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4話(3)なんだかんだお揃いでつける2人は仲良し?!



 なんだか外が騒がしい。兄と如月が帰ってきたのかもしれない。私は星奈に「勉強しよう」と声をかけた。



 ガチャ。



 帰ってきた!!!!



「自分がチョコ選んだんでしょー」

「甘くて飽きました。睦月さんのアイスひとくちください」

「やだぁ~~」



 片手に買い物袋を持ち、アイスを食べながら、2人がリビングへ来た。何か言い争いをしている。



「自分たちだけアイス~~?」

「買ってきたって。ほれ」



 コンビニのプライベートブランドのバニラアイスを2本渡された。これ安いやつ!!! 私は少し腹を立てつつ、アイスを受け取り、1本、星奈に渡した。



「自分たちだけ美味しいやつ食べてる……」

「はぁ~~あつ」



 兄が棒付きアイスを口に入れようとした瞬間、如月が横から兄へ顔を近づけ、ひとくち食べた。



 ぱく。



「あーーーーっっ!!!」



 挑発的な切れ長のが少し色っぽく見える。出かけた時と少し雰囲気が違う感じがするのは気のせいだろうか。



「俺のアイスにチョコついたんですけど~~」

「知りませんよ、そんなの」

「何怒ってんの?」



 如月が兄の手から買い物袋を取り上げ、小さな紙袋だけ渡している。なんの紙袋?



 アイスを口に入れ、両手にエコバッグを持ち、兄を私の方へ押し付けると、如月は冷蔵庫へ買ったものを仕舞いに行ってしまった。



「その紙袋なに?」

「たんじょーびプレゼント。30日は遊園地へ行くし、前倒し。15歳おめでと」

「待って待って! 私もあるの!」



 兄から紙袋を渡され、受け取る。星奈がアイスを咥えながら鞄をごそごそし始めた。ラッピングされた袋を取り出し、私へ押し付けると、にっこり笑い、口を開いた。



「卯月ちゃん、お誕生日おめでとう! ごめんね、私のお小遣いじゃ、いいもの買えなくて……」

「ありがとう! 開けてもいい?」

「どーぞ」

「いいよ!!!」



 兄が私のそばに腰を下ろす。私はまず、兄のプレゼントから開けた。包装を解いていくと、小さな箱の中にネックレスが入っていた。花のモチーフがかわいい。



「これ、お兄ちゃんが選んだの?」

「え? そうダヨ」

「ふーん」



 お兄ちゃんにしてはセンスが良い。兄の目が泳いでいる。嘘くさい。多分、如月だろう。まぁいいけど。



 食べ終わったアイスの棒をゴミ箱に捨て、星奈のラッピング袋を開ける。袋の中にはピンクのフェイスタオルと、夏物のアンクルソックスが入っていた。



「学校に持っていくね!! ありがとう!!」



 実用的で嬉しい。星奈が笑顔になった。



 ネックレスを手に取り、首の後ろでフックを引っ掛ける。フックが穴に定まらない!!! むずっ!!! 星奈が気付き、付けてくれた。



「似合うよ、卯月ちゃん!」

「遊園地の日につけてく~~」

「遊園地いくの? 良いなぁ!! 私も一緒に行きたい!!! ダメ?!」


「親御さんが良いって言えば来てもいいよ」

「わかった!!」



 兄の許可が出た。星奈がもし、来てくれるなら私は嬉しい。星奈はまだ聞いてもいないのに、行く気満々だ。



「これはチャンス到来かしら?」

「た、多分……」

「協力してよね~~!」



 まだ兄を狙っていたのか。何を協力すればいいのか分からないが、とりあえず、承諾する。如月がリビングへ来た。私の持っている紙袋と同じ紙袋を持っている。袋の中から黒いスタッドピアスを出した。



「睦月さん、プレゼントです」

「なんで片方?」



 如月が兄の隣に座り、ピアスを片方だけ渡している。兄はよく分からなさそうに首を傾けた。



「もう片方は私が付けるので」

「はぁ? なんでお揃いでつけるの?!」

「別にいいじゃないですか」



 ごちゃごちゃ言い合いながらも、兄は今つけてる小さなリングピアスを外し、もらったピアスをつけている。なんというか、罪な人だ。



「外したピアスをください」

「なんで? やだよ~~」



 如月は、くれと言わんばかりに、手のひらを兄へ見せた。でも兄は嫌なのか、外したピアスを手の中にギュッと隠した。如月が兄の手首をつかみ、無理やり手を広げ、奪おうとしている。



