目次
ブックマーク
応援する
2
コメント
シェア
通報

✾鈴鳴桜に導かれて

鈴鳴桜の咲く季節に彼と出逢った

無愛想で

話しかけても無視 

致命的なほどに私は好かれてはいなかった


彼と淡いの杜で過ごしたあの日々

鈴狐のなずなからは女の敵扱いされ

鈴烏の依澄はよく相談にのってくれて

鈴鳴の杜で一番美味しい和菓子を分けてくれた



神隠しで永遠に世界を渡り歩く運命づけられ

落ち込む私を彼は


「仕方ないから付き合ってやる。おれの神名に誓って、お前を元の世界へ帰す方法を探してやる」


「行くな、と一言、いえたらいいんだがな。おれにはできない。お前だから。お前だからこそ、できないんだよ」



「幸せを祈ってる。いつでもお前を想っているよ。――出逢えたのがお前でよかった」



もう二度と逢えなくとも



“あなた”を愛しています



――自分で壊した日常を再生するために



私は“あなた”と交わした約束を胸に

手紙に綴る

毎年桜の咲く季節になると私は

言の葉を織る

泡沫だけどその日はいつも桜吹雪が

日常を淡く染める


さあ前へ進もう


あなたがくれた約束で日常に煌めきを灯そう


鈴鳴桜の澄んだ音色に耳を澄ませば



――ほら。あなたの歌が聴こえる

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?