――翌朝
すっかり体調が良くなったので、今日は学校へ行くことにした。両親からは「病み上がりだから」と言われ、家の馬車を使って登校した。
早目に学校へ到着し、校舎の入口前で私はリオンが登校してくるのを待った。
本当は時間を見計らってリオンのクラスに行きたいけれども、ロザリンたちと揉めたこともあり気まずい。それにSS2クラスの人たちは一般クラスの生徒を見下す。
それを避けるためには、この場所で待つしか無かった。
「リオン……まだかしら」
校舎前で待ち始めて、15分程が経過していた。
その間に大勢の生徒たちが登校してきたが、未だにリオンの姿が見えない。
「もしかして、見過ごしてしまったのかしら……?」
不安に思ったその時、人混みに紛れるようにリオンが、こちらに向かって来る姿が見えた。
「リオ……」
名前を口にしかけ、ハッとした。
リオンはロザリンと一緒に歩いていたのだ。
まさか、今朝ロザリンと一緒に登校を……?
降ろした両手をギュッと握りしめ、私はリオンが来るのを待った。
「あれ? ユニスじゃないか。おはよう」
リオンは私に気づき、すぐに声をかけてきた。
「おはよう、リオン」
「……おはよ」
ロザリンはリオンの手前か、いやいや私に挨拶してくる。
「こんな所で何してるの? 友達でも待っていたの?」
自分を待っていたという発想はリオンには無いのだろうか?
「リオンを待っていたのよ。あの、少し2人だけで話がしたいのだけど」
リオンは一瞬私を見つめ、次にロザリンに視線を移した。
「ロザリン、先に教室へ行っててもらえないかな?」
「え? 何故私も一緒じゃ駄目なの? それとも私がいたら、しにくい話でもするつもりかしら?」
ロザリンが意地悪な目を向けてくる。だけど、ロザリンにはこれからする話は聞かせたくない。
「私はリオンにだけ話をしたいの。いいわよね? だって、私達は
「……そうだね」
リオンは頷き、ロザリンに声をかけた。
「ごめん、先に教室に行っててもらえないかな」
「え!? リオン様!?」
「ユニスが2人だけで話しがしたいと言ってるからね」
「わ、分かったわ……先に教室に行ってるわ」
ロザリンは肩を落として、校舎へ入っていった。もちろん、私を睨みつけていくのを忘れずに。
「それで、話って何?」
ロザリンがいなくなると、早速リオンは尋ねてきた。でも、その前に確かめたいことがある。
「リオン、今日はロザリンと登校してきたの?」
「え? 違うよ。正門前で偶然会ったからだよ」
「そう、ならいいけど」
やっぱり、おじ様とおば様はロザリンのことをまだ知らないのだろう。
自分の誕生パーティーの日に合わせて、報告するに違いない。
「話というのは、今度の誕生パーティーのことよ。場所なのだけど、リオンの家の中庭で開いてもらえなない? ガーデンパーティーなんておしゃれでしょう?」
リオンの家の中庭には大きな噴水が設置してある。
確か水魔法は、近くに水場があると一層強力になるはずだった。
「ガーデンパーティーか……うん、確かに素敵だね。クラスメイトたちも喜びそうだ」
「あと、 一つお願いがあるのだけど……聞いてくれる?」
「いいよ、ユニスにはお願いする権利があるからね」
権利……? 一体リオンは私にどんな権利があると思っているのだろう?
でも、そう言って貰えると都合が良い。
「私もリオンの誕生パーティーに友だちを連れてきてもいいでしょう? SS2クラスの人たちばかりでは、気まずいから」
元々私が試験に勝てば、クラスメイトを呼ばない約束だった。きっと、リオンは断れないだろう。
「何だ、それくらいのことならいいよ。それで誰を呼ぶの?」
「SS1クラスのアンディとザカリーよ」
「え……?」
リオンの顔に驚きの表情が浮かんだ――