―――北の地平線に面する首都レッドの郊外に立つ者達は、
『
第二位
『勝利する者』ブリュンヒルデ
第三位
「未来を司る者」スクルド
第四位
「先駆者」ヒルド
第五位
『杖を振るう者』ゴンドゥル
第六位
「強き者」スルーズ
第七位
『武器を轟かせる者』フロック
第八位
『槍を持ち進む者』ゲイラホズ
第九位
「盾を壊す者」ランドグリーズ
第十位
『計画を壊す者』ラーズグリーズ
―――以上、九名
『
序列03位
クレーブス
序列04位
シュティーア
序列07位
アクアーリオ
序列08位
レオ
序列10位
リブラ
序列11位
ジェミオス
序列11位
ヘミオス
序列12位
コゼローク
―――以上、八名
『
副長
「幸福」のエメラルド
四番
「情熱」のルビー
六番
「高潔」のサファイア
七番
「創造」のオパール
八番
「潔白」のトパーズ
九番
「誓い」のラピスラズリ
十二番
「聡明」のアクアマリン
―――以上、七名
『
セカンド
『賢明』のサジェッサ
フォース
『願い』のウェンス
エイス
『夢』のレーブ
トゥウェルフス
「希望」のエスペランザ
ナインス
「勇気」のコレッジ
イレヴンス
「自由」のリベルタス
―――以上、六名
闘技場にいるアリエス、フレイア、ダイヤモンドなど闘技場で観客を護る者や紅龍城を護る者、レギンレイヴといった回復役以外のヴァーミリオンに滞在する各神龍勢力の美しき眷属達が集う。
郊外にあるフレイアの防護障壁の際までやってきた精鋭三十名。
「此処はヴァーミリオンで今はフレイアが不在です。ですからブリュンヒルデ、総指揮は貴方にお願いします」
クレーブスがこの場の戦闘指揮を第二位のブリュンヒルデに託すと告げる。
「承知した。我らが国土を蹂躙するものは、魔物であれば尚のこと容赦はしない。この戦いの指揮は―――『勝利する者』ブリュンヒルデが取らせてもらう!」
紅蓮剣=
「中央右は我等『
中央左は『
右翼には『
左翼は『
ブリュンヒルデの指示に全員が頷いて返す。
「魔物の数が凡そ三百万匹……それなら―――ひとり十万匹を狩れば問題ないな」
ルビーがまるで買い物にでも行くような軽い口調で告げると、
「そうですわね♪ あのぉ~捕獲した分は食材にさせて頂いてもよろしいでしょうかぁ?」
「えっ?!……ああ、それは構わないが……アクアーリオ、見た目に合わず逞しいな……」
アクアーリオの食材確保宣言にブリュンヒルデは彼女の逞しさを聴いて思わず驚きの表情を見せる。
「うふふっ♪ うちは食べ盛りの子達も多いですから♪」
「そ、そうか……分かった……」
(八雲殿……普段からそんなに食べるのか?)
