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第24話 歓迎会の夜①


「は~い。では皆さん今日は新入社員の合同歓迎会がありますので参加出来る人は出来るだけ参加してくださいね~」


 今日の仕事が終わりに差し掛かる頃、部署の人が今日の合同歓迎会のことを皆に伝える。


「沙羅~。今日の歓迎会楽しみだね~」


「あ~一葉お疲れ~。ね! 合同歓迎会とかすごい人数になりそうでめちゃ楽しみ!」


 そう。この会社では新人の歓迎会は合同でいくつもの部署でするらしく、かなり盛大な歓迎会らしい。


 この会社は部署だけでなく、横の部署の繋がりもこれからいろいろ必要になってくるから、新人の頃からたくさんの人と交流させることが目的だそうだ。


 しかも、いろんな店をプロデュースしてるこの会社なので、歓迎会の店も間違いなく期待出来るお店みたいだし、そんな大きな歓迎会、あたしの理想の出会いもそこで出来そうじゃない!?


 と、すでにあたし的な目的の王子様探しを胸に秘めて、すでにワクワクしている。



 それからすぐにその歓迎会の時間になり、あたしは張り切って一葉と共にその店に行き、店の雰囲気や参加してる人たちをチェックする。



「やばっ! オシャレすぎるこの店!」


 その歓迎会の店は、うちの会社で最近関わったメディアでも有名になったオシャレなお店。


 こんな場所を早々に貸し切りに出来るとか、さすがうちの社長!


 居酒屋なんかと違う華やかな装飾に煌びやかな照明や、その大人なオシャレな空間に、思わずうっとりしてしまう。


「こういうのこの会社に入ってのメリットだよね~。従姉のお姉ちゃんも言ってたけど、ホントこういう歓迎会とか飲み会とかのお店は間違いなく期待出来るっていうの嬉しいよね~」


 隣の一葉もこの空間に満足しているよう。


「ねぇ。沙羅。結構イケメンの人もいそうじゃない?」


「うん! ホントに王子様見つかるかも!」


 辺りを見回しても、至る所にイケメンっぽいオシャレな男性がいて、更に気持ちも上がる。


 やっぱいろんな部署の合同っていうのが大きいよな。


 まだ全然新人で関わり持てないはずなのに、こういう機会あったら、まずどんな人がいるか知ること出来るもんな。


「一葉はどんな人が好み? この中にいそう?」


 あたしはすでにいろんな人をキョロキョロと見ながら、一葉に尋ねる。


「あぁ~。あたしはそういうのは大丈夫」


「大丈夫って? 」


「あたし彼氏いるし」


「あっ、そうなんだ! そうだよね! あたしと同じフリーってわけじゃないよね!」


 確かに! 彼氏いたらそんな目でそもそも見ないや!


 今まで一葉のそういう話聞かなかったから知らなかったけど、まぁそりゃそうだよね!


「でもイケメンは好きだよ~(笑)」


 だけど一葉は同じようなノリでそんなことを言ってくれる。


「もしよかったらでいいんだけど、どんな人とか今度話聞かせてほしい!」


「うん。全然いいよ~。年上の彼氏で、最近は落ち着いた付き合いになってるけどね~(笑)」


 えっ、なんかカッコいい。


 余裕すら感じる。


 彼氏いる人の雰囲気ってこんな感じなんだ。


 すぐ隣にいる一葉が、年上の彼氏がいてすでに落ち着いた付き合いをしているのを聞いて、元々大人っぽかった一葉が更に大人びた存在に思えて、思わず見入ってしまう。


 あ~年上の彼氏か~。


 一葉なら絶対お似合いだろうな~。


 クールな感じが絶対またいい感じに見えるもん。


 で、この見た目と違う接しやすいギャップ。


 それきっと年下でも年上でもハマっちゃいそうなやつ。


「だから、沙羅の理想の王子様この歓迎会で見つけようよ! 素敵な人いっぱいいそうだよ~」


 一葉とは仲良くなってから、あたしがチョロいことと理想の王子様探しをしていることは、実はすでに伝え済みで。


 だからこの状況で協力しようと張り切ってくれている一葉。


 なんか恋バナしてる時、悪い意味じゃなく一葉は余裕感じてた気がしたのは、こういうことだったんだな。


 あたしが夢見る理想の相手語ってる時も、笑顔で話聞いてくれてたから、ついあたしの話っばっかりしてたけど、あえて一葉からはそういう話に乗っかってこなかったし。


 そっか。彼氏いるからしっかりあたしの話も聞いてくれてたんだな~。


 だからなんかあたしも話しやすかったっていうか、うん、大人の余裕さえ感じるよ。


 きっとそういう余裕さも一葉の大人っぽい魅力に繋がってるんだろうな。


 その点、あたしは常に王子様アンテナを張り巡らせてるせいで全然余裕とかないもんな。


 だからそういう魅力ないからモテないのか?


 絶対そういう雰囲気漏れ出てるような気するもん。


 だから理玖くんにもすぐバレちゃったりしてるんだろうし。


 あたしそういうの隠すの下手だからな~!


 すぐ顔にも態度にも出ちゃうし。


 モテるためには、ちょっと大人の余裕とか必要なのだろうか……。


 うん、だってこの歓迎会も新人ってなんかわかるもんな。


 初々しさとか雰囲気とか。


 だけど、先輩方はかなり余裕を感じる。


 しかもめちゃ綺麗な人多っ!


 オシャレな人もめちゃ多いし。


 でもそう考えたら新人ってこの中にどれくらいいるんだろう。


 新人のが断然少ないような……。


 会場全体をなんとなく見渡して、自分なりに状況を確認する。


「ねぇ。てか、この合同歓迎会ってこんなにたくさんの人参加してるの?」


 思わずこのすごい人数を目にして一葉に尋ねる。


「あぁ~。新人歓迎会っていう名の、これも皆の出会いの場みたいだからね~」


「えっ、そんな感じなの?」


「この会社は繋がりを大切にしてるみたいだから、出来る限りこういう場では、部署とか先輩後輩とかそういう垣根を作らずコミュニケーションを取ることをメインにしてるみたいだよ」


「なるほど……」


 確かになんか皆見てて気さくな雰囲気ある気がする。


「まぁ、裏を返せば、沙羅と同じようにここぞとばかりに素敵な人との出会いの場として参加してる人が多いみたいだけど」


「えっ、そうなんだ!」


 やっぱりか!


 だって女性たちの着飾り方が本気度感じるもん。


 会社帰りに適当に飲み会に来ましたみたいな感じじゃないし。


 服装も髪型もメイクもかなり気合入れてきました感が伝わってくる。


 それでいて男性もそれを意識してる雰囲気だし、思ってた以上にカッコいい人多く感じるし。


 やっぱ会社的に年齢若い人が多いのもあるのかな。


「だから沙羅も負けずにいい出会いちゃんとゲットするんだよ~」


「あっ、そうだね! 頑張る!」


 とりあえずそんな状況なら、新人のあたしが堂々と狙いには行けないけど、でもそれこそどういう人がいるのかとか、これからのためにちょっと参考にさせてもらおかな。


 そう言いながら、まずはとりあえず空いてる場所に一葉と座る。


 そして辺りにどんな感じの人がいるのか、ワクワクしながらキョロキョロと見回す。


 すると。 


 んっっ??


 いきなり目の前がなぜか真っ白な視界に変わる。


「えっ、何!?」




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