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第8話 対決、レディ・オブ・シャークマンズ!!

 ==============

 バトルルール:殲滅戦

 残りタイム:15分00秒


 プレイヤー1:ハクト

 残HP:1000

 rank:2


 プレイヤー2:カグヤ

 残HP:1000

 rank:2


 プレイヤー3:アリス

 残HP:1000

 rank:2


 プレイヤー4:キテツ

 残HP:1000

 rank:2


 VS


 プレイヤー5:ヒメノ

 残HP:1000

 rank:2


 プレイヤー6:鮫田長男

 残HP:1000

 rank:2


 プレイヤー7:鮫田次男

 残HP:1000

 rank:1


 プレイヤー8:鮫田三男

 残HP:1000

 rank:1


 ==============


「ハクト君! さっきの試合みたいに、先行して撹乱よろしく!」

「了解! 任された!」


 試合開始のブザーがなった直後、ハクトは一直線にフィールドを直進して行く。

 その後ろをアリス、キテツ、カグヤの順番に後から付いて来ている状態だ。


 対するヒメノチームは……


「あなた達、さっさと登りなさい! 長男、あなたは一番上! 次男、三男は一段下のそれぞれ側面! ワタクシは正面に立ちますわ!」

「ああ、わかったぜぇ!」

「「へぃっ!!」」


 スタート位置からそれ程離れていない、一番近くのブロックの山に陣取ろうとしていた。

 ヒメノの指示に素直に従い、不良達はテキパキと所定の位置に付いて行く。


「いいです事! 基本的にブロックの上から降りないように! 落ちても直ぐに近くのブロックに上がる事! 平らな地面だと勝ち目は無いと意識なさい!」

「「「へいっ!!」」」


『レディ・オブ・シャークマンズ! 開幕早々、ヒメノ選手の指示でブロックの山で防衛を固め始めたー! 対してムーンラビットはそれに向かって走って行く、これはいわゆる攻城戦になるかー!?』

『地形をすかさず利用して陣形を整えるのは見事だ。……だが、ムーンラビットにはその陣形を簡単に崩せる選手がいるが、そこら辺は考慮出来ているのかな?』


 カラーと風雅の実況解説が鳴り響く。

 シャークマンズの行動速度は見事だが、ムーンラビット相手には意味が無いのでは無いかと、考察を出す。


 相手の行動を見て、一番後ろから付いて来ていたカグヤが追加の指示をハクトに出した。


「よっし! ハクト君、まずは一人こっちに突き落として! あとは私たちでなんとかするから!」

「分かった! 跳ね上げろ! 【インパクト】!!」


 ボウンッ!! 


 カグヤの指示を受けて、ハクトはその場で跳ね上がる。

 やや斜め上に向かうように跳ねて、丁度高さはブロックの山の一番上と同じくらい。

 つまり、不良長男と大体同じ位置の高さ! 


「来やがったなぁ! 行け、弟達よ!!」

「「スロット1! フォーム! 【スーパーミサイル】ッ!!」」

「っ、この間のミサイル!」


 以前の騒動の時に食らった、不良長男がメインで使っていたミサイルが飛んできた。

 今回は不良弟達に持たせていたらしい、しかも二つ同時だ。

 もしあの時これをやられていたら、なす術なく二つともハクトにヒットしていただろう。しかし……


「“スカイラビット”ッ!! もう当たらない!」

「「何いっ!?」」


 空中で【インパクト】を続けて発動。

 ルーティーンまでのスロットの制限が【バランサー】のお陰で無くなっている今、あの時みたいにキテツに投げてもらわなくても、空中で再度ギアを発動可能となった。

 これなら【インパクト】が残っている限り、よっぽどじゃ無いとあのミサイルには当たらない! 


 そしてハクトは、一直線に不良長男に接近して同じ足場にズザーっと着地する。


「ハロー、長男」

「テメっ!」

「そしてさよなら! 落ちろ、【インパクト】!!」


 軽い挨拶をしながら、振り向きざまギアを発動しカグヤ達の方面に吹っ飛ばそうとするハクト。

 これで長男だけムーンラビット3人に囲まれ、一気に一人脱落させられる。

 そう思っていた、が……


「ッ……」ビッ! 

「ん?」

「ぐおぁっ!?」


 蹴り飛ばした時、何か違和感。いつもより抵抗がデカい気がした。

 その違和感を感じながらもギアを放ち、不良長男は確かに【インパクト】で吹っ飛ばされた。


 が、想定の半分くらい、5mしか飛んでいない! 


「え、なんで!?」

「ふふっ……」


 ハクトが驚いていると、下の段のヒメノが微かに笑ったように聞こえた。

 さては何かしたか、そう思って視線を向けると……


 ……よく見ると、何故か手の指一本、ハクトに対して向けている。

 もう片方の手は指四本立てて、肘を曲げてあらぬ方向に差し向けている。


 “端的に言って変なポーズを決めていた”。


「え、マジで何それ?」


 そのことにハクトは本気で疑問を覚えるも、その一瞬は割と致命的だった。

 状況は待ってくれないのだ。


「「捕まえたぁ!!」」

「って、しまった!?」


 他に下の段にいた不良弟達が、手を伸ばして上の段のハクトの両足をそれぞれ掴んで来た! 