勘違いしつつ少し困惑したブリュンヒルデだったが―――
「よしっ!!―――では、皆に武運をっ!火属性魔術攻撃準備!!!」
―――まだ遠い地平線の彼方に立ち上がる土煙を剣で指し示して攻撃準備の声を上げる。
その声に全員の正面に魔法陣が浮かび上がり、その中心に魔力が収束されていく―――
ゴンドゥル、クレーブス、エメラルド、レーブの各勢力魔術担当であり仲良し魔女四人組は迷わず火属性魔術・極位
「よしっ!―――攻撃開始ィイッ!!!」
ブリュンヒルデの号令と同時に、四つの《極焔》と二十六の《炎爆》が一斉に発動・発射されて、三百万の
―――その炎の塊が向かっている魔物暴走の先鋒
【GYAHAAA―――ッ!!!】
【GUHO!GUHO!―――ッ!】
【SYAHAAA―――ッ!!】
まるで黒い海に広がる波のような三百万の異形の魔物達が、唯一直線に正面に見えるヴァーミリオン皇国の首都レッドに向かって暴走する。
土煙を上げて進む魔物達の中には、巨大なモノから人のような小型のモノまで大小様々な魔物達がいて、狂気に満ちた表情でレッドのすべてを破壊し、喰らおうと本能の赴くままに叫び声を上げながら進んでいた―――
―――しかし、そんな狂気の津波となった魔物暴走に、空中から飛来する赤い炎の塊。
そして、その巨大な炎の塊が―――
―――今一斉に着弾した。
四発の《極焔》が横並びに着弾するとそこから爆炎と轟音が四方に広がるように爆風と共に吹き荒れ、そこに二十六発の《炎爆》が次々に飛来して着弾しては爆発を巻き起こしていく―――
【GYUAッ?!―――】
【KYAUUUッ?!―――】
【KISYURURUッ!?―――】
―――着弾時に先鋒を走っていた魔物達は気がついた時には蒸発する業火に飲み込まれ、更に後ろから続く魔物達も暴走で止まるに止まれず、後ろから押される形で目の前の業火に次々と押し込まれていき、その身を黒焦げにして大地に倒れていく。
「先制攻撃は完了したっ!では―――総員、突撃ィイイッ!!!」
ブリュンヒルデの号令によって神龍の眷属達が残りの魔物を掃討するために突撃する―――
―――それは、圧倒的強者による弱者の蹂躙と表現されても仕方のない有様だった。
ある者は武器を手に魔物の大群を一直線に切り進み―――
ある者は喜々として魔物を刻み、その身をバラ撒きながら進み―――
ある者は攻撃魔術の『
ある者は笑みを浮かべて食材として使えそうな魔物を吟味していた―――
―――そんな脅威の敵に魔物達は本能で『恐怖』を感じ取る。
「だが一匹たりとも北には帰さん!この際一気に魔物の掃討をさせてもらうっ!!!」
ブリュンヒルデはこの魔物の大群を、此処で仕留めることでこの先のヴァーミリオンの脅威を取り除こうと考えていた。
そして自らも手にした紅明に剣閃を走らせて、魔物を次々と討伐していくのだった―――
―――そんなブリュンヒルデ達の戦いを見ている八雲達
古代龍の背中でイェンリンとブリュンヒルデ達の戦闘を見ていた八雲は、
「あれ、最初の一撃で半分くらい吹き飛んでなかった?」
「ああ、間違いなく半分は焼け死んでいたな。第二射を撃たなかったのはブリュンヒルデの判断だろう。驚いて散り散りに逃げられては討伐に骨が折れる。残りを全員で掛かって完全に殲滅するつもりなのだろう。再び
だが八雲は―――
(いや、驚いてたのはその最初の一撃のことなんだけど……百五十万も吹き飛ばすって、どんな強さだよっ!?……あ、俺もやろうと思えば出来る、のか?)
―――とブツブツ心の声を呟きながら、フルフェイスの中で顔を驚かせたり顰めたりと忙しく表情が変わっていた。
【―――どうしたのマスター?そんなに変な顔して?何かの隠し芸?】
《|偉大なる黒神龍水霊装《ノワール・ロード・オンディーヌ》》と一体化している水の妖精リヴァーが、八雲の巡り巡る表情の変化に思わず問い掛ける。
「隠し芸じゃねぇよっ!」
