どうも、メガネです。
ボクは今からお土産を買おうとしているところです。
「どうしようかな……」
両親には湯呑みを買うとして……。自分にも何か思い出になるようなもの――、
(……ん?)
ここで、ある商品がボクの目に入った。
『妖怪が来てもこれがあれば安心! 破魔の矢!』
それは二メートルはある大きな矢だった。
(……なるほど……)
以前のボクなら『ええええええええええええええ?』とか情けなくツッコんでたに違いない。
でもね……ふふふ……今はもう、以前までのボクじゃないのだよ。
フルアーマー系女子に出会ったり、極悪非道六神獣及び魔王に出会ったり、幽霊とか動く金剛力士像に出会ったりして成長したのだよ。
この
「やあメガネくん。課外授業はどうでしたか?」
教頭先生の声だった。ふふ、以前までのボクならね、何でこんなところに教頭が居るのかとか驚いていたけど。
もう以前までのボクじゃないん――、
「いやー、北海道は寒かったです」
そう言った教頭の右半身は、綺麗に氷漬けになっていたのだった。
(え、えええええええええええええええええええ?)
早速生まれ変わったボクでも驚愕する出来事きたあああああああああ。
どこまで進化するんですかこの高校に携わる謎現象は?
「流石はゴキブリすら生息できないほど寒い地域ですね」
そうだとしても凍り付くのはおかしいですよね。
「仕方ありません。心のコスモを燃やして解凍しますか」
教頭は「かああああああああああああああ!」と叫びながら、バキバキバキッと氷を砕いた。
(え、えええええええええええええええ?)
自分で解けるのカヨ。えっ、じゃあなんでここに来るまでにそうしなかったの?
「はっはっはっ、驚かせてスミマセン。ちょっと北海道行ってたアピールがしたくて」
なにその夏休み明けワザワザ髪染めて登校してくる高校生みたいなノリ。
「ところでどうでした? ワタシが用意したジンギスカンは?」
ええ朝から重い朝食をありがとうございました。やっぱ教頭の仕業でしたか。
「えっと、美味しかったです……」
「そうでしょうそうでしょう」
教頭はニッコリと笑ってご満悦の様子。
「あとこれ。前にいただいて悪いなと思いまして」
教頭はふところから何かを出して、ボクに渡してきた。
焼きそばパンだった。
パンの生地に北海道産の小麦が使われた、超高級なものだった。
「え、これ……」
「前に返し損ねたでしょう? そのお詫びです」
ニッコリと、教頭は笑う。
「ありがとうございます……。そこまでしてくれて……」
「なあに。生徒のためなら何でもしますよ、ワタシは」
ハッハッハッと、教頭は豪快に笑った。
「して、メガネくん。課外授業はどうでしたか? 楽しめましたか?」
「あ、はい。まあ、楽しめましたし、色んな経験もできました」
「それは良かった。課外授業とは、そのためのものですからね」
ここで、教頭は腕時計を確認。
「おっと、こうしちゃいられない」
「なにかご用ですか?」
「ええ。今度は沖縄の方に行こうかと」
大丈夫ですか? 今度はアツくて半身丸焦げになったりしません?
「ええと、何しに行くんですか?」
「もちろん、修学旅行の下見です。あなたたちが二年生になった時の旅行先を模索しているところなのですよ」
「あっ、そっか。清キラは二年生で修学旅行でしたね」
「ええ。北海道もそのために行きました」
「えっ? 北海道には本物の極悪非道六神獣及び魔王を探しに行ったんじゃ……」
「ふふっ。あれは冗談ですよ。本物の極悪非道六神獣及び魔王が新幹線に居たことくらいお見通しです」
じゃあ何で見逃したんだろう……。
「あの子が悪い人じゃないことくらい、一目見たら分かります。我が生徒と仲が良いこともね」
……そこまで見通してたのか……。
やっぱり教頭先生ってタダモノじゃないな……。
「では、ワタシはこれにて失礼!」
サササッと、教頭は風のように駆けていった。
(そっか……)
とにもかくにも、言えることは……。
この学校は、教頭先生が居れば大丈夫。
それが紛れもない事実であることだ。