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第251話 レオパールへの再訪

―――残り時間僅かでレオパール魔導国に到着予定の黒の皇帝シュヴァルツ・カイザー


そんな船内で、ベッドの上に正座したエヴリンの膝の上で仰向けに横になった八雲は、柔らかな膝枕を受けながら差し出されたエヴリンの胸に吸いついていた―――


エヴリンは既に八雲の『神の手』の快感で、その身体を『完堕ち』させられて開発されていた。


「あん♡……うふふっ♡上手に飲む飲むできて、えらいわねぇ♡……ママのを吸いながら、おっきしちゃったのね♡ アハァ……ハァハァ♡/////」


舌と指で敏感なところを弄られるとエヴリンはビクビクと身体を震わせながら厚い吐息を漏らし、八雲の頭を撫で抱えながら、愛情をいっぱい与える。


「あああ♡ ンンウッ♡ も、もう、ママ……気持ちよく、なりすぎたから♡―――ンンンンウ~ゥ♡!/////」


エヴリンの胸を吸いながらその手によって弾けた欲望を噴き出す八雲を、エヴリンは愛おしそうに見つめて自らも絶頂を迎えてしまう。


「ああ……そう、上手……」


八雲が甘える子供の様にお願いをすると、その声にエヴリンの母性本能はキュン♡ と刺激された。


「んちゅ♡…………ハァハァ……上手に出来て偉かったわぁ♡ ママも夢中になっちゃった♡ うふふっ♡/////」


膝枕で横になったままの八雲は、そんなエヴリンの頬をそっと撫でながら、


「ありがとう……ママ」


思わず口から零れた『ママ』という言葉に、エヴリンは下腹部が再び激しくキュン♡ となった。


「うふふっ♡ これからも、二人きりの時は、ママって呼んで欲しいわぁ♡/////」


八雲の呟きにエヴリンは膝枕をしながら母性溢れる微笑みで膝の上の八雲を見つめるのだった―――






―――間もなくレオパールに到着すると艦長のディオネから艦内アナウンスが行われた。


エヴリンのバブみを楽しんだ八雲は彼女と身なりを整えてから艦橋へと向かう。


艦橋から見える地平線の先には緑の森が覆うエルフの国レオパール魔導国が広がっている。


そして、その緑の大地の途中に広がった平野に見えるのはレオパールの首都ウィズドムの建物群だ。


天翔船黒の皇帝シュヴァルツ・カイザーは、その首都ウィズドムの中心であるサピエンツィア議事堂の上空までやって来ると静かに空中に停止して、八雲達は降下用のゴンドラに乗った。


その頃、地上では―――


「エルドナ様?!謎の物体が空に!!―――ど、どうか避難を!!!」


―――議事堂にいたエルフの高官達は、代表であるエルドナ=フォーリブス導師を避難させようと騒々しく走り回っていた。


「落ち着きなさい!―――あれはシュヴァルツ皇国の皇帝であられる九頭竜八雲陛下の乗る天翔船という空を翔ける船です。急いでお迎えの準備をしなさい」


以前エヴリンから天翔船の存在を詳しく聴いていたエルドナは、一目でそれが件の天翔船であると理解する。


「こ、黒帝陛下の!?―――か、畏まりました!!」


議事堂の者達もルドナの件で八雲のことは知っているので、その名を聴いてはすぐに出迎えの準備を始めるしかない。


慌ただしく動く高官達の中で、エルドナは黙って空を見上げていた―――






―――上空の天翔船からゴンドラに乗って八雲達一行が議事堂前の広場に下り立つ。


「―――黒神龍様、そして御子様。ようこそレオパールへ。皆様もようこそいらっしゃいました。それと、エヴリンはお帰りなさい」


ゴンドラから降りてきた八雲達をエルドナが議事堂の外まで出迎えに現れて歓迎の挨拶をする。


「久しぶり、エルドナ。なかなか会う機会がなくて申し訳ないと思っていたんだ」


「いえ、何を仰います。陛下はシュヴァルツの皇帝位に即位されて、御多忙だったことでしょう。しかし、今日突然の訪問は―――」


「―――その件については、中で話しても?」


エルドナの口にしようとした言葉が『シュヴァルツ包囲網構築条約』の件だと察して、八雲は議事堂内での会談を申し込む。


「……そうですわね。このような場所で口にすることではございませんでした。すぐにご案内致します」


エルドナの指示で八雲達は中の貴賓室へと案内される。


八雲とノワール、そしてユリエルとクレーブスは同じ部屋でエルドナの用意した席に着き、今回も西部オーヴェスト以外の国のフォウリン、フロック、雪菜、サファイア、オパール、マキシ、ウェンスは別の貴賓室で休んでもらうことにした。


