【亜沙美の部屋】
7月に入った第1日曜日
亜沙美は朝からパソコンに向かい椅子に座って、配信環境のチェックをしていた。昨夜開いた【ソウルバスター】の配信中、処理落ちが発生し動きが重くなった事があったからだ
全25対戦中1試合だけだったので、恐らくは対戦相手の通信環境に問題があると思うのだが…自分の方に全く落ち度が無い!とも言いきれないので一応の確認をし始めたのだが…
やり始めたら別の項目が気になりソレをクリアしたら、また別の部分も気に鳴りだしてしまい気が付いたら夢中になっていた
そんな時、亜沙美の部屋のドアがknockされたのだが…ヘッドホンをしながら調整していた亜沙美は、その音に気付かずに無反応だった
「居るんだろ亜沙美?入るぞ!」
「ガチャ」
何度knockしても反応が無いことにシビレを切らした太一が、勝手にドアを開けて入ってきた
「あぁ太一か…おはよう!迎えに来てくれたんだね。ありがとう♪」
「お前なぁ…同じ町内だからって玄関の鍵、開けっ放しで待つ。ってのはどうなんだよ?俺が来る前に誰かヤバい奴に侵入されたらどうすんだよ?」
亜沙美の無警戒さに呆れ果てている太一
だが、亜沙美からすれば…それだけ彼と会うのが楽しみ過ぎて心を許している表れでもあった。配信活動も楽しいので両方を活かす方法として亜沙美なりに考えた末なのだが…やはり危険だ
「まぁまぁ、そんなに心配しなくても大丈夫っしょ!この家で私がひとり暮らし状態だって知ってるのは、ゴクゴク一部の人だけなんだからさっ♪」
どうも亜沙美は1度その身に感じないと、新しい事を生活に導入しにくい性格をしている様だ
「(;-ω-)ウーン…だったらさ、もし良かったらなんだけど…嫌なら良いんだけどな…」
「何さ?歯切れの悪い言い方しちゃってさ…ハッキリ言ってくんないと分かんないんだけど?」
顔を赤くしている太一。どうやら彼なりに覚悟を決める提案をする気でいる様だ
「良かったら!この家の合い鍵を俺にくれ!そしたら毎日戸締りして用心できるだろっ?」
幼なじみの異性の女がひとり暮らしの様な生活している家の鍵をもらう。それは恋人との関係をも飛躍するかの様な提案だ!
それが1番合理的な答えだとしても、高校1年生の太一が口に出すのはかなり勇気が必要だったようだ
「……………オォ(*˙꒫˙* )なるほど!それは良い考えだね!思いつかなかったよ!」
太一がキヨミズの舞台から飛び降りる程の覚悟をして口に出した提案だったのだが…亜沙美にしては単に合理的な提案でしかなかったようだ
「あ、うん…受け入れてくれてありがとな…」
ここまで照れ臭いセリフを口にした俺の気持ちも多少は汲んでくれよ!と言いたい気持ちさえ引っ込んでしまうほど、亜沙美はアッサリとオーケーを出した
【隣町の繁華街】
「あった、あった!」
亜沙美は太一の手を取り見付けた【合鍵屋】へと向かって走り出した
……………………………………………
「梨香っ。ここは凄く人が多いねっ!」
「お店もたくさん有りますでしょう?本当に人が多いからハグれないでくださいね」
「ε٩(๑>ω<)۶з そんな子供じゃないって!」
中学の3年間、日本に居なかったロミータを連れて同じ繁華街に来ている梨香とロミータ
「こんな大きなモール、知らなかったっ!」
「去年出来た場所ですからね。市内で1番のショッピングモールだから、1度ロミータを連れて来たかったんです」
梨香はロミータが人混みに飲まれないか?心配なので彼女の手を握っている
ロミータは姉のように慕う梨香とのお出掛けが楽しいので、彼女の手を握り返していた
「ねぇねぇ梨香。あの2人って…亜沙美と太一じゃない?」
「(º ロ º๑)エッ!?…本当ですわね」
「そだっ!静かに近づいて驚かせましょっ♪」
子供っぽい悪戯(イタズラ)を思い付いたロミータは、亜沙美と太一の背後から静かに忍び寄った
「はい太一!私の家のスペアキーだよ。無くしたりしないでね!これでいつでも自由に私の家に出入り出来るね♪」
亜沙美は満面の笑みで太一に家のスペアキーを手渡した
「お、おう。そうだな…」
太一は幼なじみの異性の家の鍵を手に入れた!
「デロデロデロデロデンデデン♪」鍵を手に入れた太一は不幸になる呪いにかかった!
「た、太一君と亜沙美ちゃんって…そんなに親しい仲だったの?」
亜沙美は単にめんどくさい理由で、太一は亜沙美の不用心さをカバーする為の手法でしかなかったのだが…
嬉しそうに合い鍵を渡す亜沙美から、照れくさそうに受け取る太一の姿は…梨香からすれば本当に仲の良いカップルの熱い一面を見せ付けられたとしか思えなかった
「梨香ちゃん、ロミータちゃん。奇遇だね」
「えっ!?あ、いや…梨香コレは…」
「お、お邪魔しましたー!ごめんなさい!」
とんでもない現場を目撃してしまった!と思った梨香は、ロミータを置いてその場から逃げるように立ち去ってしまう
キョトンとしている亜沙美と、深刻に動揺している太一の姿を見詰めるロミータだった
続く