目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第9話 ここがE級ダンジョンです

名前 戸波 海成

階級 E級冒険者

職業 武闘家

レベル 1


HP 100/100

MP 10/10


攻撃力 10

防御力 10

速度  10

魔攻  10

魔坊  10


マナポイント 30


▼スキル(残りポイント500)

 【不屈の闘志】


 結局【ステータス】って唱えると、目の前にウインドウみたいなものが現れる、そしてそれは自分にしか見えない。

 分かったのはそれだけだ。

 あ、あとマナポイントというやつは30とあるが、それを各ステータスポイントに割り振れるらしい。

 そしてスキル欄には昨日おじさんをぶっ飛ばした時に発動した【不屈の闘志】とやらが記載されている。


 マジでゲームだな。


 そしてそんな俺は今E級ダンジョンにやってきた。

 こんな無知な冒険者がこんなとこにいて良いんですかね?


 周りを見渡すと、あの擬似的なダンジョンとほとんど同じ構造をしているようだ。

 さすが擬似、というだけある。

 しかしここは正真正銘のダンジョンだ。

 一応俺はE級冒険者らしいのでダンジョンもE級。


 いやいや、まさかマジでダンジョン攻略に来るとは思わなかった。

まだ冒険者として出勤して2日よ!?


 なぜこうなったか、それは今から数時間前に遡る。



 ◇



 せっかく今からこの【ステータス】とやらの説明でワクワクしていたのにも関わらず、


 プルルルルッ――


 それは久後さんのポケットに入ってあるスマホから聞こえてくる。

 いや固定電話みたいな着信音だなっ!


「あ? 悪りぃ、電話だわ」


 電話越しに久後さんは、『え、海成を? 』『あ、早めに? 』といった風に俺の件で電話がきていることが分かるような相槌だった。


 なに、気になるんだけど。


 電話が終わった久後さんはスマホを再びポケットに仕舞った途端笑い出し、


「海成! やっぱお前ダンジョン行くしかないみたいだわ。本部からのお達しだ!」


 親指で事務所出口を差しながら俺にそう言ってきた。


「……え? えーーーーーー!?」


 この叫び声がうるさかったのか指で耳を塞ぎながら、


「ちっ! うるせぇなー。E級なんだからいけるだろうよ」


「いやいや、初心者なんですけど!?」


「誰だって最初は初心者さっ!」


 そんな爽やかスマイルで言われても。


「えーそんな無茶苦茶、一体誰が……」


「そんなの決まってる。任務振り分けすんのはあいつら鑑定科の仕事だ! 今回は西奈らしいが、お前ヤケに気に入られてるらしいな」


 久後さんはニヤニヤした顔で俺を見てくる。


「え!? 瑠璃、なんのつもりなんだ……」


「おっ? 西奈を下の名前で呼ぶなんて相当だな。あいつが人間に興味持つとは! さてはお前人間じゃねーな?」


「ちょっと久後さん、冗談やめてくださいよ〜」


「ははっ! わりぃわりぃ! あ、そうだ。西奈がダンジョン行く前に本部に寄ってくれってよ」


「……? 分かりました!」


 ってことで俺は本部へ向かうことになった。

 ここでもちろんと言うのはおかしいが、準備をして下に降りると黒のセダンが止まっており、今回もありがたいことに送迎して頂いたのだ。


 にしても瑠璃……何の用だろう。まさか俺に会いたくなったとか?

 いや、そもそも瑠璃にそんな気持ちはないか。


 そんなことを思いながら車から降りようとしていると、


「先輩~っ! 会いたかったです~!」


 この遠くから聞こえるのは紛れもない瑠璃の声だ。

 嬉しそうに駆け寄ってくる彼女を見ていると、『この野郎、いきなりダンジョン任務なんて与えやがって』なんて思っていた気持ちが意図も簡単に吹き飛んでしまう。


「瑠璃、俺もだよ……じゃなくて! いきなりダンジョンってどういうことだ?」


「あ、そのことなんですが……実は本部に内緒で任務を依頼したんです」


「え? どうして?」


「それは、ダンジョンでこれをかければ分かりますよっ!」


 瑠璃が俺に手渡してきたのは、メガネだ。


「メガネ? これをかけるのか?」


 そう言って俺は少しかけてみる。しかし度が入っていないのか特段景色が変わるといったこともない。


「先輩、ここじゃ意味ないんです。さっ! 早く行って下さい!」


 なにやら瑠璃は後ろをチラチラ振り向きながら俺をダンジョンに行くよう急かしてくる。

 もしかして本部に内緒ってことはこの状況も見られたらマズイってことか?


 俺は彼女に例のメガネとE級ダンジョンの位置情報をもらって再び車に乗り込み、目的地へと向かった。



 ◇



 ということで半ば強引な感じでダンジョンへやってきた。

 そういえば何をすれば良いか聞いていないのだが。


 とりあえず整備されているほど綺麗な一本道を進んでみる。


 すると少し先に何か見えるぞ?

 ってなんだ犬か。

 あれ、でもあの犬、鎧着てる?

 しかも大型犬くらいの大きさだからより一層怖い。


 わずかな可能性で、服を着せたどこかの家のワンちゃんがダンジョンに迷い込んだんだと願ったが、ありゃダメだ。

 気づけば二足歩行になってる。

 もう立ち上がっちゃったらただのモンスターじゃん。


「グルルルルッ」


 あら立派な鳴き声しちゃって。


 異様な光景に少しビビってしまったが、今考えるとあのおじさんよりは怖くない気もする。

 いっその事立ち向かってみるか。


 俺は少しその犬に近づいてみると、


「ガウ――――――――――ッ!」


 あまり怖くなさそうな遠吠えをしたと思えば、奥から大人数の足音が聞こえてくる。


 これ……もしかしてヤバい?


 そう思った途端、その足音の正体が奥から現れた。

 予想通り、あいつ仲間を呼びやがったのだ。

 しかも大量にだ。


「やっぱそうなるかぁーーーーー!」


 俺も全速力で走っているが、相手は犬。

 マズイと思ったが、幸い向こうは二本足で追いかけてきており、速度は同じくらいだ。


 アホな犬でよかった。

 といっても先に体力が切れるのは俺だろうし、1番の問題はあの数だ。

 数える余裕もないけど約十数体ってところか。

 今のうちに何か策を……。


 あ、そういえばメガネかけるの忘れてた。

 まぁかけたからって何もないだろうけど。


 うん、とりあえずかけてみたけどなんにも……。


「いや、待てよ。なんだあれ?」


 俺が逃げている少し先に魔法陣みたいなのがある。

 しかもメガネを外せばそれが見えないのだ。

 もしかして瑠璃が伝えたかったのはあの先にあるんじゃないだろうか。


 そもそもあの魔法陣に乗ってどうなるかなんて分からないが、この先は行き止まりだ。

 どっちにしてもあのアホ犬集団にやられてしまう。


 それならば、一か八か。

 もう魔法陣は目の前。


「うお――――っ!!!」


 俺は勢いよくその魔法陣に飛び乗ったのである。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?