85. Story.7 ~【流星群に願いを】~③
そして次の日。今日の天気は晴れ。テレビでも流星群の話題で持ちきりだ。あたしはそれをぼーっと見ている。昨日夜遅くまで起きて【流星群に願いを】を読み終えたからかな?それとも、良く漫画やアニメとかにある、結愛先パイの風邪がうつったりした?とにかく結愛先パイが元気になってたら一緒に流星群を見たいな。
それより、結愛先パイのことが心配だよ……。そんな事を考えていると結愛先パイが起きてくる。
「おはよう凛花。」
「結愛先パイ!体調どうですか?」
「ええ。だいぶ良くなったわ。ありがとう。」
そう言って結愛先パイは微笑む。その笑顔を見てあたしも嬉しくなってしまう。
「でもそんなに早く良くなるなんて、あたしの愛の力ですね!お粥作ったり、タオル代えてあげたりしましたからね!」
「ええ。いっぱい汗かいたものね。あれが一番効果があったわ。」
「絶対違います!薬のおかげです!」
それから結愛先パイと一緒に朝ごはんを食べて、またソファーに座り、一緒にテレビを見る。結愛先パイが元気になって良かったよ。なんかほっとしたら力が……。
「凛花?あなた大丈夫?顔赤いわよ?私のうつったかしら?熱測って。」
「へっ?」
なんでこのタイミングで?結愛先パイは体温計を渡してきた。これはもう……やるしかないよね。
ピピッ 体温計が鳴る。37.6度。うん。完璧に結愛先パイの風邪うつったねこれ。そんなことを考えているうちにどんどん頭がボーッとしてきて、眠くなってきた。
「凛花。布団で寝なさい。」
「はい……。ごめんなさい。」
「いえ。私のがうつったのだから。私こそごめんなさい。とりあえずゆっくり休んで。」
それからあたしは寝室にいき布団にはいる。情けない……。せっかく結愛先パイと流星群を見ようと思っていたのに……。
「凛花。何か欲しいものある?」
「大丈夫です。」
「そう。なら服を脱いで?風邪治るわよ?」
「余計悪化しますよ!それにそんなことする体力ないです!昨日しましたし。」
結愛先パイは少し考え込んだあといつもの悪い顔であたしにこう言った。
「あなた。自分がしたい時にしかしないのね?ひどいわ。」
「そういうわけじゃ……。その言い方ずるいですよ!」
「あら。私がしたい時はいつでもしていいのかしら?」
「そ、それは……」
「ふふっ。冗談よ。早く寝なさい。」
結愛先パイのバカ……。意地悪なんだから……。そう思いながら眠りにつく。それからしばらくして目が覚める。何時間ぐらい寝たんだろ。時計を見ると15時を過ぎていた。リビングに行くと結愛先パイがキッチンにいる。
トントン 包丁の音。何か作ってくれてるみたいだ。あたしが起きたことに気づいた結愛先パイは料理を中断する。
「ダメじゃない。まだ寝てなさい。」
「はい……。喉が渇いて、お水のもうかなと。」
「口移しする?」
「しないです!!またうつりますよ?」
「あら。残念。」
全くもう……。そう言ってまた結愛先パイは作業に戻る。あたしは寝室に戻ると布団に入る。しばらくすると美味しそうな匂いがしてきた。あぁ。なんか幸せな気分になるな。少し遅めのお昼。結愛先パイのお粥だ。
「さぁ出来たわ。凛花。食欲あるかしら?」
「はい。いただきます。」
レンゲを使ってお粥を口に運ぶ。結愛先パイが作ったお粥はとても優しい味がした。結愛先パイが側に居てくれて、こんな風に看病してくれるだけで幸せだよ。
「どう?おいしいかしら?」
「はい。すごくおいしいです。」
「良かった。」
それからあたし達は他愛もない話をしながらお昼ご飯を食べる。こういう時間がとても好き。結愛先パイの笑顔を見ていると本当に心が温かくなる。
「そういえば今日は流星群なのよね。」
「あっそうだ。あの机の上の小説勝手に読んじゃいました。面白かったです。」
「ああ。【流星群に願いを】ね。凛花。あの小説はとても切ない話よね。主人公がヒロインと見たかった流星群を一緒に見ることが出来なくて、それでも無数に降り注ぐ流れ星にお願いをするのよね。一つでも願いを叶えてくれる流星があることを信じて……。」
結愛先パイは懐かしむように話す。一つでも願いを叶えてくれる流星があることを信じて……か。あたしの願いも叶えてくれるのかな……。
あたしはそのまま薬を飲んで眠ることにする。でも……どうしても結愛先パイと流星群が見たい。だから、あたしは結愛先パイの手を握る。そして結愛先パイの顔を見ながら言う。
「あたし。結愛先パイと流星群が見たいんです。だから……。」
「凛花……。そうね。私も見たいわ。凛花と一緒に。だからゆっくり休みなさい。起こしてあげるから。」
結愛先パイは優しく微笑みながらそう言ってくる。それからあたしは結愛先パイに頭を撫でられながら眠りについた。結愛先パイが隣に居る安心感に包まれながら……。