「ははははは!予想通りの展開になったな。馬鹿だろあいつら。その程度の戦力で何でGランクの群れに勝てると思ったのかね…。
さて、そろそろ討伐しに行くか」
パーティーが半分くらい死んだところで屋根から立ち上がって「迷彩」を解いて、屋根を蹴って飛び降りる。その勢いのまま両脚を「硬化」させて近くにいたモンストールの脳天にドロップキックをくらわせる。
頭の汚い中身をぶちまけてモンストールは死滅する。そして俺の乱入に気づいたモンストールが数体俺に襲いかかってきたので、脳のリミッターを解除して全身を硬化・武装化させて派手に返り討ちにした。
俺の前にいたモンストールを全て片付けて死体となった冒険者どもを踏んで跨ぎながら進み、今も冒険者どもを蹂躙している残りのモンストールどものところへ行く。
「ゴマルっ!!た、助け――ぎゃああ”あ”!!」
「勝てるわけねぇ、こんな化け物――がっぐあ”……!!」
「ひぃぃいい!!ひぃぃいいい………え”ぎぉ!!」
次々やられていく馬鹿な冒険者どもを鼻で笑いながら、奴らを殺しているモンストールどもを背後から襲って討伐していく。
「くそおおお”お”お”お”お”!!何でだ!?なんでこの俺が逃げ回ってるんだ!?こんな、こんなはずじゃあ……!!」
パーティーのリーダーである金髪男は完全に冷静を欠いた状態になっていて、でたらめに魔法を撃ちながら必死にモンストールから距離を取ろうとしている。
「ハァ、ハァ…………ああ?お前はこの俺にデカい口を叩いたクソガキ冒険者…!まだ生きてたのか!」
俺に気づいた瀕死状態の金髪男は、苦しそうにしながらもニヤリと悪意に満ちた顔を向けてこんなことを言い出した。
「ちょうどいい、どうせ無価値なお前を利用するとしよう。お前を囮にしてやる!モンストールがお前に気を取られている隙に、俺が魔法であいつを討伐するんだ!
おら、分かったら囮になってこい!死んで俺の役に立ちやがれ!!」
囮だ?この俺をか?金髪男の言葉を聞いてつい、半月程前のことを思い出してしまう。あの実戦訓練のこと、俺だけ犠牲にされて落とされたあの時を…。
この金髪野郎はつくづくあのクソッタレな連中を連想させやがる。ホントに不快だ。
半狂乱状態で俺に掴みかかってモンストールのところへ投げ飛ばそうとしてくる金髪野郎の攻撃をひらりと躱して、ローキックを放って奴の両脚を破壊してやった。
「うぎゃあああああ!?」
骨が完全に折れてその場から動くことが出来なくなった金髪野郎を汚物を見る目で見下していると上から魔力光線が降ってきた。障壁を展開して防いでから空を見ると鷲か何かの鳥型のモンストールがこちらに狙いを定めていた。
鬱陶しいので「瞬足」でジャンプして鳥型モンストールの上を取り、ライダーキックを首にくらわした。勢いよく頭部がどこかへ吹き飛んで胴体だけとなったモンストールは力なく落下して絶命した。
「は…………!?」
一部始終を見ていた金髪野郎の顔は驚愕に染まっていた。次いで今までのクソな態度だったのがウソのように消えて、俺を敬うような態度を見せた。
「ま、まさかあなたがそんなに強いだなんて!先程までのご無礼、誠に申し訳ございませんでした…!」
両脚が折れているので上半身しか動かせない金髪野郎は頭を地につけて謝罪してきた。土下座をしているつもりらしい。
その時後ろからズシンと音を立てながら牛型のモンストールが近づいてくる。さっきまでこいつを追いかけていたモンストールだな。
「ヒッ!!そ、そこでお願いだ……!後で礼は必ずするから、あのモンストールと残りのモンストールどもをぶっ殺して俺を助けてくれ、いや下さい!!頼みます!俺はこんなところで死にたくねーんだよ…!」
迫りくる牛型モンストールに恐怖しながら、俺に助けてくれと必死に懇願してくる。モンストールは金髪野郎に目をつけている。このままだとこいつが先に殺されることになるだろう。
しきりに助けてくれと叫ぶ金髪野郎の前でしゃがんで、俺は感情の無く答えてやった。
「嫌だね」
金髪野郎は一瞬何を言われたのか分からないって顔をして俺を呆然と見つめる。構うことなく続きを話す。
「テメーこの戦いが始まる前に俺に何て言った?
お互いに助け合いは無しだ。戦いの邪魔はしない。たとえそいつが殺されそうになっても助太刀はしない、と」
金髪野郎は顔を青くさせる。しかし黙ることはせずに醜く足掻いてくる。
「た、確かにあの時はそう言ったかもしれねーが、実際は助けるつもりだったんだぜ俺は!本当だ!!もしお前が殺されそうになってたら割って入って助けるつもりだったんだ!!だからお前も、あの時のことは忘れて俺のこと助けてくれ!!」
「今となっては何とでも言えるよなぁ?
ていうか、テメーはさっき俺を助けるどころかモンストールの餌にしようとしおやがったよな?俺を囮にして助かろうとしてたよなぁ?その分際でよくまぁ、助けてくれと、言えたなぁ」
金髪野郎はさらに顔を青ざめさせる。
「あ、あれは仕方なかったんだって!俺もいっぱいいっぱいだったんだって!あ、謝るから!後でこの詫びと礼は必ずするから、水に流してくれぇ!!」
モンストールがさらに近づいてきたのを察した金髪野郎は、両拳を地面に殴りつけながらさらに喚きだす。
「なあ頼むよ!!助けてくれ!!お前のせいで動けないし魔力も底が尽きかけてんだ!!マジで殺されちまう、なあ!!
冒険者同士助け合いするのは当たり前だろ!?あんた強いんだろ!?早く後ろのモンストールを殺してくれよおおお!!」
地面に拳と頭をガンガンぶつけながら俺に助けを求めて醜く喚き散らす様を、俺は無表情で見下すだけだった。
そして牛型モンストールが金髪野郎を両手で掴む直前に、冷たく言ってやった。
「テメーこうも言ってたよな。
自業自得だ バーカ」
ガシッと掴まれモンストールの顔の前まで連れてかれた金髪野郎はこれ以上ないくらい叫んで、また俺に罵声をぶつけだした。
「ふざけんじゃねえ!!お前それでも人間かあ!!早く、助けろよ!!クソがあ、助け―――」
その汚い声を最期に、金髪野郎は頭からバリバリと喰われたのだった。モンストールの両手は奴の血で真っ赤に染まっていた。
「俺はもう半分人間じゃあねーんだよなぁ」
俺はその光景をただ無表情に眺めて、小さく呟いた。
「―――ざまぁ」