「どうした?いきなり大声を出して?」
リヴァーの声が聞こえないイェンリンは訝しげな表情を八雲に向ける。
「ああ、いや!何でもない!何でもない!アハハッ!いやぁ~皆マジで強いなぁ~!」
誤魔化しながらも神龍の眷属達の戦い振りを感心する八雲。
そんな八雲とイェンリンの足元に膝をついていたダヴィデは―――
「バ、バカな……そんなこと……ふざけるなっ!!ふざけるなよっ!!!なんだあの魔術はっ!!!なんだあの化物染みた強さはっ!!!お前達は一体、何なのだァアアッ!!!―――ふざけるなァアアッ!!!」
―――狂った様に吐血しながら叫び、怒鳴り、八雲達を睨む。
「―――黒神龍の御子ですが、何か?」
「―――紅神龍の御子だが、何だ?」
絶望感に飲まれるダヴィデに、八雲とイェンリンは追い撃ちを掛けるように淡々とそう答えた―――
そんなふたりを前に、ダヴィデはゆっくりと仰向けになって後ろに倒れる……
「ハハッ……ゴホッ……ハハハハッ!!!」
そして突然、声を上げて笑い始めた。
「なんだ?今更、気でもふれたのか?」
眉を顰めてダヴィデを見るイェンリン。
「ゴホッ!ゲホッ!フフッ……まさか、これほどの力を持つ相手だとは……儂も考えが足りなかった……と、いうことか……」
「今さら反省会か?お前があの鉱山でやっていたことも含めて、とてもじゃないが見逃せないぞ」
ダヴィデに一辺の温情はない八雲がそう告げると、ダヴィデは静かに笑う。
「フッ……確かに……この状況では儂の負けは必定……最早逃げ場はないだろう……」
「なんだ?随分と物分かりがいいな?まだ何か企んで―――」
―――そう言い掛けた八雲の目の前で古代龍の背中がまるで液体の水面のように波打ち、ダヴィデの身体がそこに沈み込んでいく。
「―――この野郎っ!!!」
高速で移動した八雲が沈みかけのダヴィデの胸に蒼い刃がついた蒼太刀夜叉を突き立てて―――
「―――『
―――地獄の業火をダヴィデに着火する。
「グゥアアアッ!!!おのれっ!!!―――」
―――苦しむ表情を浮かべながらも、ダヴィデの身体は完全に古代龍の体内へと消えていった。
【グフッ!―――九頭竜八雲ぉお!まだ、戦いはこれからだぞォオオッ!!!】
古代龍の体内から響き渡るダヴィデの声―――
―――すると、ダヴィデが一体化した古代龍が巨大な叫び声を上げる。
【GYUAAAAA―――ッ!!!】
その叫び声に周囲で黒神龍と紅神龍相手に戦闘を繰り広げていた他の古代龍達が、突然向きを変えて八雲とイェンリンが乗る古代龍に向かって飛んでくる―――
「ッ!!―――なんか不味いぞっ?!イェンリンッ!!!」
―――隣に立っていたイェンリンの膝裏に腕を通し、グイッと持ち上げた八雲。
その瞬間、イェンリンは八雲の首に腕を回して掴まる―――
―――そして背中の六枚のスラスター・ピットから風を噴射して上空に飛び立つ。
「ふおぉ~♪ お姫様抱っこだな/////」
「はしゃいでる場合じゃねぇ……あとお姫様でもない……」
余計なことを言った八雲のフルフェイスをポコリと叩くイェンリン。
「そこはお姫様扱いするのが男の甲斐性だぞ!……しかし、あの死霊使いめ……」
「ああ、まったく往生際の悪い男だ……」
上空に飛び立った後、ふたりが乗っていた古代龍に残りの十五匹いる古代龍達が次々に掴まっていくと同時に、中心にいるダヴィデが体内に逃げ込んだ古代龍から触手が伸びて他の古代龍達を刺し貫いていった。
そして、空に響く
【――――――
ダヴィデの詠唱によって、まるで液体のようにドロドロとした物体に変化していく古代龍達が中心にいるダヴィデの潜む古代龍の肉体に纏わりつき、元々巨大な身体が更に強大化していく―――
【八雲!イェンリン!―――ふたりとも無事かっ!!】
それまで多数の古代龍を相手にしていた黒神龍と紅神龍が空中のふたりに近づく。
「八雲よ、余は紅蓮に乗る。お前もノワールへ」
