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70. Anotherstory.5 ~【隣で輝き咲く一輪花】未来~

70. Anotherstory.5 ~【隣で輝き咲く一輪花】未来~




 太陽は真上にある。心地よい朝、いやもうお昼か。今日は土曜日。あたしはめずらしく用事がないのでこんな時間まで寝ていた。寝る子は育つしね。


 そんなことを思いながら、あたしはベッドから起き上がった。カーテンを開けると、眩しい陽射しが降り注いでくる。


「今日はいい天気だなぁ……」


 そんな時、あたしのスマホが鳴る。画面を見ると結愛先パイからだった。あたしは急いで電話に出る。


「もしもし!?」


 《あら?どうしたの焦って?あーひとりでしてたんでしょ?》


「してません!電話切りますよ?」


 《冗談よ。今から会えないかしら?駅前に新しいカフェが出来たでしょ?そこに来てくれない?》


 結愛先パイからお誘い!これは行くしかないよね!あたしはすぐに支度を済ませて家を出た。


 そしてあたしは待ち合わせのカフェに着いた。そこには既に結愛先パイと紗奈さんがいた。結愛先パイがこちらに気付いたようで手を振ってくる。あたしも小さく手を振り返す。すると紗奈さんがこっちを見て微笑んだ気がする。気のせいかな?


「あっこっちよ凛花」


「はい。こんにちは紗奈さん」


「こんにちは新堂さん。」


 これどういうこと?なんで紗奈さんも一緒なんだろ?まぁいっか。とりあえず注文をして席に着く。するとすぐに店員さんが来た。


「凛花は何飲む?オレンジ?コーラ?好きよね?」


「いや結愛先パイ、あたしがそんなの飲んでるの見たことあります?アイスコーヒーで」


「じゃあアイスコーヒー3つで」


 紗奈さんが注文してくれる。優しい人だなぁ……本当にあたしとは全然違うし、大人っぽいというか綺麗だし……。しばらくして飲み物が届いた。一口飲んだところで紗奈さんが話し始める。


「それで話ってなに?結愛?」


「紗奈にはちゃんと言っておきたくて。この子は新堂凛花。私の彼女なの。」


「結愛先パイ……」


「おめでとう。なんとなく分かっていたけど、新堂さんは私と違って純粋で可愛い子じゃない。結愛にはもったいないんじゃない?」


 わざわざそのために……結愛先パイ……私のために。それからあたしたちは雑談をした。結愛先パイと紗奈さんはとても楽しそうに思い出話をしていた。あたしは聞いてるだけで少し寂しかったけど、結愛先パイが楽しそうなので良かった。


「少しお手洗いに行ってくるわね。」


 結愛先パイは席をたつ。気まずい。何か話した方がいいよね……あたしがそんなことを考えていると紗奈さんの方から話してくる。


「新堂さん。この間はごめんね。私が軽率すぎたね。結愛から紹介してもらってからの方が良かったよね。不安にさせちゃったでしょ?」


「いえ……」


「でも。あの時の結愛の顔を見て、私ね少し嬉しかったんだ。あなたのこと本当に好きなんだって思ったから。あんな怖い顔を見たのは久しぶりだったし。」


 そう言って紗奈さんは笑う。その笑顔はとても可愛くて綺麗だった。あたしは聞いちゃいけないかも知れないけど、あとで悩むのは嫌なので紗奈さんに聞くことにする。


「あの紗奈さん。結愛先パイのこと好きなんですか?」


「好きだった。今はただの友達。私彼氏いるし。別に女性が好きなわけじゃないよ。」


「そうなんですね……。なんか変なこと聞いてすいません。」


「ううん。新堂さん。結愛はいつも気丈に振る舞ってるけど、とても繊細な子なの。だから結愛のことお願いね?」


 しばらくすると結愛先パイが帰ってきた。


「あら?何の話?」


「結愛がスケッチ大会でカエルにビックリして川に落ちた話をしてたところよ。」


「ちょっと!そんなこと言わなくていいでしょ!」


 結愛先パイが顔を真っ赤にして怒っている。こんな表情の結愛先パイ初めて見たかも。


「あっもうこんな時間。彼氏が待ってるから私は帰るね。また遊ぼうね新堂さん?」


 紗奈さんは帰って行った。結愛先パイはまだ赤いままだ。そしてアイスコーヒーを一口飲むと結愛先パイはあたしに話しかける。


「いきなり呼んでごめんなさい。一応……あなたのこと言っておきたいし、あなたが不安そうだったから……。」


「あたしのためですか。ありがとうございます結愛先パイ。」


 結愛先パイは顔を赤くしている。あたしは今どんな表情をしているだろうか。多分、きっとあたしも結愛先パイと同じだろう。お互いに照れてしまう。


「ねぇせっかくだからこのまま買い物にいかない?」


「はい。」


 そしてあたしたちは一緒に服を見に行ったり、ご飯を食べたりとデートを楽しんだ。とても楽しい1日だった。結愛先パイはあたしのどこが好きなんだろう?気になるので聞いてみる。


「あの結愛先パイはあたしのどこが好きなんですか?」


「ふふっ。そうね……そういうところよ。」


「答えになってませんけど……。」


 はぐらかそうとしているのか?あたしは納得できない。なのでさらに質問をする。


「全部とか言わないでくださいよ?」


「はいはい。あなたってすぐ泣くし、落ち込むし、でも喜んだり、楽しそうにしてて、私の前で全てを見せてくれてるって思うの。そして何よりそのメンヘラ女みたいな性格も私は好きよ?」


 メンヘラって……結愛先パイ……それ褒めてます?確かにそういうところはあるかもだけどさ……。


「結愛先パイ。メンヘラが好きなんて本当に変態ですね?」


「そうね。言ったじゃない。私は普通じゃないの。」


「なら安心ですね。メンヘラのあたしでも?」


「ええ。これから先も現れないでしょうね?あなたにとって、私みたいないい女は?」


 そう言った結愛先パイはすごく魅力的で可愛い笑顔をくれた。あたしは今、最高に幸せを感じている。


 これからもずっとずっと一緒にいれたら……。そしていつかあたしが結愛先パイの隣で輝く一輪花になれたら……。そんなことを思いながらあたしは微笑み返すのでした。

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