 割とガチ目に呆けていたハクトはあっさり捕まってしまう。

 しかし、この距離では弟達のミサイルは流石に飛んでこない。

 更にいうと、位置関係状弟達が他のギアも発動しても、ハクトに当たるとは思えない。


 なので、攻撃が来るとしたら……


「スロット1、【ドリル・ショット】ぉ!! 3連だぁッ!!」

「っ! やっぱりくるか!」


 吹っ飛ばされて、地面に落ちていた不良長男がギアを発動する! 

 ハクト達のいるブロックの山に対して、一番したのブロックに対して靴裏で蹴りつけるようにダンっ!! と壁を踏む! 


 ぱっと見て何をやっているか意味不明な行動だが、ハクトの立っているブロックの下からギュイイインッ! っと、嫌な音が聞こえ始める! 


「ドリルって言ったな! という事は、嫌な予感がする! 跳ね上げろ! 【インパクト】!!」

「「逃すかあっ!」」


 ギア名からどんな攻撃が来るか察して、さっさと逃げようとするハクト。

 それを防ごうと、不良弟達はハクトの足を掴む力を更に強める。

 しかしハクトの感覚的に、二人がハクトの足を掴んでいたとしても、2,3mは移動出来る想定だった。

 それだけあればブロックの上から二人を引きずりながらも、回避は十分可能な筈……


「ッ……」ビッ! 

「ぐっ、うん!? あれ!?」


【インパクト】は、発動した。衝撃も、いつも通り十分あった。

 が、二人に足を引っ張られている事を差し引いても、何故かハクトの肉体に凄い“抵抗感”が発生し、2,3m分の吹っ飛びすら出来なくなっている!! 


 ギュイイイインッ!! ボゴゴゴウッ! 


「っぐ、あああ!?」


 ==============

 プレイヤー1:ハクト

 残HP:1000 → 948 → 899 → 845

 スロット1:バランサー  (★常時適応中★) 

 スロット2:インパクト  (残りE:6/10) 

 ==============


 ハクトの立っているブロックの下から、ドリル状のミサイルがブロック内を貫通して襲って来た!! 

 足が掴まれたままのハクトは、そのままモロに全部食らってしまった! 


「ふふっ。良い調子ですわよ!」


 その様子を見て、ヒメノは不良兄弟達を褒めていた。

 またさっきと似たような変なポーズをしながら。


 いや、いちいちなんだろうあのポーズ。キャラ付けか何か? 


 ハクトは割と本気で疑問に思うが、それどころでは無い事も確か。


「っへ、ザマあないぜぇ!! このまま残りのミサイルもつぎ込んで……」

「いいえ、一旦早く上がりなさい! そのまま地面にいると不味いですわ!」

「いーや、姐さん! この間の仕返しで、後二発はぶちかましてやらないと……」


「【ヒートライン】ッ!!」


「あん? うぶおおあぁぁああっ?!!」


 ==============

 プレイヤー6:鮫田長男

 残HP:1000 → 795

 スロット1:ドリル・ショット  (残りE:2/5) 

 ==============


「おバカぁっ!? だから早くブロックの上に戻りなさいと言ったでしょう!?」


 ヒメノの注意を無視して追加ダメージを狙おうとした不良長男は、援護に来たカグヤの遠距離からの攻撃をモロに受けていた。

 折角ハクトに与えていたダメージを、それを超える数値で取り返されてしまった形だ。


「アリス君、キテツ君! 行って!」

「オッケー!」

「了解だぜ! 待たせたな長男野郎!」

「っぺっぺ!! っちぃ、来やがったなテメェ等!!」


 地上にいる鮫田長男を狙って、アリスとキテツが接近する。

 2体1で相手出来る状態だ、アリス達が有利になる。


「スロット2! 【ロングソード・ハード】起動!! “ロング・エッジ”!!」

「装着2! 【ハイパー・パワー・バフ】開始!! おらあっ“鉄拳”!!」


 ジャキンッ! ゴウッ! っと金属音とエフェクト音を響かせて、強化をしながら襲い掛かるアリス達。

 以前使用したギアより、強化幅がアップした上位ギアで挑む。

 この間より更に相手にならない強さになっていた。


 ……筈だった。


「ッ……」ビッ! ビッ! 

