「俺だけが世界じゃないよ。もうわかってるんでしょ? 君はそんなこと望んでないかもしれないけど、俺は一番ちかくにいたからわかるんだ」
物置小屋にさす月あかり
夜色のマントを白銀に照らす
あの日、世界が変わった
少年は語る
青い夏の夏祭り
空を泳ぐ金魚のこと
花弁のように散るわたあめのこと
しかけ絵本のこと
歌う花のこと
空白だった病室は色づく
少年は魔法使い
灯花 狐のお面 水風船 りんごあめ 風車
少女のためだけの、夏祭り
少年のためだけの、時間
二年目の春
窓から向こう側の季節を知る
少女は春を美しいと、想ったことがない
ひらひら ひらひら ひらひら
夢のような風景も殺風景にしか映らない
少年は夜の淡いに現れる
花弁を持って
「春を届けにきたんだ。春はキライ?」
「……どうして?」
「顔見ればわかるよ。俺はそんな君の顔をずっとずっと見てきたんだから」
――――ぜんぶしってる 君が朽ちてしまいたいことも
ぜんぶ俺のエゴだってことも
それでも君を…………
真夏の夜 夜空を飾る星のランプ 窓辺の少年
深淵へと足を踏み入れようとした、刹那
「やあ。俺は
始まりは夏
「どんな夢もいつか覚めてしまう。それでも俺は願ったんだ、3年間だけ、時間がほしいって」
3年目の夏の果て、夢は終わる