エルドナと共に彼女の相談役であるエヴリンも同席している。


「―――先ほどは失礼致しました。それで、早速ですがシュヴァルツ包囲網構築条約について、それが陛下のご来訪の目的と思って間違いございませんか?」


エルドナから本題を問い掛けると八雲は頷いてから、


「レオパールにも使者は来たんだよな?」


今度は八雲からエルドナに問い掛けた。


「はい。既にエヴリンからお聴きの事と思いますが、発端はティーグルの侯爵だというダニエーレ=エンリーチと名乗る男が議事堂を訪ねてきたところから始まりました。突然の訪問でしたが、エンリーチ卿はティーグルの外交委任状とイロンデルの外交代理の委任状を持参しておりました」


エルドナの説明に八雲は、うん?と首を傾げる。


「イロンデルの委任状はイロンデル公が発行していたんだよな?それじゃあ、ティーグルの委任状は誰が発行していたんだ?」


するとエルドナは、静かにその問いに答える。


「ティーグル公王領第二王子―――ゲオルク=ツヴァイト・ティーグル殿下です」


「オゥ……ここで出てくるのか、懐かしいよ……ゲオルク君……ハハハ……」


領地に蟄居を命じられて大人しくしていると思っていたゲオルクが、ダニエーレの委任状の発行者だと聴いて八雲は乾いた笑みを浮かべる……


そして脳裏には、以前アークイラ城の玉座の間で踏ん反り返っていた赤い髪を肩くらいで切りそろえた優男が浮かんだ。


八雲の隣に座っていたノワールは、


「あの時の小僧か?―――まったく!我はまだあの時の屈辱を覚えているぞ!」


自らの御子生誕の宣言を行った日に、自分を黒神龍の偽物扱いしてきた時のことを忘れてはいなかった。


「ドオドオ!―――落ち着いてノワールさん。それで、レオパールはもう返事をしたのか?」


「はい。条約を持ち掛けられたその場で即刻拒否致しました。ルドナの件で、この国は黒帝陛下に返し切れないほどの御恩を受けました。その陛下の国と対立するような条約に署名することなど出来ません」


「そう思ってくれているのは正直嬉しいよ。だが、こうなったらフォック、ウルス、レオパールと三カ国も条約を締結出来ずに、結べたのはフォーコンだけ。でも……これじゃあ、とてもじゃないけどシュヴァルツを包囲するなんて、無理じゃね?」


「誠に恐縮ですが……確かにその通りです」


エルドナも困惑した表情を浮かべる。


「イロンデル公はこうなることを予測していなかったのかな?」


「……分かりません。ウルスが加盟しなかったことは、もしかすると誤算だったかも知れませんが」


「ウルスのバンドリン陛下とは此方から協力体制を敷いて、農園と酪農の発展を促してきた。バンドリン陛下にはイロンデルが戦端を切っても動かないように話しはつけてあるよ」


「―――流石ですわね。しかし、そうなりますと益々この包囲網は不可能となりますわね」


「いずれにしてもレオパールもウルス同様、自国から動かないで欲しい。何かあればこっちで対処するから。巻き込み事故でレオパールの国民が傷つくなんてことにはしたくないんだ」