「っとと、あれ!?」

「うおっと!?」

「あっぶねぇ! っとと!」


 躊躇の無い全力の攻撃。その筈だったのに、足がもつれる、踏み込みが強すぎた、そう言った自身の動きの想定外が起こり、アリスとキテツの攻撃の精度が急に落ちた。

 そのせいで、不良長男に当たる筈だった攻撃はギリギリの所で回避される。

 不良長男は慌てながらも、二人から距離を取るように逃げた。


「今のは、一体?」

「待て有栖、なんか体に覚えがある! 確か最近えーっと……」


「良い加減、こっちも離れろ!! “クイック・ラビット”!!」

「ぐわあ!?」

「三男っ!?」

「あ、ヤッベ! 白兎側がヤバかったんだった!」


 キテツが身に覚えがある感覚を思い出す前に、動きを封じられていたハクトが等々拘束を抜け出し始めていた。

 自分が飛ぶのではなく、片足だけを勢いよく振り上げる形で技を放ち、無理やり片足を開放していた。


「このっこのっ!! こっちも“クイック・ラビット”!!」

「って、痛え!?」


 もう片方の足を掴んでいる手も、ガンガン解放された足で踏みつけて離そうとする。

 しかしHPグローブ越しだと痛みが半減で中々離す様子が無かったため、結局ブーストした蹴りで掴んでる腕事蹴り飛ばした。

 流石にこれには堪えたようで、ハクトの足を等々手放した不良次男だった。


「ふう、やっと解放され……」


「スロット3! 【クラスター・ミサイル】!!」


「って、あいつ!!」


 一息ついたら、別のブロックの山に登っていた不良長男が、遠距離から例の遅延ミサイルを撃って来ていた。

 爆発まで猶予はあるが、相手チームの味方はまだこっちの山にいる筈……と、思ったらヒメノ、不良弟二人の3人とも既にこの山を降りて別の山に移動し始めている!? 


「逃すかあ!! “鉄拳”!!」

「もう一度、“ロング・エッジ”!!」


「ッ……」ビッ! ビッ! 

「「うわあっ!? あっぶねえ!」」

「んな!? あいつら急加速した!」

「一瞬足が早くなった!?」


「ウフフっ」


 追撃しようとしたキテツ達の攻撃は、しかしまた外れてしまう。

 ……よく見ると、逃げている最中ヒメノはまた片手指を3本あらぬ方向、もう片方の手は指を二本立てて不良弟達を指していた。


「スロット1、【ドリル・ショット】2連!」


「っ!! キテツ、アリスバックで離れて! 地面から来る!」

「何っ!? それじゃあ戻って……」


「ッ……」ビッ! ビッ! 


「っく、まただ!? 今度は走りづらい!」

「うがっ!? やっぱこれ覚えある!?」


 キテツ達が戸惑っていると、今度はヒメノはまた別のポーズで、キテツとアリスを指指していた。


 ギュイイイインッ!! ボゴゴウッ! 


「ぐうっ!?」

「があっ!!」

「キテツ!? アリス!?」


 ==============

 プレイヤー3:アリス

 残HP:1000 → 949


 プレイヤー4:キテツ

 残HP:1000 → 952

 ==============


 ハクトの警告も虚しく、不良長男の地面からのミサイルにヒットしてしまった二人。

 しかしいつもの二人なら回避は余裕だった筈の攻撃だが、やはり何か様子がおかしい。


 しかし、その疑問を考える前に、既に頭上の【クラスターミサイル】が爆発寸前に……!! 


「っ!! やっば! 【インパクト】!!」


 爆発するまで時間が短いと悟ると、ハクトはキテツ達に向かってギアで飛んで来た。

 そして二人を掴むと、その状態で3人まとめて逃げようとする。


「ッ……」ビッ……


 また例の変なポーズで、ヒメノがハクトを指差そうとして……


「【インパクト】ぉ!!」

「「ぐえっ!?」」


「ッく、間に合いませんでしたわ!」


 ヒメノに指差される前に、ハクトはギリギリ【インパクト】を発動した。

 3人まとめてでは2、3m程度しか移動出来ないが、“スカイ・ラビット”の応用で地上スレスレを3連続【インパクト】。


 残ったエネルギー全てつぎ込んで、その場から離脱した。

 そしてハクト達がいた場所で、上空の巨大ミサイルが……


 ボボボボボオオォオォンッ!! 


