リチュと、ガキン、キズ―の、三人は、『エキドナ』の持ってきたリアカーに、乗る。
「『飛ばすから、
『特にリチュちゃん、お主は、あー、えーと、風の抵抗を、受けやすそうじゃしな。』」
『エキドナ』が、誤魔化すように笑い、走り出す。
その速さは、風のようで、三人は吹き飛ばされないように、荷台の縁を掴む。
リチュはさらに、体の形が崩れないようにする。
「うにゅにゅにゅにゅ。」「は、速い。」「おい、もっとゆっくり、移動できないのか!」
リチュ、キズ―、ガキンが、それぞれの反応をする。
走る速度を緩めず、振り向く『エキドナ』
「『お主ら、口を閉じていないと、舌噛むぞ?』」
「だったら、もっと、ゆっくり走れぇー」
森の中に、ガキンの声が響く。
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『エキドナ』は、『ヒューマノン』の前、森の出口で止まる。
「『お主ら、到着したぞ。』」
『エキドナ』が、振り返り、三人を見る。
ガキンと、キズ―は、疲れ果て倒れていた。
リチュにいたっては、青色に戻って、液体と化していた。
「『お主ら、大丈夫か…』」
体を元に戻し、『エキドナ』の心配に答えるリチュ。
「え、ええ、なんとか…
お二人は、大丈夫ですか?」
リチュは、ガキンとキズ―を揺らす。
「うう、気持ち悪い。」「おろろろろ。」
キズ―さんは、頭を抱えて立ち上がる。
ガキンに至っては、荷台の外に吐き出した。
「『すこし、張り切りすぎたかの。』
『申し訳ない。』」
「いえいえ、こんなに早く着いたんです。
それじゃあ、私達はもう行きますね。」
リチュは、ガキンとキズ―を抱え、荷台から降りる。
「『うむ、中まで行けず、すまんの。』
『妾、こんな姿じゃから、人間族から怖がられるのじゃ。』」
「大変ですね…」
「『ま、妾は長寿じゃし、認められるまで待つぞい。』
『お主を真似て、豊胸マッサージでも始めてみるのも、ありじゃの。』」
「ちょ、ちょっと、私がスライムって事、バレますので、真似てとか、言わないでください…」
『エキドナ』は、リチュの小声の注意に、「あっ」と、自分の口を手で隠す。
「『おっと、すまんの。』」
「気をつけてくださいね…それじゃあ、行ってきます。」
『ヒューマノン』に向かって走るリチュ。
『エキドナ』は、涙を流し、右手を振る。
左手には、サラシしか着けてない姿のどこから取り出したのか、ハンカチを持ち、それで涙を拭う。
「『行ってらっしゃい。』
『我が子の旅立ちは、こんなにも嬉しいのじゃの。』」
――――――――――
三人は『ヒューマノン』に着くと、リードを探す。
そんな彼らを、上品な服に身を包んだ二人の女性が、すれ違いざまに悪態をつく。
「なぁに?あの子達。田舎者?」
「服も顔も、泥で小汚いし、どこから来たのかしら。」
ガキンは、その悪態に怒り、女性を追いかけようとする。
「あいつら、ふざけやがって!」
キズーは、彼を後ろから抑える。
「待って、ガキン。
こんな場所で、暴れないで。」
その光景に、周りが騒がしくなる。
「ガキンさん、落ち着いて、実際私達汚れてますし。」
リチュも、ガキンを落ち着かせる。
「何があった?」
騒ぎを聞き付けたリードが、駆け寄る。
そして、顔を上げたリチュに気づく。
「あれ?貴方は…」
――――――――――
「わざわざ、忘れ物を届けに来てくれたんですね。
ありがとうございます。」
リチュは、リード達のいる城にお邪魔して、リードの忘れ物を渡す。
リードは、リチュから袋を貰い、感謝する。
しかし、その後怖い顔になる。
「しかし、リチュさん。
子供達を連れてくるのは、良くないですよ。
言ったじゃありませんか。今の森は、危険と…」
怒られたリチュは、落ち込む。
「はい、すみません。
止めたんですけど、ついてきてしまって。」
「とか何とか言って、本当は、わざと連れてきたんじゃないの?」
リズが、壁に寄りかかり、リチュを睨みつける。
「まだ言ってるのか!
そのつもりなら、ここまで来ないだろう!!」
タンクが、リズに怒鳴る。
「はいはい、そうですか。」
リズは、そう返すと、その場を立ち去る。
「すまない、リチュさん。
どうか、気にしないでくれ。」
タンクに、そう言われて、頭に疑問符を浮かべるリチュ。
「ま、今日はもう遅いですし、泊まっていってください。
王様には、私から伝えておきますから。」
リードは、そう言って、その場を後にする。
――――――――――
夜、暗い町を、鮮やかな光が差す。
その町の、片隅にある小さな建物中に、1匹のゴブリンが入る。
「ハロー、お客様。
本日はどんなご依頼で?」
中には、黒い長方形の物体があり、その面から、青い髪と青い唇のピエロの映像が映る。
スラリとした長身の彼は、丁寧に頭を下げ、ゴブリンからの話を聞く。
「ほうほう、人間族の味方をするスライムですか…
了解しました。
本来、スライム族は業務外ですが、人間族の味方をするとなれば、良いショーを見せてくれそうですから。」
ゴブリンの話を手帳にまとめた彼は、深々とお辞儀をし、そこで映像が消える。
ゴブリンは、悪魔のように笑った。