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3章2 6年後の衝撃の事実

「驚くのも無理はないわね……眠りから目覚めれば6年も経過していたのだから。でも、本当に目が覚めて良かったわ」


母の目に再び涙が浮かぶ。


「私、一体どういう状況だったのですか……?」


覚えているのは林の中で気絶したリオンを担ぎ上げて、出口目指して歩いたこと。そして、突然背後で炎を纏った木が倒れてきたのだ。


「あ……」


そうだった。それで私は無意識に禁断魔法を使って時を止めて、リオンを連れて林の外へ……。


「ユニスは林の入口でリオンを抱えて倒れていたんだよ。そこを発見されて救助されたんだ。ハイランド夫妻は、すぐに他の怪我人と一緒に病院へ運んでくれて私達に連絡してくれたのだよ」


父が説明してくれた。


「そうだったのですか……でもリオンも、おじ様とおば様も無事で良かったです……」


私は、リオンの運命を変えることが出来たのだ。


「う、うむ。そうだな……」

「ええ、良かったわ……」


両親はどこか歯切れが悪い。


「リオンは火傷の怪我をしていないのですよね?」


念の為にもう一度尋ねると、母が頷いた。


「ええ。リオンは火傷をしていないわ」


「だが、1人だけ顔の半分を火傷で怪我をしてしまった人物がいたんだ」


父の表情は浮かない。


「顔の半分……?」


まるで、ゲームの中のリオンみたいだ。彼は火事で顔の半分を火傷してしまい、いつも髪で隠していた。


「ユニス、落ち着いて聞いて欲しい」


父がじっと私の目を見つめてきた。


「? はい……」


「リオンとの婚約は解消された」


「え?」 


「ユニスはいつ目が覚めるか分からない状況だった。それにリオンが起こした火事のせいで顔に火傷を負ってしまったのは少女だったんだよ。火傷の傷跡はもう二度と治らない。責任を取るためにリオンは、その少女と婚約することになったんだよ。ショックだったかい?」


「そ、そう……ですね……」


父の目には同情が込められていた。私がリオンから婚約解消を告げられていることをまだ報告していないから、そんな目で私を見るのだろう。

なので、別に婚約解消の話を聞かされても思うところは無い


「可愛そうなユニス……」


母がそっと私の頭を撫でてきた。


「それで、リオンは誰と婚約したのですか?」


「確か、同じクラスのロザリンという名前の女性だったと思う。可哀想に……左半分を大火傷してしまい、常にヴェールで顔を隠していると聞いているよ」


「え……?」


父の言葉に一瞬、耳を疑う。


「お父様。聞き間違いでなければ……今、ロザリンと言いましたか?」


「そうだよ、ロザリンと言ったが知っているのか?」


「は、はい……」


知ってるも何も、リオンは私と婚約解消してロザリンと婚約しようとしていた。

それにリオンが魔力暴走を引き起こす原因を作ったのもロザリンのプレゼントが原因。

結局、なるべくして2人の婚約は決定したということなのだ。


だけどリオンが気の毒に思えてならなかった。

きっと、この先ずっとリオンはロザリンの火傷を負った顔を見ることになる。そして、彼女のことだ。

リオンを責め続けるだろう。


私は推しであるリオンを幸せにしたくて奔走したのに、結局リオンは幸せになることは出来なかった。


一生消えることのない傷を負わせてしまったのなら……もうヒロインと結ばれることは出来ないだろう。


「可愛そうなリオン……」


思わずポツリと口にする。


「可哀想? でもユニスだって可愛そうよ? だって6年も目が覚めなかった挙げ句、リオンは別の女性と婚約してしまったのよ?」


母は再び私の髪をそっと撫でてくる。


「お母様……」


だけど、私はもともとリオンから身を引くつもりだった。どのみち婚約解消をお願いされていたし、リオンはヒロインにしか興味が無かったのだから。彼のほうが余程気の毒に思えてならない。


……あれ? そう言えばヒロインの名前って……?


私は頭を抑えた。


何故だろう? 夢の中ではヒロインの名前を覚えていたのに、今は少しも思い出せない。


「大丈夫かい? 目が覚めたばかりでまだ調子が悪いのだろう?」


先生が心配そうに声をかけてくる。


「……会わないと」


思いが口をついて出ていた。


「会う? 誰に?」


父が尋ねる。


「リオンにです。リオンに会って話をしたいのです」


今更、何をと言われるかもしれないが……それでも気の毒なリオンに元気づける言葉をかけてあげたかった。


すると――


「リオンには、関わってはいけないよ」


先生から意外な言葉が出てきた。


「何故ですか!?」


「ユニス……君は『禁断魔法』を使っただろう? リオンの側で」


「……え?」


何故先生がそのことを知っているのだろう?


「あの魔法を使うとね……身体に印が残るんだよ。それだけじゃない。他に身体に変化も訪れる」


「へ、変化……?」


一体先生は何を言っているのだろう? 


「驚くかもしれないが……まずは自分の目で確認したほうがいいかもしれない」


先生はベッドサイドに置かれた引き出しを開けると、鏡を取り出す。


「さ、今の自分の姿を見てご覧」


促されるまま、恐る恐る鏡を見つめ……目を見張った。


「そ、そん……な……嘘……」


鏡に映る私は……この世界のヒロインだったのだ――






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