 筒状のものがばら撒かれ、ハクト達のいたブロックの山ごと小爆発の嵐が巻き起こった。

 しかし、ギリギリハクト達はその場から逃げ切る事が出来ていた。



 ☆★☆



「っはあ!! はあっ……間に合った!!」

「げっほ、白兎、首が閉まる……」

「ちょっと乱暴だったけど、ありがとうイナバ君……」

「ハクト君! キテツ君とアリス君も無事!? 無事ね、よし!」


 戻って来たハクト達にカグヤが近づくと、問題無い事を確認した。

 ふと相手側の方を見ると、ヒメノ達はまた別の山に登って陣形を整えているのが見えた。


「あー、逃げられたか……」

「所で、離れた所から見えてたけどハクト君達どうしたの? 時々なんか動きが凄く悪くなってたけど」

「それなんだけど、俺の場合はなんか【インパクト】が思うように飛ばなくなっちゃってて。いつもよりなんか手応えが強いというか、抵抗感があったというか……」

「僕も蹴ろうとした時、なんか変に踏み込みが強かったんだよね。あれって恐らく……」


「どうしたもこうしたも!! あの子のせいだ! オレ一回経験あるぞあれ!」


 カグヤの疑問に対して、叫ぶようにキテツが声を出す。

 ヒメノ側の方を指して、アイツが原因だと。


「以前のソロ・トーナメント3位決定戦! あの時、ヒメノって奴に似たような事やられた! 変に踏み込み強くなったり、相手が一瞬逃げたりと絶対同じ状況だって!!」


「あら、バレてしまいましたの。まあ一度やった手ですし、ばれますわよね」


 キテツの指摘に対して、小さなドリルの髪を掻き上げながらそれほど慌てていない様子でヒメノは返事をした。

 つまり、彼女自身の仕業だと認めた形だった。


「っ!! ハクト君電光掲示板! あの子いつの間にかギア使ってる!」

「え!?」


 ==============

 プレイヤー5:ヒメノ

 スロット1:────

 スロット2:────

 スロット3:チョイス・レッグ・バッファー   (残りE:0/6 残りCT:3/3)

 スロット4:チョイス・ショック・バッファー  (残りE:4/6) 

 ==============


「うっわ、本当だ!?」

「いつの間に……彼女のギアの発動宣言は無かった筈だよね? という事は僕の瞬間展開と同じ、無宣言発動……」

「あの子、俺との試合の時も何の声も上げず、いつの間にかギア使ってたぞ! おかげで途中まで何をやられたか分かんなかったぜ!」

「ちょっと待って、あの子の今判明しているギア効果は……」


 ==========================

 プレイヤー5:ヒメノ


<スロット3>

 ギア名:チョイス・レッグ・バッファー

《R》

 GP:1   最大E:6   最大 CT:3

 ギア種類:バフ

 効果分類:単体指定

 系統分類:無

 効果:射程1マス以内の単体指定。その対象の移動力を増加、または減少する。


<スロット4>

 ギア名:チョイス・ショック・バッファー

《R》

 GP:1   最大E:6   最大 CT:3

 ギア種類:バフ

 効果分類:単体指定

 系統分類:無

 効果:射程1マス以内の単体指定。その対象の衝撃移動の距離を増加、または減少する。

 ==========================


「バフギアの移動力と衝撃移動の距離に影響を与えるリアクションギア!! アリス君達の行動がうまくいかなかったのと、ハクト君の【インパクト】が不調だった原因これね!」

「やっぱり!」

「でも待って、チョイスシリーズのギアは私知ってる。例えば、【チョイス・レッグ・バフ】、【チョイス・レッグ・デバフ】。この二つがそれぞれ増加、減少の効果を持ってる。でも、あの子の付けてるこの二つのギア名称が、“バッファー”? そんな種類知らない!」

「え、そうなの? カグヤでも聞いた事ないの?」

「効果を見た感じ最大Eは少し減ってるけど、代わりに増加か減少か選択式になってる。こんなギア、私初めて見たわ。一体どこで……」


『あー、良かった。ちゃんと上手く動作してくれてる様で』


 そのマイク越しの声に、会場中があ? っと実況席に注目する。

 実況のカラーがあ、やっちゃった、てへ☆、と誤魔化そうとするが、その様子を横の風雅がジトーっと見つめていた。


『……おい。お前一体何やった? 何が上手く動作してくれてるって?』

『んー? いやほら、この間ソロ・トーナメントの大会の景品で上げた、【インライン・スケート】が上手く動作してくれてる様で、良かったな〜って……』

『“ハクト選手まだ【インライン・スケート】(それ)使ってないけど”』

『……はーい、白状しまーす。“チョイスシリーズ”の未発売の新作ギア、“バッファー系”のテストプレイヤーとしてヒメノ選手に貸し与えましたー。この間のセクハラ騒動の時の補填がわりに』

『はあっ!?』


 アナウンスから、そんな情報が流れて来た。

 つまりヒメノ選手は、まだ誰も手に入れていない新作ギアを使って戦っていたと。


『ついでに言うと、倉庫に眠っていたミサイルシリーズのギアもいくつか渡しましたー。ドリルとか。後やっすいリアクションギアとかも。あの様子だと、チームメンバーに貸し与えてるっぽいです』

