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第75話:肘-1グランプリ⑥

「さあ浅井さん、いよいよ準決勝第一試合が始まりますよセイホ~オッ!!」

「セイホ~オ!?」


 今度はラッパーかよッ!!?

 田島さんのウザさが毎分更新されてくんだけど大丈夫ッ!?

 この大会終わった頃には、田島さんの好感度ストップ安になってるんじゃ……。


「早速抽選いってみましょうホ~オッ!!」


 間違いなくこれが今までで一番ウザいわッ!!!

 既に血管キレかかってるわッッ!!!!

 僕の血管が欠陥品になる前に(オヤジギャグ)、さっさと抽選を終わらせちゃおう。


 ――ベスト4に残ったのは、まーちゃん、変公、熊谷さん、篠崎さん、か。

 やはり今回も変公が台風の目になりそうだが……。

 僕は祈るように一つのボールを引いた。

 そこには――。


「浅井さん、発表しちゃオ~オッ!!」


 一回だけ殴ってもいいかなッ!!?


「――篠崎さんです」

「ふわっ!? ま、また私!?」


 篠崎さんは連戦になっちゃったね。

 まだ格好もさっきのビキニスク水のままだし。

 で、その篠崎さんの相手は、と――。

 次に僕が引いたボールに書いてあった名前は――。


「浅井さん、セイホ~オッ!!」


 遂にセイホ~オだけで会話するようになりやがったッ!!!

 親友として、やはり一発殴ってやるべきなのでは……!(使命感)


「――まーちゃんです」

「FOOOOOOOOOOO!!!! できれば美穂とは決勝で当たりたかったけど、こうなった以上全力でいくんで、お互い恨みっこなしだよ!」

「う、うん、わかったよ茉央ちゃん!」


 まさかの親友対決になってしまったか。

 しかもまーちゃんも第一試合の時のフリンジブラトップにパンタロンという格好のままなので、絵面がカオス過ぎる……!

 京大の卒業式かな!?


「セイホ~オッ!!(セイホ~オッ!!)セイホ~オッ!!(セイホ~オッ!!)セイホッホッホッ!!(セイホッホッホッ!!)セイホッホッホッ!!(セイホッホッホッ!!)」


 何か一人で勝手に始めたぞオイ!?!?

 実況の仕事はどうしたよッ!!!!

 ……もういい、とりあえず種目だけは決めておこう。

 僕は種目用のボックスから一つのボールを引いた。

 ――が、何とそこには――!?


「浅井さん、セイホ~オッ!!」

「…………『BL』です」

「「BL!?!?!?」」


 そう、BLです(真顔)。

 いやマジでそう書いてあるんだってここにッ!

 種目がBLってどういうことなの???


「それではルールを説明いたします」

「田島さん!?」


 急に素に戻るなよ!!

 ラッパーキャラはどうした!!?

 もう田島さんのキャラブレッブレだよッ!!!


「今からお二人には、お互い即興で好みのBLシチュエーションを相手に語っていただきます」

「「好みのBLシチュエーション!?!?」」


 相変わらずルールが治外法権だな!!

 ……あれ?

 てか田島さんって、BLの意味知ってたんだっけ?


「そして相手のBLシチュを聞いて先にエクフラを出してしまった方の負けとなります」

「なるほどねー。委細承知!」

「え、えぇ……、本当にいいの茉央ちゃん?」


 これはぶるうちいず先生圧倒的に不利じゃないか!?

 最近のぶるうちいず先生エクフラの栓ユルユルだかんなッ!

 そもそもまーちゃんがエクフラしてるところは見たことないし。


「ではシチュエーションが思いついた方から発表してください」

「よっしゃー! 美穂をズッパンズッパンエクフラせるぞおおお」

「あわわわわわ」


 これはよもや一瞬で勝負ついちゃうかな?




「――は、はい! 出来ました!」


 何!?

 が、存外先に手を挙げたのはぶるうちいず先生の方であった。

 ……いや、よく考えたらBLシチュを考えること自体はぶるうちいず先生の専売特許なんだから、妥当っちゃ妥当か。

 問題はまーちゃんをエクフラせることができるかだが……。


「それでは篠崎さん、シチュエーションをお願いします」

「はい。――メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐じゃちぼうぎゃくの王を除かなければならぬと決意した」


 走れメロス!?


