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第31話 遺跡で二手って大丈夫そ?



 さっきの爆発、かなりの威力だったのか未だに煙が立ち昇っている。

 こんな広い森だが、おかげで居場所が明確だ。


「紗夜さん! 行きましょう!」


「ええ!」


 俺と彼女は再び森の中へ入り、爆発があった場所へと向かっている。


 場所的にはそんなに遠くなかった。

 このスピードならそう時間はかからないだろう。


 距離にして後500メートルくらいか?


 よし、木々の境目からゴールが少し見えてきた。

 よくは見えないが、チラッと人影や煙が見える。


 残り300メートル!


 200メートル!


 100メートル!


 見えてきた……ん!?


「あれ? 紗夜さん、海成くん結局ついてきたんですか?」


 そこにはいつも通り不自然な笑顔を向ける池上、それに


「さてはお二方も池上さん達から何か学びたくなったんですねっ!」

「うんうん、きっとそうだよ!」


 本部組の2人が呑気に話しかけてきた。

 どうやら無事のようだ。

 それどころか怪我の一つもしていない。


 ならさっきの爆発はなんだったんだ?


「いや、さっきの爆発が気になってここまできたのだけれど?」


 紗夜さんは走ったが故に乱れている呼吸を整えた後にそう返答した。


「あ〜それはきっとこれのことですね」


 池上が目を向ける方には、大きな遺跡の入り口がある。

 それもゾウやキリンでも通れてしまうほどの大きさだ。

 遺跡……というより入口に関してはトンネルという感じだが。


 そしてその入口付近には大きな岩石が多数転がっている。


「遺跡?」


 俺の一言に池上が、


「ご名答! ここ、さっきまで岩がたくさん積まれてあって塞がってたんですよ。だから魔法で爆発させました」


「あーそういうことね。あと池上さん、あなたの相方浦岡さんはどこ行ったんですか?」


 紗夜さんがそう質問した。


 本部組の安否と後ろにある遺跡が気になって、浦岡のことを忘れてたわ。

 そういえば今見える範囲にいないな。


「あぁ、彼は今遺跡の中の様子を少し見に行って頂いています」


「1人で大丈夫?」


「彼は探索スキルを多く持ち、さらには土魔法を大の得意としています。ですので彼ほど適任はいないかと」


 土魔法といったら土壁を創ったりと、物理的なものから身を守ることに長けているらしい。

 だから未開の洞窟でもたとえ土砂崩れなどが中で起こっても1番無事の可能性が高い、適任とはそういうことだろう。


 ちょうどそんな話をしている時、洞窟の奥から足音が聞こえてきてその音は徐々に大きくなってくる。


 そして浦岡が姿を現した。


「奥、道が二つに分かれている」


 おお……。

 浦岡がまともに話すとこ初めて見た。

 なんとなく想像通り、そして声はかなり低音。


「そうですか。どうでしょう? この遺跡の調査もダンジョン攻略には必要と思われます。ここは一度、二手に分かれて調査するというのはいかがですか?」


 池上がここの全員にそう提案した。

 全員というより、紗夜さんにと向かって発言しているように見えるけど。


 まぁそれもそうか。

 あの本部組2人の心は掴んだといってもいいし、浦岡は言うまでもない。

 俺に関しては新人で発言権がないと思ってそうだ。

 つまり紗夜さんを説得できたら池上の案が通るという状態が出来上がっている。


「うーん……」


 彼女は眉をひそめて悩んでいる。


 そりゃそう、さっきあんな話をした後だ。

 そしてその『ギルティ』からの提案。

 悩まないわけがない。


 俺にはその冒険者を殺すことでヤツらにどんな利益が生まれるのかサッパリだ。

 しかし同じギルドの2人がたまたま『ギルティ』、そんな都合のいい話はない。

 きっと目的や理由があるはず。


「じゃあ二手に分かれるとしてメンバーはどうしましょう?」


 彼女は池上の提案に対して、そう返した。

 たしかにどう分かれるかは大事だ。


「そうですね。まず僕と浦岡は分かれるとして、ここにはちょうど6人。順当に3対3になるようみなさんで考えましょうか?」


 池上の提案は本来ごもっとも……ではあるが、そのB級2人が怪しいとなるとどう分けるのが正しいか分からない。

 そもそも真面目に攻略を考えているようにも見えるし。


「分かりました。みなさん、意見を出し合いましょう」


 それからチーム分けについて6人で話し合うことになり、


 あーだこーだとそれぞれ意見を言い合ったが、主には池上、紗夜さんの意見が明らかに合理的であり反対するものはいないまま話が進んでいった。


 そしてそのチームとは、


 Aチーム:池上、紗夜さん


 Bチーム:浦岡、俺、本部組


 本来、半分の3人ずつが良いとなったがここにはB級冒険者が3人いるため確実に偏りがでる。

 だからいっそのことB級冒険者を2人組ませたら2人でいいんじゃないか?となった。

 それなら池上と浦岡が一緒に行けばいいじゃないか。

 そう思ったが、彼はさっきも言ったとおり土魔法のスペシャリスト。

 遺跡内で何かが起こったら、1番身の回りを守ることができるのが浦岡だ。


 俺としては紗夜さんの身が1番心配。

 池上に何かされたらと思うと夜も眠れん。

 ダンジョンだから寝ないけど。


 しかしもし池上と浦岡が俺達4人を殺そうとしており、それを無事に乗り切れる可能性があるなら、このチーム分けが1番理想だと判断して紗夜さんは賛成したのだろう。


「ではチームも決まりましたし、先に進みましょうか」


 池上のその声で俺達は二手になり、その別れ際、紗夜さんと目が合った。

 手元にはスマホを持っている。


 ん? なんだ?

 っと思った途端、俺のスマホのバイブが鳴ったのだった。

 おそらく紗夜さんからのメッセージである。 


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