『てことは何!? もしかしてヒメノ選手チームのギア構成、まさか大半カラーが渡したギアで成り立ってるって事!?』

『多分そうでーす。てへ☆』

『お前試合前やたらあのチーム推してたのそれが理由か!?』


 悲報。ヒメノチーム、カラーの手が加えられていた件について。

 恐らくソロ・トーナメントの最中に戦った不良兄弟の時より、大幅に強くなってしまっているだろう。


『お前、流石に贔屓しすぎじゃねーか!? いくらフォローの為だからって、下手したら優勝商品よりいいの渡してんじゃねーの!?』

『失礼ね! ミサイルはともかく、未発売ギアは貸してるだけだからセーフよ! 仕方ないじゃない! 私、結構あの子気に入ってるし、戦い方的に! 後、私、社長!』

『強権振りかざしやがって!』


「その節は誠にありがとうございますわ! 大変ありがたく使わせて貰っておりますわ!!」

『はーい、ヒメノさん! 後で使用感のフィードバック、約束通りお願いねー!』

『実況と選手がズブズブじゃねーか!? 仲良いのはともかく、せめて試合中に話すな!』

『風雅には言われたくないわよこのムーンラビットお気に入りツッコミ解説者!』


 ギャーギャーとアナウンス越しに騒ぎ声が聞こえる中、一先ず状況を整理する。


 レディ・オブ・シャークマンズはカラー解説の手によって、大幅に強化が施されている。

 以前と同じ相手だと油断していると、足元が掬われる事だろう。


「あちゃー、思ったより厄介な事になったね……どうする、イナバ君?」

「うーん……」


「あら、考える時間なんて与えませんわ!! やりなさい3人とも!」

「言われずとも! スロット3! 【クラスター・ミサイル】!!」

「「了解! スロット1! フォーム! 【スーパーミサイル】ッ!!」」

「ってえ!? いっぱい来た!?」


 対策をハクト達が練ろうとした瞬間、ヒメノチームから不良兄弟がミサイルの特盛りで発射してきた! 

 クラスターはともかく、スーパーミサイルが先にハクトに向かって迫ってきている! 


「【インパクト】を切らしたハクトさんが、今倒すまたとないチャンス! あなたが一番自由にさせてはいけませんの! リチャージなんてさせませんわ!!」

「ああ、スロット4!」


「っく!」

「させるか! 装着1、【メタルボディ】開始!!」


 ミサイルが当たりそうな瞬間、キテツはハクトを引っ張って自分の後ろに投げ飛ばす様に移動させる。

 ハクトを狙ったミサイルは、防御力を上げたキテツによって二つともガードされた。  


 ==============

 プレイヤー4:キテツ

 残HP:952 → 932 → 913

 ==============


「っつう!! けど、この程度なら全然痛くねえな!」

「キテツ、ありがとう!」

「どういたしまして! これくらいへっちゃら……」

「ウラシマ君、足元!!」

「へ?」


 アリスが指差した先には、手榴弾の様な何かがいつの間にか転がっており……


「またスタングレネードだ!?」


 ハクトがそう叫ぶが、間に合わずその手榴弾の様な何かが爆発した。


 ピガアアアァァアアアアァァアァッ!! 


「くうっ!! くそ、公式試合までまた持ち込みか!!」

「っは! 残念だがちゃんとギアの効果だ! スロット4、【閃光弾】だ!!」


『あー、そういえばあれも上げたっけ。フォームギアの状態異常付与系のやつ』

『目があああああ!!? こっちも目が潰れたわ! と言うかカラーお前、直前にちゃっかりサングラス付けなかった!?』


 鮫田長男のやつ、持ち込みアイテム出来ないからって、ギアとしてまでスタングレネード持って来やがった。

 その執念にはある意味尊敬するが、ギアとして使われてしまったのなら文句は言えない。


「目が潰れたなら庇いきれねえよなあ! 弟達!!」

「「了解三発目! スロット1! フォーム! 【スーパーミサイル】ッ!!」」


 その台詞とともに、再度二つのミサイルが飛んでくる。

 目が見えなくなったハクト達には、回避手段は……


「生憎、もう庇う為に近づく必要もねえんだよ」


「……あ?」


 ドゴゴーンッ!! 