「『セリヌンティウス、私は三日目の日暮れまでに必ず戻る。だから私を信じてここで待っていてくれるか?』『ああメロス、私は君を信じている。――ただ、一つだけいいだろうか?』『ん? 何だ、何でも言ってくれ。私と君の仲じゃないか』『……じゃあ、丸三日も君の声が聴けないのは寂しいから、毎日寝る前には必ず電話してくれないかい?』『ああ、いいとも』」


 ――!?


「『あと、その際は私の好きなところも10個言ってほしい』『わかった。約束する』」


 セリヌンティウス大分面倒クセーなッ!!?


「『……あと』『ん?』『三日後帰ってきたら……私のことを強く抱きしめてほしい』『……ああ、必ず』」


 甘ーーーーーーい!!!!!(迫真)


「この二人の遣り取りを見ていた邪智暴虐の王は大層たっとみを感じ、二人を許したのでしたとさ。めでたしめでたし」


 太宰治に謝って!!!!


「――!! エ、エクッフ……!」


 っ!?

 まーちゃん!?

 ま、まさか……。

 出ちゃうのかい!?

 早くも出ちゃうのかいッ!!?


「……エ、エクセレントフランボワーズッ!!!」

「「「――!?」」」


 何それ!?!?!?

 エクフラはエクフラでも、エクセレントフランボワーズのほうが出ちゃったよ!

 ……いや、エクセレントフランボワーズも初耳だけどね僕はッ!!


「ふぅ、ふぅ……。――やるね美穂、今のは危なかったよ」

「ふふ、咄嗟にエクフラをエクセレントフランボワーズにシフトチェンジさせるなんて、茉央ちゃんもなかなかだね」


 何故いつもまーちゃんの試合は台詞がバトル漫画みたいになるんだろう?(素)


「――次は私の番だよ!」

「くっ!」


 まーちゃんの考えたBLシチュかあ、全然予想つかないな。


「――あるところにおじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは山へ芝刈りに。おばあさんは川へ洗濯に行きました」


 ――!?


「すると川上から大きな桃がドンブラコドンブラコと流れてきました」


 まさかの桃太郎!?!?


「その桃から生まれた男の子は桃太郎と名付けられ、イヌ、サル、キジを従え、鬼ヶ島まで赴いて鬼を退治しました。『ふっふっふ、どうやら僕の勝ちのようだな、鬼よ』『くっ、殺せ! 生き恥は晒さん!』『――いや、そうはいかないね』『……何!?』『僕が勝ったんだから、君の命は今日から僕のものだ。もう一生君を逃がさないから、覚悟するんだね』『そ、そんな……』」


 そしてまさかのヤンデレッ!!!


「『……なあ、イヌ』『ん? 何だよサル』『じ、実は前から俺、お前のこと……』『なっ!? こ、こんなとこでよせよ……! でも、俺もお前が……』『っ! ……イヌ』『……サル』」


 そしてまさかのサル×イヌッ!!!!

 お前ら文字通り犬猿の仲じゃないのか!?(ケンカップルってやつ?)


「ですがこれではキジだけが一人余ってしまいます。――でもご安心ください、キジはこの後、おじいさんと結ばれて末永く幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし」


 いやおばあさんは!?!?!?!?


「エ、エクッフ……!!」


 っ!!?

 ぶるうちいず先生……!

 出るか……!?

 今度こそ出るのか……!!


「……エ、エクレア食べたいフランス人ーーー!!!」

「「「――!?!?」」」


 遂に文章になったよ!?!?!?

 いや確かにエクレアはフランス発祥のお菓子だけれども!!


「ハァ、ハァ……。――茉央ちゃん、今のはちょっとズルくない?」

「ハハハ、勝てばよかろうなのだァァァァッ!!」


 僕に言わせればこの勝負自体がいろいろズルいと思うけどね。


「でも流石美穂だね。まさか歴史上まだ三人しか成功させたことがないエクレア食べたいフランス人を、この土壇場で決めるなんてね」

「ふふ、私にもエクフラージュとしてのプライドがあるからね」


 エクフラージュって何!?!?!?


