「へー、結構あるんだな」
お守りや木刀、お菓子やキーホルダー、金メッキの小判やおみくじ等々、神社のお土産屋さんにしてはバリエーションが多かった。
「俺も買おうかな、なるみちゃんに」
俺は鳥居の形をしたピンク色のキーホルダーを買った。家族にはお守りを買っておいた。
「そうですねー。私はこれにしましょう」
トアリが手にしたのは、二メートルほどの矢であった。
「これ欲しかったんですよー。『破魔の矢』」
なにに使うつもりだ。
「これを、なるみに近づいてくる下品なことしか考えてない男に放つとして」
放つとしてって何? 確定?
「なるみにはお守りかな。あとキーホルダー」
その辺は普通か。
「お父さんとお母さんには。………………………………」
なにその間。なんかとんでもねーもん買おうとしてんじゃねーだろうな。
「ああ、これにしましょう。湯飲みを一つずつ」
普通か。
「私の分は木刀買ーおうっと」
普通か。
「あと、おみくじ引きましょう」
だから普通かて。
「あっ、
「ありがとうございます。よーし、引きますよー……。何だ、吉か」
普通か。
「さっ、城ヶ崎くん。私はこれだけ買うので、お支払いお願いします。お金は渡しますから。お釣りからさっきのおみくじの分、取っておいて下さい」
「はいはい。了解しましたよ」
買い物を済ませた後、俺は忘れ物に気付いた。
「なあトアリ、お婆ちゃんには買ったか?」
「……いえ……。忘れていたわけではありませんが……。まだまだお婆ちゃんに顔向けできないっていうか。今の私じゃ……」
寂しげな声でトアリは言った。
「……じゃあさ、二人で買わないか? お婆ちゃんのお土産」
「二人で、ですか?」
「ああ。二人で買って、二人で『渡そう』。俺、トアリが他の場所で泊まったり、限定的な場所とはいえフルアーマー状態じゃなくても出られるようになったりと、ここまで良くなったのも、自分のお陰だと自惚れてるっていうか……。何だろうな……その、二人なら顔向けできるかなーって」
「……」
「勿論、トアリ自身も頑張ってくれたのは分かってるつもりだし……。どうだ?」
「……ええ……構いません……」
頷くことで、トアリは強く承諾の意を伝えてくれた。
「決まりだな。お金もそうだし、お土産の内容も二人で考えようぜ」
「……そうですね。とびっきりのものを買って帰りましょう」
「よし、じゃあ……えっと……」
お婆ちゃんは元気なトアリが好きだった。
外で楽しく遊ぶトアリが好きだった。
みんなの人気者で、太陽のように明るいトアリが好きだった。
今はもう、失ってしまったけれども……。
この先、少しずつ良くなっていくと思う。
まだ変化は見られなかったけど、周りも少しずつ変わってくれると思う。
その一歩を伝えられる何かを買うべきだと俺は思っていた。
トアリもそう思ったらしく、
「あっ」
俺とトアリは、同じものを指差したことに、揃えて声を出した。
「……なるほど……同じか……」
「そのようですね」
「何だよ。『まさかゴキブリと同じモノを選ぶなんて』って言わないのか?」
「言いませんよ。だってもう、城ヶ崎くんは人間タイプGですからね」
「あのな。俺は最初から人間だっつの!」
ツッコンだ時、ある人物が神社に入ってくるのに気付いた。