 キテツのその呟きに、鮫田長男は疑問符を出す。

 そう言ってる割には、ミサイルは見事にハクトに直接命中した。

 キテツの呟きの意味は分からなかったが、これでハクトのHPが削れた筈……


 ==============

 プレイヤー1:ハクト

 残HP:845


 プレイヤー4:キテツ

 残HP:913 → 893 → 872

 ==============


「っはぁっ?! あの白兎野郎が削れてねえだと!?」


 代わりに、キテツのHPが少し削れている。

 つまり庇った様には見えないが、実際はキテツが庇っていたと言うことになる。

 一体どう言うことだ、と鮫田長男が疑問に思っていると、ふと気づく。


 キテツを中心とした周囲直径5mが、“薄い青白いオーラ”の様なものに包まれていた事に。


「装着3! 新ギア、【フォートレス】だ!! こいつを発動していたんだ!」


 ==========================

 プレイヤー4:キテツ


<スロット3>

 ギア名:フォートレス

 GP:2  最大E:3   最大 CT:3

 ギア種類:バフ

 効果分類:自身持続

 系統分類:無

 効果:適応中、自身を中心とした直径5m範囲の味方キャラが受ける攻撃や効果を、自身が全て受けた扱いにする。ただし、自身の移動力が減少する。

 ==========================


「これで今までより広い範囲を庇う事が出来る! 勿論、さっきの【閃光弾】もだ!! おかげで俺の目がまだ見えないけどな!」

「テメェっ……!!」

「新ギアがお前達だけだと思うなよ!」


 キテツの言う通り、先程の【閃光弾】もハクトとアリスにも当たってはいたが、二人は目眩し状態にはなっていなかった。

 普通は確実に当たっていたとしても、全てキテツが受けた事になるギアの魔法の様な効果を改めて実感出来た形だった。


「キテツ、ナイス!」

「いいギア買ったね! ディフェンス役として、これはとても便利だ!」

「だろー? へへ、ショップであの後高い金払って手に入れたギアの一つなんだ。これであいつらのミサイル攻撃なんて、全部受け止めて……」


 ゴウッ! 


「っ!? キテツ、次のミサイルが!」

「何!? けど安心しろ、【フォートレス】と【メタルボディ】のコンボがあれば、そこまで痛手は……」


 ズドゴォォオオオオウッ! 


 ==============

 プレイヤー4:キテツ

 残HP:872 → 570


 スロット1:メタルボディ  (残りE: 0/3 残りCT:3/3) (★適応中 → ギア・ブレイク!!)

 スロット2:ハイパー・パワー・バフ(残りE: 2/3) 

 スロット3:フォートレス(残りE: 3/3) (★適応中)

 スロット4:────

 ==============


「っか、はあああ!? いってえええええ!?」

「キテツう!?」

「大丈夫かい!? 300位ダメージ入ってるよ!?」


 キテツの言葉とは裏腹に、一気に大ダメージを喰らっていた。

 しかも今の攻撃のせいか、【メタルボディ】も強制解除されている!? 


「ギア宣言が聞こえなかった! これあの子だな発動したのは!!」

「ブレイクミサイル。弾数は少ないですが、高い威力と“硬い物”に対して特攻がありますの」


 ==========================

 プレイヤー5:ヒメノ


<スロット1>

 ギア名:ブレイクミサイル

 GP:2  最大E:2   最大 CT:3

 ギア種類:フォーム

 効果分類:単体攻撃

 系統分類:ミサイル

 効果:射程15m。ヒットしたら150ダメージ。ブレイク属性持ち。

 ==========================


 高台にいたヒメノが、無表情に近い顔で淡々と先程の攻撃について説明していた。

 効果は至ってシンプル。しかし、【メタルボディ】適応中だったキテツに対してはもの凄く効果的だったと。


「くそ! あのヒメノって人サポート特化なのかと思ったら、攻撃ギアもちゃんと持っていたのは少し予想外だった……」


「姐さん、あの白兎野郎に同意する訳じゃないが、確かにそのギアも俺に貸してくれれば良かったんじゃないか?」

「いえ、このギアだけはワタクシが使いたかったんですの。確実にヒットするタイミングで当てたかったんですの。か・れ・に」

「ウラシマ君、やっぱり君結構彼女に恨まれてるね?」


 つまり、完全にキテツメタのギアを持っていたかったと。

 わざわざスロット枠を割いてまで持っている様子から、ものっ凄い根に持っていそうだった。


「更に、その【フォートレス】弱点がありますわよね? 防御力アップ無しで、“アレ”を耐えられて?」

「っげ!? しまった、【クラスター・ミサイル】が爆発しやがる!?」

「さあ、庇うなら庇いなさい!! 範囲150ダメージを、3人分一人で!!」

「そんな事したら、一気にキテツのHPが瀕死になる! アリス、あれ使える? “ディフェンス・エッジ”! 以前俺達を庇ってくれたでしょ!!」

「いやあ、ゴメン。あれ確かに範囲攻撃も切れるけど、あくまで自分への攻撃を防ぐ程度だからキテツ君達を守れるわけじゃないんだ。単体攻撃だったなら出来るけど」

「少しはマシだけど、程度か……じゃあ全員で範囲外に急いで」

「もう無理だ! 時間無いし、この【フォートレス】適応中動きづらくなる! そして【ハイパー・パワー・バフ】節約で切ってた!!」


「ウフフフフッ!! ハクトさんではなくとも、あなたに大ダメージなら十分ですわ!! さあ、くらいなさい!!」


 その直後、例のバァン!! っと、巨大な風船が破裂するような音が鳴り響く!! 

 あの筒状のものが辺りにばら撒かれ、もう間に合わない……! 


「ウラシマ君!! ちょっとゴメンよ!」

「へ?」

「“カウンター・アタック”!!」


 ボボボボボオオォオォンッ!! 


