「……倉田……倉田 優姫?」
すると、線路沿いで泣いていたボクに話しかけてきた人物がいた。ボクを憐れんだ誰かが声を掛けてくれたんだろうか。ボクはゆっくりと顔を上げる。
「君は……」
「芹那、菊野 芹那。サークルで話したの、まだ覚えてるでしょ? 何してんの? こんな所で」
芹那……あのサークルで1度だけ会話した、いや絡んできたあの女の子。相変わらずの金髪で、鋭い目付きでボクを見下ろしている。
「別に……っ、何も……」
「何もって顔じゃないけど。何メソメソしてんのよ」
泣きじゃくっているボクの顔を見下ろし、芹那はそう言う。確かにこの顔で何も無いと言うのは無理がある。
「……」
「まぁ、何でも良いけど。ねぇ、暇ならちょっと付き合いなよ」
そう言うと、芹那はボクの返答を待たず片腕で車椅子を押し始める。
「え、ちょっと!」
「別に何もしないわよ、ちょっとお喋りするだけ」
そして芹那は自販機でコーヒーを2人分買って、最寄りの公園へとボクを連れて行ってくれた。