「おはようございます!いきなり訪ねることをしてしまったことをお許し下さい。こうでもしないとあなた方に接触することが出来ないと思ったので」
俺の顔をみるなり、昨日の最後に見せた笑顔で挨拶してきた。何か俺を見る目が尊敬する人と対する感じだな。あの戦闘光景がよほど印象に残ったみたいだ。
クィンを中に入れ、彼女がアレンを見るなり、やや赤面した顔で俺に問いかける。
「あの、昨晩はお二人ここでお泊りされたのでしょうか...?ど、同衾したのでしょうか!?」
色恋じみた質問してきやがったよコイツ...。やなんだよこの手の質問は。
「落ち着け、それぞれ別の部屋で泊まった...」
「私は二人で良いって言ったのに、別々にされた...寂しかった...。」
俺が言い終わる前に、アレンがしょぼんとした様子でセリフをかぶせてきた。止めてくれアレン。そのやり方は俺に効く。止めてくれ。
ほらぁ、クィンが赤面してワタワタし出すし。適当に宥めてさっさと本題に入る。
「まず…何でここに俺たちがここにいると分かった?」
「その説明は少し長くなりますが…。昨日の夜に私を含む任務にあたっていた兵士団はこの国に帰還して昨日の出来事を全て報告しました。あなた方のこともです。
国王様はあなた方の動向を気にしておられました。そこで兵士団に引き続きあなた方の行方を捜索するようにとの任務を下されました」
この国の王に目をつけられたか。強大過ぎる力を披露すると色んなところから目をつけられるのはよくあることだよな。
「私はあなた方が冒険者だという情報を手掛かりにギルドへ聞き込みをしてみました。
すると案の定あなた方がここで報酬をもらったことを聞きました」
聞いちゃったかー。
「その情報からあなた方がまだこの国に滞在しているのではないかと思い、色々聞き込みをして回って、ここに着いたというわけです」
やっぱり面倒くさがらず他国へ行った方が良かったか。けど仕方ないな。俺はともかくアレンに負担がかかるし。
「それで、あんたは俺たちを王宮に連れてくるよう言われてるんだろ?ここで捕まえるつもりか?」
顔を少し険しくさせて尋ねてみる。アレンも後ろでいつでも動けるようスタンバっている。
「本来ならそうするべきなのですが…エーレを容易に討伐する力を持つレベルの人を拘束するのは不可能に近いと私たちは国王様に意見しましたところ、無理矢理での連行はしないようにと命じられています。ですのでここで手荒なことは致しません。というよりしたくありません…」
国王も馬鹿ではないみたいだな。自分が目にしてもないのに俺の脅威を推測して強硬手段を禁じたか。つまり今はこいつは俺たちを無理矢理に連行することはないようだな。というか不可能だって分かってるんだ。
「じゃあ、何しにここに?」
「オウガさんがエーレを討伐してくれたお陰で私たち兵士団が全滅することが避けられました。
そのお礼として王国からオウガさんたちに贈り物を渡すようにと」
王国からお礼?それは想定外だ。
「何を渡してくれるんだ?」
「はい。王国から出された報酬で、オウガさんと赤鬼さんの分の入国許可証を発行しました。これは、ここサント王国はもちろん、他の全ての同盟国へ入国できるものです。それに、この許可証は私たち兵士団や王族でしか発行されないきまりだったのですが、私とコザ隊長、他の兵士の方々からの進言で国王様の許可をもらいました。これでオウガさんと赤鬼さんも他の国に自由に行き来できます!あと、金貨50枚と少しですが、礼金として...」
これは、思わぬ貰い物だ。先日拝借した通行証はこの国しか対応していないみたいだから、どこでも入国できるというのは非常にありがたい。単に金をもらうより嬉しいな。
「私も貰っていいの?昨日の討伐クエスト、私全然活躍してなかったのに...。」
アレンが遠慮がちにクィンに聞く。昨日は俺の戦闘を観戦していただけだった。何もしていなかったのに、自分にも褒美を貰うことに後ろめたさがあるのか。
「気にしないでください。オウガさんの仲間も恩人として扱うことになってます。遠慮はいりません!」
「そうだぞ、貰っとけ。アレ...赤鬼もエーレといい勝負するくらいに強いんだ。これは、クィンたちの将来の期待としての先行投資と思えばいいんだ。ここは受け取っとけ。」
アレンの頭に手を乗せて軽く撫でて諭す。
「コウガ……」
アレンはほんのり頬を染めて俺を見つめる。あーもう可愛いな。
同時に、呟く様に言ったアレンの発言にクィンが反応する。そして嬉しそうに俺の顔を見て、
「“コウガ”っていうんですね。お名前...。ここで分かるとは思いませんでした、コウガさん!」
と満面の笑みで言った...!しまった!アレンが口を滑らせたせいで本名が!
アレンも数秒してあっと口を覆った。つい言っちゃったといった様子だ。
「あー、はい。そうです、改めて名乗ります。俺はコウガっていいます。はぁ……」
仕方ないから名前だけ明かした。