 キテツ達の立っている場所は、爆発の中にのまれて行った。



 ☆★☆



「アハハハハハッ!! やったわ、やってやりましたわ! あのキテツという彼に仕返ししてやれましたわ!! アッハハハハハッ!!」

「はっはぁッ!! ざまあねえぜ、俺様達にこの間絡んだ罰だ!!」

「いや。それはあなた達の自業自得でしょう」

「姐さん、急に冷静にならねえでくれねえか?」


 ヒメノが高笑いをする中、鮫田長男の言葉にスッと興奮が覚めて冷静になる。

 とは言え、この攻撃でキテツにトドメを刺したわけでは無い。

 直ぐ次の攻撃が来ると予想しておくべきだ。


 そう、例えばカグヤとか言う、火属性マジック使いが……


 “そう言えば彼女カグヤ、どこ行った? ”


「っ! しゃがみなさい!!」

「あ? 姐さん一体どうし──」


「“火球・赫虹”。二連打」


 気付けたのはヒメノだけだった。忠告するも、時既に遅し。

 ハクト達がいる場所とは反対方向から、火球の列が降ってくる!! 


 ボゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!! ←(20発のファイアボール)


「オゴオゴ後オゴオゴ後お午後おゴゴゴぉっ?!!!」

「「あ、兄貴ぃっ!?」」


 ==============

 プレイヤー6:鮫田長男

 残HP:795 →→→ 192

 スロット1:ドリル・ショット(残りE: 0/5 残りCT:2/3) 

 スロット2:────

 スロット3:クラスターミサイル(残りE: 0/2 残りCT:3/3)

 スロット4:閃光弾(残りE: 2/3)

 ==============


 回避なんて出来ずに、全てのファイアボールに鮫田長男は当たってしまっていた。


「ふう。赫虹って、こういう段差のある敵を狙う時にすっごく便利なのよねー」

「カグヤさん……!」

「ハロー、ヒメノちゃん。元気ー?」

「テメエ!! このアマやってくれやがったなあ!?」

「やってくれたって。ヒメノちゃんが忠告してくれたのにボーッとしてたあなたが悪いんじゃ無いの? まあ、もしくはヒメノちゃんが私の邪魔してくれば良かったかもしれないけど、ハクト君達の時みたいに」

「(よく言いますわ! ワタクシのチョイスシリーズの射程外になる様に常に位置取っている癖に!!)」


 ヒメノは心の奥底で悪態を付く。

 カグヤとソロ・トーナメントの時直接勝ちあったが、常に近づかせない様に距離を取って封殺された。

 ヒメノはムーンラビットに対して、それぞれのプレイヤーに評価を下していた。


 切り込み隊長、フロントアタッカーのアリス。

 仲間を守る盾、ディフェンサーのキテツ。

 盤面操作能力、フロントサポーターのハクト。

 超高火力範囲、バックアタッカーのカグヤ。


 ソロ・トーナメントの決勝戦は後から動画で確認していた。

 この内、自由に行動させてはならないのは盤面操作能力のハクトであったが、一番油断してはならないのはこのカグヤだとヒメノは認識していた。


「よくもウチの長男に大ダメージを与えてくださいましたわね。よくやってくれましたわねと褒めたい所ですが、悠長に一人でノコノコ前に出て来ていいんですの?」

「あはは、そりゃいいでしょう。だってあなた達、“ハクト君達に対して攻撃ギア大半使ってるでしょう? ”」

「「舐めるな!! まだ残ってる! 四発目! スロット1! フォーム! 【スーパーミサイル】ッ!!」」

「よっと。危ない危ない」


 カグヤの言葉を否定する様に、鮫田兄弟の弟達が同時にミサイルを発射するが、カグヤは簡単な横ステップで回避する。

 その表情は至って余裕といった形だ。


「あら、どうしたの? アリス君達の時みたいに、私の動きを封じればいいんじゃ無いの? 移動力減少のギアとかで」

「どの口で……!!」

「そうよね、出来ないわよね。距離の問題と、何よりEが無いわよね? ヒメノちゃんのスロット3の奴。これはアリス君対策の中心で、ハクト君はスロット4、キテツ君はスロット1。じゃあ残りのスロット2は多分、私対策でマジックダウン系とかそんなあたりだと思うのだけど、どうかしら?」