「ちょっ!!! やめて!!! 何すんの!!! なんなの!!! どんだけ欲しいの!!!!」

「そのピアスください!!!」



 2人の攻防が始まる。星奈と一緒にピアスの奪い合いを冷めた目で眺める。星奈が真面目な顔で話し始めた。



「卯月ちゃん。星奈的には、お兄様×如月様も萌える展開だけど、妹的にはどうなのこれ」

「私は……お兄ちゃんが例え、好きになった人が同性だったとしても、全力で応援する」



 これは本心だ。私は続ける。



「14年間、お兄ちゃんと過ごしているけど、お兄ちゃんは女性が好きだと思う」



 恋バナとか聞いた訳ではないが、隠された見てはいけないモノは胸の大きな女性が中心だった。



「じゃあ、やっぱり星奈にもチャンスあり?! 実際みて思ったのはやっぱりお兄様も、如月様もかっこよき! 眼福しかない!!! 尊い~~!!!」



 星奈のキラキラとした乙女姿に私はついていけなくなっていた。恋とかまだ分からんし。



 ピアスの奪い合いは如月が制したようで、兄のピアスの消毒を始めている。付ける気だ。



「俺のピアス付けるの?!」

「付けますよ、お揃いですから。左耳にもうひとつ開けようかなぁ」



 今更かよ。兄が鈍感すぎて、如月が可哀想だ。



「まぁ、いいじゃ~~ん。お兄ちゃんと如月は両想いだもんね~~?」

「誰と! 誰が! いつ! 両想いになったのさ!」



 意地悪な笑みを浮かべ、私は兄を背中から抱きしめた。



「カレー作った日に告白し合いましたぁ~~」

「そういう意味、違うでしょーーが!!」

「いたたたた!!!! やめて!!!!」



 兄が私の頬をつねってくる。本当のことなのにぃ。私のアシストを受け、如月が目を細める。星奈は時計をみて、帰り支度を始めた。



 結局、喋ってばかりで、一緒に勉強なんて、全然出来なかったな。



「そろそろ帰るね! 遊園地行けるか分かったら連絡するね~~!」

「り~~。お兄ちゃん、私星奈を送ってくる」

「いってらっしゃい」



 兄がやる気がなさそうに手を振るのを確認し、玄関を出た。星奈を家まで送り、帰ってくると、兄は机に広がった勉強用具を見つめ、苛ついていた。



「なぁ、卯月。行く前と、変わってなくね?」

「そ、そうかな~~?」



 笑顔が怖い。黒目が左右に動いてしまう。



「明日からみっちり勉強しような」

「は、はーい」



 如月がノートパソコンをリビングへ持ってくると、私の前に広げ『レディース 春服』で調べ始めた。何か買ってくれるのだろうか。



「遊園地へ着ていく服、買いましょう」



 何か企んでいるようにも思える。怪しさ満点だ。



「何か裏があるの?」

「私にも協力してください」



 面倒くさ!!! 私、もしかして、星奈にも如月にも協力しないといけない系? でもこの、肩が出る、薄い黄色のワンピースかわいい!



 私は新しい服欲しさに、引き受けることにした。



「何なに~~? 服買ってもらうの? いいなぁ~~! 俺にも買ってよ、如月ちゃ~~ん」

「ちょっ……」



 兄が如月の肩に頭を乗せ、パソコンを覗いた。如月は肩に頭が乗っているのが気になるのか、兄の頭を手で退かしている。



「何さ~~俺には散々やるくせに嫌なわけ?」

「嫌なわけないし……」



 不機嫌になる兄に対し、如月は口籠った。退かそうとした手が、兄の頭からそっと離される。



 なにやってんだか。私はこれからこういうやり取りを日々、この家で見るのだろうか。お兄ちゃんには悪いが、如月を応援したい気持ちもある。私は如月のフォローをすることにした。



「如月ちゃ~~ん、私、肩が少し出るこの黄色のワンピースが良い~~」



 反対の肩に私も寄りかかる。如月が熱い。横目で如月を見ると、頬がほんのり赤く染まっていた。



「カゴに入れますね~~。睦月さんはどれですか?」

「買ってくれるの?!」

「良いですよ、別に……」

「テーパードパンツ履いてみたい」


「「絶対似合わない」」


「2人してひどくね?」



 兄はガクッと下を向き、落ち込んだ。絶対的似合わないし。デニムはいとけ。



 着ていく服も決まったし、遊園地が楽しみだ。星奈も来れるといいな。もらったネックレスを外し、入っていたケースの中にしまう。



 お兄ちゃんってば、ネックレスのプレゼントってどんな意味があるか分かって贈っているのかな。



(ばーーか)






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