「承知致しました。そのように高官にも軍にも周知させておきます」


「頼むよ。俺達はこの後、リオン議会領に飛ぶ予定だ」


「まあ!そうなのですか?ゆっくりして頂けないのは心苦しいところですわ……」


「事態が事態だしね。何かあればエヴリンに伝えてくれたら俺と連絡がつくよ」


「あら♪……エヴリン、いつの間に陛下と……」


そこで隣のエヴリンを少し悪戯っぽい笑みで見つめるエルドナ。


「うふふっ♡ もう未亡人とは言わせないわよ♡ あれの時の陛下は本当に凄いんだから♪」


「貴方にそこまで言わしめるなんて、陛下は余程の手腕をお持ちと言う事ですわね♡」


「その辺についてはノーコメントで……」


国家間の会談が猥談になりだした空気を読んで、八雲は困った顔になっていく。


「おほほっ♪ ねぇ?本当に可愛いでしょう?エルドナもそろそろ陛下に貰ってもらって身を固めたら?」


「おい!エヴリン!?」


「―――そうね♪ その時は是非、陛下に娶って頂けたら嬉しいですわ♡/////」


冗談なのか本気なのか読み取れない表情を浮かべるエルドナの仕草に、


「その件については前向きに検討を十分重ねさせて頂きまして今後の状況を見てから然るべく後に返答させて頂きます」


早口で政治家の言い訳のような返答を返す八雲。


「よかったじゃないエルドナ♪ 前向きに返答してくれるって♡」


「おい、なんで最初と最後だけ切り取るの……」


「それでは楽しみにお待ちしておりますわね♡/////」


「あ、はい……」


圧を感じるエルドナの微笑みに、八雲はそう返事するしかなかった。


「フフフッ♪ おい八雲、エルフはこう見えて性欲が旺盛な種族なんだ。相手を共有するなんて考えを種族で推奨しているのはエルフくらいだからな!」


「そういうことは、もっと出会った始めの頃に教えておいて欲しかったんですけど?俺の背徳感どうすんだよ……」


今更なノワールの捕捉に八雲はジト目で睨み返す。


「―――よいではないか♪ お前の『龍紋の乙女クレスト・メイデン』に、また新たな女が加わることに我は反対しないのだから。むしろ楽しみが増えたぞ♪」


笑顔でそう返してくるノワールには、やっぱり敵わないと笑みを返すしかない八雲だった―――






―――そして会談を終え、サピエンツィア議事堂の前で別れを惜しむエルドナ達。


「今度はもっと、ゆっくり出来るようにして来るよ」


八雲は見送りに来てくれたエルドナ達にそう話してから、エヴリンに向き直す。


「―――教えた『伝心』は大丈夫だな?エヴリン」


「ええ♪ これでいつでも貴方とお話出来ると思うと幸せだわ♪」


「おいエヴリン!あまり煩く『伝心』して、八雲を困らせるんじゃないぞ!」


ノワールはエヴリンに釘を刺しておくつもりでそう告げると、


「うふふっ♡ 心配しなくても、貴女にもちゃんと『伝心』するから、寂しがらないでノワール♪」


「わ、我は別にっ?!……ま、まあ、お前がどうしてもと、言うのならやぶさかではないが……/////」


「ええ、どうしても!よ♪ 元気でね……ノワール」


「うむ。お前も息災でいろよ。何かあれば我が必ず駆けつけよう」


なんだかんだと言いながら、お互いに友情を確かめるノワールとエヴリン。


だが、そんな中で―――


【貴方も、『ママ』のおっぱいが欲しくなったら、いつでも会いに来てちょうだいね♡/////】


―――『伝心』で八雲にだけ届いた声と、それと同時にたわわな胸を、たゆん♪ と揺らせるエヴリン。


「……ゴクリッ/////」


(ママン……おぱぁい……)


バブみの魅了に掛かりそうな八雲は生唾を飲み込みながら、そっと目を逸らしてゴンドラに乗り込むのだった。


慌ただしい中で天翔船黒の皇帝シュヴァルツ・カイザーは、レオパールからシュヴァルツ皇国のリオン議会領へと舵を切って、同じくリオンに向かっている白雪達との合流を目指す飛行に旅立っていった―――






―――その頃、


この度のシュヴァルツ包囲網構築条約の立役者になりたい男……


―――ダニエーレ=エンリーチは、レオパール魔導国から船に乗り込み、水平線の向こうに見える島国を目指していた。


「フンッ!あのエルフめ!黙って条約に署名しておれば、このような面倒を引き受けることなどなかったと言うのに!」


船の甲板で目の前の島国―――『ソプラ諸島連合国』を睨みつけるダニエーレは醜い顔を歪めながらひとり愚痴をこぼしていた。


―――自分がイロンデルを利用するつもりで持ち掛けたシュヴァルツ包囲網を、実はイロンデル公王ワインド=グラット・イロンデルに使い倒される様に利用されていることを気がついていないダニエーレは、ワインドから授けられたレオパールと条約不締結となった場合の代案を実行するため船に乗り込んでいた。


ワインドの代案とは―――


(しかし、まさかあのソプラとゾットのふたつの島国を包囲網に加えろなどと……イロンデル公は儂が思っている以上に恐ろしい男だった……このような苦労をして手間を掛けるのもゲオルク殿下にティーグルを手中にしてもらうための布石。そうして儂が美味いところを持って行くための布石でもあるのだからなぁ♪)


―――ワインド公王から命じられたのは、海を隔てた『ソプラ諸島連合国』と『ゾット列島国』による海上封鎖だった。


しかし、ソプラとゾットは昔から領海問題を始め、これまで数々の問題を抱えている。


それらを覆すほどの手がなければ両国の条約署名など成り立ちはしないのだが、その点についてもワインドから土産を持たされている。


ダニエーレは両国への親書の内容を思い返しても、必ず上手くいくと信じて疑っていなかった。


「クックックッ♪―――もうすぐだぁ♪ 我が野望は着々と達成に向けて動いておるぞっ!!」


だが―――


顔を歪ませて笑いが止まらないダニエーレの背後で、ひとりの美女が醜い男を鋭い視線で見つめていた。


元々序列外のメイド達龍の牙ドラゴン・ファングに監視させていたダニエーレを、八雲の指示によって《空中浮揚《レビテーション》》で此処まで追ってきたジェーヴァである。


その醜く歪んだ笑い顔を睨みながら……


「貴方の運命は……八雲様に叛旗を示した時点で終わっているのです……ダニエーレ=エンリーチ」


普段のおどけた口調とは違って、マジ声トーンのジェーヴァがひとり客船の物陰からそう囁いた―――


―――レオパールからリオンに向かう八雲の黒の皇帝シュヴァルツ・カイザー


フォックからリオンに向かう白雪の雪の女王スノー・クイーン―――


―――そして海を渡りソプラに向かうダニエーレ=エンリーチ


それぞれの思惑が動き出す中で、シュヴァルツ皇国は陰謀の渦中へと向かっていくのだった―――



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