「ああ、それはいいけど、あれはどうする気だ?」
紅蓮の頭にイェンリンを送りながら、変化する古代龍を指差す八雲。
「余は紅蓮を操縦して『
「えっ!?『
聴き慣れない言葉に八雲が問い掛ける。
「よく見ておけ!八雲!さあ、いくぞ紅蓮!!―――『
紅蓮の頭上に乗るイェンリンの叫びに呼応するように、紅蓮の頭上から赤い紐のような光がイェンリンの両手両足に何本も絡みつき、まるでイェンリンが巨大な人形を操るような状態になる。
「受け取れっ!!―――『
そしてイェンリンが手にしていた黒炎剣=
―――その巨大化した焔羅を手に握る紅蓮。
「―――これが『
まさに人龍一体と化したイェンリンと紅蓮―――
その様子を見て―――
「何それっ!?カッコイイッ!!!―――そんなこと出来んのっ!?」
【何だそれっ!?カッコイイッ!!!―――そんなこと出来るのかっ!?】
―――八雲とノワールが同時に驚きの叫び声を上げる。
「おい、ちょっとまて……八雲は兎も角、何故ノワールがこれを見て驚く?お前、黒神龍だろう?」
イェンリンが紅蓮を操りながら顔を顰めてノワールに訊ねると、
【いや、だって……我は、八雲が初めての御子だから……そんなの出来るなんて知らなかったぞ/////】
恥ずかしそうに答えていた……
「ハァ……八雲!お前、今ちゃんと見ていただろうっ!!いいからノワールの上でやってみろ!!!」
「お、おう!そうだなっ!それじゃあ……よろしくお願い……します。ノワールさん……」
【あ、ああ、その、初めてだから、優しくだぞ?/////】
人間サイズの八雲と黒神龍の姿のノワールが向かい合ってモジモジとし始める……
「―――いいから早くしろっ!!!」
ふたりのオドオドした態度に痺れを切らしたイェンリンが怒鳴りつける。
「ハイッ!!―――『
黒神龍の頭上に乗った八雲が叫ぶと―――
ノワールの頭上に乗る八雲の叫びに呼応するように、ノワールの頭上から黒い紐のような光が《|偉大なる黒神龍水霊装《ノワール・ロード・オンディーヌ》》を纏った八雲の両手両足に何本も絡みつき、まるで八雲が巨大な人形を操るような状態になる。
「よしっ!受け取れっ!ノワール!!―――『
そして八雲が手にしていた蒼太刀夜叉と蒼太刀羅刹を空中に投げると、ノワールから立ち昇る黒い炎のようなオーラが夜叉と羅刹を覆い、それを受けて二本の太刀が巨大化し始める―――
―――その巨大化した夜叉と羅刹を手に握るノワール。
「―――出来た!!『
上空に浮かぶ二体の神龍―――
―――巨大化した黒炎剣=焔羅を握った紅蓮に乗る『
―――巨大化した蒼太刀夜叉と蒼太刀羅刹を握ったノワールに乗る『
御子と一体化した黒の神龍と紅の神龍が、今目の前に現れた巨大な古代龍の集合体と対峙する―――
【何をしようと無駄なことだ……儂は更に進化して、神の領域に足を踏み入れたのだ】
―――古代龍の集合体
イェンリンに斬り飛ばされた四本の古代龍の首も新たに再生され、更に巨体になった本体から二十本の龍の首が生えて長い首がヒュドラのように彼方此方を向きながら蠢いている―――
―――その背には片翼五枚ずつの翼が生え、その尾は十本の尾がウネウネと揺れ動いている。
「あれって……何ギドラさん?」
「訳の分からんことを言ってないで、サッサと仕留めるぞっ!八雲、
「―――俺の剣技もノワールが使えるってことだな」
「フッ♪ 理解が早いな!だが、魔術やスキルもすべてが繋がっている!いいか、お前とノワールは一心同体となったのだ!そのことを覚えておけばよい―――来るぞっ!!!」
イェンリンの説明中に二体の神龍に迫る古代龍の集合体―――
「―――ッ!それじゃあ、
【ああ!八雲!お前、ネーミングセンスのLevel、絶対上がってるぞ!】
「マジかよ!?帰ったら雪菜に自慢しよっ!!!」
向かって来る古代龍王に、八雲とノワールは両手の夜叉と羅刹を構えて、最終決戦へと向かうのだった―――