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第120話 信用

 茜が帰った後、俺は部屋で1人とある人物と電話をしていた。


「あー、曽根さん。追加で草、貰えます?」

『お前、またかよ……流石にやり過ぎだろ。少しは自重しろって』

 曽根さんは昔からの地元の先輩だ。ヤクザではなく、不良の延長で半グレもどきをやっているような人だが、人柄は悪くない。

「いやいや、1人分じゃないっすよ。お裾分けする分と売る分」

『お前さ、良い加減にしとけって。本職の管轄で援交やら草の転売やら……いつか殺されるぞ』

 ただ、曽根さんは不良の割に度胸は無い。半グレもどきをやっている割にはヤクザにはビビっているし、喧嘩も弱い。

 だから、俺も内心ではあまり尊敬はしていない。

 こいつもただ、利用しやすいから付き合っている……それだけの希薄な関係性の人間だ。


「大丈夫っすよ。今時そんな気合の入った本職いないでしょ」

『俺は知らねぇからな、どうなっても』

「曽根さんだって昔、本職の女に手出してたじゃん。そっちの方がヤバいでしょ」

 俺の事を心配するようなそぶりは見せているが、結局は自分の保身の事しか考えていない。

 人間なんて、みんなそんなものだ。


『俺は良いんだよ、結果バレなかったし。そんな事より、お前最近家呼んでくれないじゃん。女でも出来た?』

「あー、まぁ……そんなところっすね。ほら、あの子っすよ。この前、家で飲んだ時にいたでしょ? すぐ酔っ払ってた子」

『何だよ、俺もあの子狙ってたのに。ギャル好きなんだよ、俺。飽きたら貸してくれ』

「俺が飽きる頃には多分、廃人になってるっすよ」

『何だ、その子にも草吸わせてんのかよ。でも良いよ、俺ギャル好きだし』

「ギャルだったら何でも良さそうですもんね、曽根さん。ギャルなら死体でも良いんじゃないんですか?」

『勘弁してくれよ……』

「けど、援交なんてやってるバカ女っすよ? しかも下手したらこれからヤク漬け予備軍になるかもしれないし」

『良いよ、俺ギャル好きだし』

「……そればっかりっすね」


 世の中、くだらない人間ばかりだ。

 辛い事があれば簡単に人を裏切り、大麻や薬に逃げる。人間なんてどいつもこいつも信用出来ない。

 茜だってそうだ。仲間の中で自分だけはまともだというような雰囲気を出していたが、俺に誘われればパパ活だってやるし、大麻だって吸う。自分の意思や信念が無い、くだらない人間の1人だ。


 どいつもこいつもくだらない。この世界はくだらない人間ばかりが蔓延っている。


 俺はこんな世界にもう嫌気がさしていた。

 だったら、俺はそんなくだらない人間をとことん利用して、残りの人生を太く短く刺激的に生きてやろうと思ったんだ。

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