「さあ次は私の番だよ茉央ちゃん! これで決めるよ!」

「バッチコイ!」


 滅茶苦茶白熱してるじゃないか(素)。


「――シンデレラは継母とその連れ子である二人の姉に、毎日イジメられておりました」


 えっ!!?

 シ、シンデレラ!?!?


「そんなある日、魔法使いの粋な計らいでシンデレラはカボチャの馬車に乗って舞踏会に行くことができました。そこで王子様と恋に落ちたのですが、約束の零時になってしまったのでシンデレラは涙ながらに会場を後にします」


 あ、あの、ぶるうちいず先生?

 これ、BL対決なんですけど?


「ですが、そこでシンデレラが落としたガラスの靴を頼りに、王子様は遂にシンデレラを見つけ出します。『やっと見つけたよシンデレラ。もう君を離さない。――僕と結婚してくれ』『……ですが王子様、実は私は――なんです!!』」


 まさかの男の娘ッッ!!!?


「『フフフ、そんなの最初から気付いていたよ』」


 王子様ッッ!?!?!?


「『それを知った上で求婚しているんだよ僕は。――さあ、君の返事は?』『は、はい……、こんな私でよければ』『『イエス、フォーリンラブ』』めでたしめでたし」


 甘ーーーーーーい!!!!!(天丼)


「エ、エクッフ……!!」


 まーちゃん――!!

 こ、これは……、流石のまーちゃんも!


「エクストリームヘヴンフラーーーッシャ!!!!」

「「「――!!!」」」


 嗚呼ッ!!!

 ま、まーちゃーーーーん!!!!


「――いや、まだですよ浅井さん」

「っ!? た、田島さん!?」


 まだとは……!?


「今足立さんは『エクストリームヘヴンフラッ』と言いました。なのでギリギリセーフです」

「なっ!?」


 う、うおおおおおおおお!!!!

 まーちゃあああああああああああん!!!!!!


「ぶはぁ! い、今のはマジでヤバかったよ美穂……! ちょっとだけエクフラの川が見えたよ」


 何その三途の川みたいなの(素)。


「くぅ! 今のも耐えられるなんて!」

「ふふふ、じゃあとどめだよ美穂ッ!」


 まーちゃん!


「――今日の智哉は、一人で勇斗の家に遊びに来ています」

「なっ!? ま、茉央ちゃんッ!?」


 まーちゃんッ!?!?

 実名はナシじゃないッ!!!?


「そこで偶然中学校の時の卒業アルバムを見付ける智哉」

「あ、ああ……。あああぁ……」


 君は鬼かッッ!!!!


「『うわあ、懐かしいなぁ。――あっ、この写真は体育祭の時の』『ああ、俺達二人で二人三脚した時のやつだな。智哉がもたつくから、ビリになっちまったんだよな』『もう! あれは勇斗がガンガン進もうとしすぎたからだろ! 僕は運動苦手なんだから、僕に合わせてよ』『でも……、俺は嬉しかったぜ、智哉と二人三脚できて』『えっ! ……勇斗』『できればこれからもお前と二人三脚で歩いていきたい。――死ぬまでずっと』『っ! ……ゆ、勇斗』――こうして二人は病める時も健やかなる時も、互いに力を合わせ二人三脚で生きていったのでした。めでたしめでたし」


 名誉毀損で訴えるよッッ!!!!


「エクストリームヘヴンフラーーーーーーーッシュ!!!!!!!!!!!」

「「「――!!!!!」」」


 ……うん、今度は間違いなく正真正銘のエクフラが出たね(素)。


「この勝負、足立さんの勝利です! セイホ~オッ!!」

「セイホ~オッ!! FOOOOOOOOOOO!!!!」


 自分の彼氏と彼氏の親友をネタにして勝利をもぎ取る女、足立茉央(迫真)。

 ……あれ?

 そういえば今回は珍しく一度も微居君の殺気を感じなかったな?

 ふと微居君の席のほうを見ると、そこに微居君の姿はなかった。

 おや?

 どこに行っちゃったんだろう?

 僕が絵井君に目配せすると――。


「ああ、微居なら埒が明かないからって、一網打尽にするために元気玉サイズの岩を調達しに行ったよ。いや俺も止めたんだけどさ」

「っ!?!?!?」


 どこからツッコめばいいやら(素)。

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