「アメリアさーん! あそこのエリア、どうなったっスか!?」
「終わらせています! ついでに掃除も終わらせておきましたので、あとで確認お願いします!」
「流石アメリアさん! すぐに確認に向かわせるっス!」
今日の私はサンドゥリス王城で働いていました。
何やら他国から使者が来るということで、城内は大忙しです。もちろんそれはメイド達にとっても無関係ではありません。城内の景観管理はメイドにとって重要な仕事なのです。
「それにしてもアメリアさん、ほんっと助かるっス。まだまだあたし一人だけだと扱いきれねぇところもあって」
今回は内容が内容らしく、なんとルミラさんが直接私のところにお手伝いを頼みに来たのです。
総メイド長であるルミラさんから頭を下げられてしまっては行かないという選択肢はありません。いや、頭を下げられなくても行くんですけどね?
だってメイドの仕事が出来ることは私にとって何よりの幸せ。こうしてメイド業務をしているだけで、私の中の幸福指数が爆上がりしています。
「えへへ、大丈夫ですよルミラさん。私でよければいつでも来ますから! 何なら二十四時間労働でも構いません」
「……アメリアさん、ヨダレ出てるっスよ」
「おっとすいません。私としたことが。ついついメイド業務のことを考えていたら……うへへ」
「本当にアメリアさんはモチベーションの塊っスよね。下のモンにも見習わせてぇところっスよ」
「そう言ってくれると嬉しいんですけど、私は大したことはしてませんよ? ただメイド業務をしていれば、自然と湧いてくるものですし」
モチベーションの塊だと、私はよく言われます。
けど、それについては良く分かりませんでした。
好きだから、やる気が湧き上がってくるだけなのです。
「流石すぎるっス。おっと、つい休憩しちまいましたね。そんじゃ次は――」
「正門の点検してきますね。私で直せそうなら直すし、駄目なら城の維持部門に話をしておきます」
「お願いするっス! それ終わったら、西棟のヘルプ行ってもらっていいスか?」
「もちろんです!」
そうして時間は経過し、いつの間にか昼を迎えていました。
「いやぁ……本当に助かったっス。そんで、これが今日のバイト代っス」
「え? なんでメイド業務をやってバイト代をもらえるんですか?」
「なんでメイド業務をやってバイト代がもらえないと思うんスか?」
「ありがたいんですけど、このバイト代はお返ししたいです。好きなことをやらせてもらっただけですし」
すると、ルミラさんは笑顔のまま、バイト代が入った封筒を私のポケットに突っ込みました。笑顔から放たれる圧力がすごくて、私は動けませんでした。
「多方面に示しがつかないので、これはもらって欲しいっス。というか、これ受け取ってくれなかったら、あたしは二度とアメリアさんに手伝いを頼めなくなるんスよ?」
「ええっ!? そ、そんな!」
「そんな、じゃないっスよ! アメリアさんレベルのメイドを無償で働かせた、なんて知られたら下手したら下のモンの給料カットされることになるんスから! 迷惑掛かることになるんで、何も言わずに受け取ってください。良いっスね?」
「は、はい」
分厚い封筒でした。これが私の労働に対する対価。私の仕事が認められた気がして、何だか嬉しかったです。
「さぁさ! この後用事があるんスよね? 早く行った方が良いんじゃないんスか?」
「あ! そうでした。それじゃルミラさん、ありがとうございました。また何かあったら声を掛けてくれたら嬉しいです!」
ルミラさんに別れを告げ、私はとある場所へ向かっていました。
「こんにちは~……」
冒険者ギルドの扉を開くと、必ず言ってしまう言葉です。
誰が聞いているわけではないのですが、私はとりあえず言っています。
「おーい、おせーぞ」
「アメリア、お疲れ」
いつもの席で、エイリスさんとマルファさんが手を振っていました。
「お待たせしました!」
「少し待ったぞー。つか、今日はメイドのバイトの日だったか」
「はい、さっきまで働いていました!」
「明日、他国の使者が来るからね。城内は迎え入れる準備で忙しいんだろう」
すると、マルファさんが目を細めます。
「何で他人事なんだよ。お前が一番関係者だろうが」
「ボクはお父様の横で微笑んでいれば良い役割だからね。他のことはプロに任せて、それだけは全力でやらせてもらうよ」
「プロ……ルミラさんが聞いたら涙を流して喜びそうです」
これ以上、この件で話すことはなくなったのか、エイリスさんが両手をパンパンと叩きました。
「さぁそろそろこの話も終わりにしよう。それに君たち、相手を間違えているよ。ボクはエイリスだからね」
「へいへい。エイリス様に怒られない内に、今日の依頼内容を確認しますかねぇ」
そう言いながら、マルファさんは一枚の紙を見せます。
「ふむふむ。農作物を食い荒らすドラゴンの撃破、か。過激なマルファらしい依頼というかなんというか」
「ど、ドラゴンってあのドラゴンですか!? 私のようなポンコツメイド、一瞬で餌になるような……」
「ガタガタうっせー! これがわたしの選んだ一番実入りの良い依頼なんだよ! 黙って受けろ!」
エイリスさんが笑います。
「マルファに一任したから、これ以上は言いっこなしにしよう。さて、それじゃ行こうか」
マルファさんがプンプン怒りながら、立ち上がります。
「分かってんなら、それで良いんだよ。さっさと行って、さっさと倒して、メシにしよう」
私も立ち上がります。
「はい! 皆さん、今日も頑張りましょう!」
私は今でも自分のことをポンコツメイドだと思っています。
仕事の完成度はずっと満足いくものではなく、今でも勉強の日々です。
そんな私のところにある日、カサブレードがやってきて、選ばれ、太陽の魔神との戦いに巻き込まれてしまいました。
太陽の魔神が狙うカサブレードを廃棄する旅の過程で、エイリスさんとマルファさんに出会い、今の自分があります。
あまりにも濃密な日々過ぎて、昔の私だったらどうしていたのか、想像もできなくなってしまいました。
しかし、それで良いんです。三人が過ごす日常は、いつまでいつまでも濃密な時間なのですから!
これは、立ち向かう勇気をほんの少し獲得したあるメイドのお話。
人生は立ち向かい続ける日々。私はこれからもずっと立ち向かい続けていきます。
「あ! この依頼が早く終わったら、メイドの仕事に行ってきて良いですか!?」
【カサブレードのアメリア~偶然聖剣に選ばれたポンコツメイドが世界中から狙われてしまいます~ 完】