、まだ知らないからだな一ノ瀬さんの料理を。
あれ食べたらもう奴隷になる。
【うんやばい飛ぶ】
【飛ぶ?!】
【自己紹介続けるね~、名前は…………もう知ってるだろうから、まぁ夢先輩とか夢ちゃんとか適当にによんでくれたらいいよー! 好きなものはーお酒とたばことその他もろもろ! 嫌いなものは、めんどくさい人!】
【お酒と、たばこ…………?】
おー、驚いている。わかるわかるぞ?イメージとかけ離れすぎてるよね。
【…………あおがすすめたの? お酒とたばこ】
【なんで?!俺関係ないよそれは!】
【ふつーにすきー、チル!】
一ノ瀬さんから謎のチルいただきました!
【なんかイメージと違うけどぉぉぉぉぉぉお】
なんか急に叫びだしたと思ったら敵が来ている。
驚きの叫びか。
あ、倒した。
一人しかいなかったっぽいな、ハイド(隠れている人のこと)かぁ。
【強いね~、幼馴染ちゃんは】
【あ、空も自己紹介しなー、傍若無人な選択的オナニストさんどうぞ!】
【あお】
【あおいくん】
ふたりから絶対零度の声が聞こえた。
【ごめん静かにしときます!】
【ホント懲りないじゃんあお。 すいませんあとでセクハラしないように言っておきます! あ、私も自己紹介してなかったですね【葉山 空】って言います! お好きに呼んでください!】
【じゃ空ちゃんだぁ、私からも葵君には言っとくね~】
【……好きなものは美味しいごはん、嫌いなものはー、そうだなぁ怖い話!です】
【わっかわいい!】
かわいいとか言いながら二人して敵倒すのやめてもらっていいですか?
もう会話と画面があってないのよ。
画面では血なまぐさく戦いあってるのよ。
【…………自己紹介はこれぐらいにして早速質問! してもいいですか夢先輩!】
【夢先輩…………いい】
なんか一ノ瀬さん興奮してない?
というか俺が「夢」って呼んだ時笑わなかった?!
この反応の差はなに?!
ふぅ、まぁ落ち着くために一回エナドリを一飲みっと。
【……あおの好きなところなんですか!】
【ごほっ】
思いっきりむせた。
いきなり空がぶっこんできたんだけどどうしよう。