「さあ、どうでしょうね? (その通りですわよ!)」


 ヒメノは心の底で大体当てられた事に冷や汗を掻く。

 カグヤの言う通り、ヒメノのスロット2は【チョイス・マジック・デバフ】。

 指定した対象のマジック系列の攻撃力を一瞬ダウンするギアだ。


 カグヤの火球シリーズの様な、一回の攻撃で連打してくる場合なら、自身の防御を上げるより発動者の攻撃力を下げたほうが効率が良い。

 そう予想して装備して来たのだが……一番の使い所であった先程の“火球・赫虹”を範囲外から使われてしまった為、無意味になってしまった。

 これなら素直に味方のマジック防御力UPのギアにしたほうがまだマシだったが……後の祭りだ。


 やはり彼女は油断ならない、ヒメノはそう気を引き締めた。


「っへ! 結局の所、一人でやって来た事には変わりはねえ!! こっちは姐さんがいるんだ、今度こそテメェをボコボコにしてやる!!」

「……そうですわね。見たところ、先程の【ファイアボール】連打は見事ですが、スロット2個は消費した筈。つまりあなたの攻撃手段は殆どない筈ですわ」

「あれ、【ヒートライン】はまだエネルギーが残ってるわよ? 勘違いしてるのかしら?」


「そちらこそ、分かってらっしゃる筈でしょう。……そのギア、“段差のある場所には届かない”ですわよね?」

「……なるほど、気づいていたんだ」

「当然。だからこそ、常に高台にいる様にバカ達に忠告しておりましたから」


 カグヤの【ヒートライン】。

 威力も攻撃範囲も速度もかなり上級のギア。しかし弱点が無いわけでは無い。

 地上に引いたライン状に攻撃が伝って行く以上、段差のある場所で攻撃が止まってしまうのだ。

 出ないと、ソロ・トーナメントの会場の壁にもラインが登っていないとおかしい。


 この事に、動画を見ていたヒメノは気づいていた。


「なるほどねー。やっぱり私の対策もきっちり立ててはいたんだ。流石ね」

「ええ。ですので、あなたの最後のギアが何かは分かりませんが、ほぼ攻撃手段を封じれた筈。なのに、何故直ぐ逃げずにノコノコ出て来たのかがワタクシは分かりませんの。その程度あなたは分かっている筈でしょう?」

「ああ、それ? 単純にお礼の挨拶をそこの長男さんに言っておこうかと思って」

「は? お礼?」

「あん?」


「この間、ハクト君達に“ギア1個プレゼント”してくれたの、ありがとうございまーす♪」


「はい? プレゼント? ……ああ、確か何かギア1個奪われたとか騒いでいた様な」

「っ!? テメェら!?」


 カグヤの脈絡のない言葉に対し、その意味に直ぐ気づいたのは鮫田長男だけだった。

 すかさず【クラスターミサイル】を撃ち込んだ場所を振り向こうとすると……


「全力!! “鉄拳”!!」

「“ロング・エッジ”!!」


「「ぐああっ!?」」

「弟達!?」


 既にいつの間にか、こちらのブロックの山に登っていたアリスとキテツがいた。

 下の段にいた鮫田兄弟の弟達にそれぞれ不意打ちをかましていた所だった。

 ハクトはまだ遠くにいる、恐らく【インパクト】が戻っていないせいだろう。


「っカグヤさんが会話を長引かせていたから、陽動が目的なのは分かっておりましたが……」

「あら、そうなの? 乗っかってくれてありがとうー」

「ですが、残りEとHP的に動けるのはアリスさんのみと思っておりました、一人なら許容範囲内、返り討ちの予定でした……ですが、まさかキテツさんもですって? いえ、予想外でしたが寧ろチャンス! HPの少ないキテツさんに集中して止めを刺しなさい!!」

「「へい、姐さ……」」


「いや、姐さん!! そいつHP殆ど減ってねえ!!」

「っは? 何ですって?」


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 プレイヤー4:キテツ

 残HP:570 → 541


 スロット1:メタルボディ  (残りE: 0/3 残りCT:2/3)

 スロット2:ハイパー・パワー・バフ(残りE: 2/3)(★適応中)

 スロット3:フォートレス(残りE: 2/3)

 スロット4:反応装甲(残りE: 3 → 2/3)(★適応中)

 ==============


「いやあー! この【反応装甲】すげえな!? フォートレスとのコンボでも、まさか最初の一撃以外ダメージ無効化してくれるって!」

「いいギア貰ったね、ウラシマ君!」

「けど有栖が急に斬りつけて来たときは、あれは正直びっくりしたぜ……【反応装甲】を最小ダメージで誘発させる為とは分かってたけど、普通驚くぞ」

「ごめんね、話す時間が無かったんだ。けどその意図に直ぐ気づいてくれたウラシマ君も中々じゃない?」


「テメェえらああああ!? よ、よくも、俺様が持っていたギアでえええええっ!?」

「ダメージ450の期待値が、たった30で乗り越えられたですって!? 長男、あなたなんてギア渡してくれてるんですの!? せめて渡したギアの情報くらい事前に話しておきなさい!?」


 キテツ達がそれほどダメージの無い状態で乗り切られた事に、ヒメノと鮫田長男は切れていた。

 特にヒメノは、長男に対して計算が狂ったと怒り心頭だ。それはそうだろう、にっくきキテツにトドメをさせると思っていたのだから。


「さて、これでまた盤面は無茶苦茶ね。そっちのチョイスシリーズと、ハクト君の【インパクト】が戻ってくるまで、後30秒くらいかしら」

「っ!」

「そっちはミサイル大量に使ってくれてたし、こっちはキテツ君とアリス君がまだ攻撃用Eは残ってる。……今度はこっちのターンね」

「っく……そう上手くいくとは思わないことですわ!!」


 ムーンラビットと、レディ・オブ・シャークマンズの戦いは、まだ始まったばかりだ……


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