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第74話:肘-1グランプリ⑤

「それでは浅井さん、一回戦第四試合の抽選をお願いするにゃん」

「にゃん!?!?」


 遂に田島さんが猫になっちゃった!!!!

 ゴツいバスケマンの『にゃん』は大分腹にクるなッ!!

 心が胸焼けしそうッ!!

 ……いや、それよりも。


「田島さん、もう消去法で組み合わせは決まってますよ」

「いや、それでも一応ボールは引いてください。ルールなんで」

「はあ……」


 田島さん意外と杓子定規なとこある。


「ルールにゃんで」

「言い直した!?!?」


 もう『にゃん』はたくさんだよッ!!!

 某国の開発した新手の拷問かなッ!?!?

 ……まあいい。

 僕がクジを引かないと話が進まないというなら黙々と引くだけだ。

 野球でホームランを打った選手が、形式的に塁を一周するようなものだと思うことにしよう。

 僕はおもむろに一つのボールを引いた。

 そこには――。


「浅井さん、発表してください」

「――小牧さんです」

「オラアアアアアア!!!! 主役は遅れてやってくるううううう!!!!!」


 相変わらずテンション高いな小牧さんは。


樋口ひぐちせんぱーい!!! あなたの小牧梨乃の出番が遂にきましたよー!!!! 網膜に焼き付けておいてくださいねー!!!!」

「オウ、シッカリ見てるぞ、小牧」


 むむ!?

 最前列で小牧さんと蜂蜜の砂糖和えみたいな空気を醸し出してるのは、樋口先輩じゃないか!?

 ――樋口先輩は我が校では知らない人はいないレベルのイケメンで、肘北が誇るイケメン四天王――通称『H4エイチフォー』の内の一人だ(因みに勇斗と皆川先輩もH4の一員である)。

 そんな樋口先輩と、こう言ってはなんだが良くも悪くも普通の容姿の小牧さんがあんなに良い雰囲気だなんて……。

 ……まあ、そんなこと言ったら僕とまーちゃんだって似たようなものだろうし、人のことは言えないけど。

 ――ただ、それよりも何よりも、樋口先輩に微居君ホル・○ースが凄い形相でエン○ラーを向けているのがヤヴァい!!!

 彼にとってはスーパー勝ち組の樋口先輩なんて、不倶戴天の敵だろうからな……。

 頼むぜ絵井君ジョ○ョ!!

 樋口先輩を守ってくれよ!!

 ……さて、今のうちに、と。

 僕はラスト一個のボールを感慨深く引いた。

 そこにはもちろん――。


「――浅井さん」

「はい――篠崎さんです」

「が、頑張りましゅ! あっ」


 噛んじゃった!

 こ れ は か わ い い。

 そんな篠崎さんを見た田島さんが、「俺の彼女は、今日も宇宙一可愛いにゃん」とでも言いたげな凛々しい顔をしている……。

 でも、そんな田島さんを微居君ミ○タセッ○ス・ピストルズが狙ってるから、くれぐれも気を付けて!(迫真)

 ――よし、今のうちにさっさと種目を決めてしまおう。

 『料理』、『小説』、『かるた』ときて、次は――。

 僕は一つのボールを取り出した。

 そこには――!!?


「浅井さん、種目はにゃんですか?」


 イラッとするなマジで!!!!

 幼稚園の頃から一緒にいる幼馴染が急に猫になった僕の気持ちわかるッ!!?


「――種目は、『ちっぱい』です」

「「ちっぱい!?!?!?」」


 うん、そりゃそういうリアクションになるよね。

 でも本当にボールにそう書いてあるんだよ。

 確かにこの二人は紛うことなきちっぱいだけど……。


「それではルールを説明いたします」


 するのか、説明を(倒置法)。


「これからお二人にはそれぞれ交互にちっぱいアピールをしていただきます」

「「ちっぱいアピール!?!?!?」」


 ちっぱいアピール!?!?!?


「そしてちっぱいソムリエである私がそれを審査し」

「「ちっぱいソムリエ!?!?!?!?」」


 知らない単語がバンバン出てくる!!!!


「よりちっぱいポイント――通称『ちっポイ』が高かった方を勝者といたします」

「「……」」


 うわあ。

 そりゃ二人共そんなチベットスナギツネみたいな顔になるわ。

 でも、田島さんがちっぱいに造詣が深いのは事実だし、適任といえば適任なの、か……?


「フッ、安心しろ二人共! 私がお前達二人を、最高のちっぱいクイーンに仕上げてやる!」

「み、峰岸先生!?」

「コーチ!?」


 にわかに舞台に上がった変公がスマホを操作すると、かるたが置かれていた畳や巨大スクリーンが引っ込み、代わりにカーテンが付いた試着室のようなものが二つ現れた。

 シッチャクート!?


「こんなこともあろうかと、お前達に似合いそうなちっぱい衣装を多数取り揃えておいたのだ」


 そう言うなり変公は例によっておっぷぁいの谷間から無数の衣装を取り出した。

 そしてその内の二着を手に取ると、一着ずつ試着室の中に投げ入れてカーテンを閉めた。


「フッ、さあ二人共、中に入って着替えるんだ!」

「あ、はあ……」

「はい、コーチ!」


 相変わらず篠崎さんは変公の操り人形だな。

 でもこれって所謂コスプレ対決的なものってことかな?

 ここにきてやっとミスコンぽい展開になってきたな。

 ただ、あくまで変公が用意した衣装なんだよなあ……。

 何だかいろいろフラグが立ってる気がするのは僕だけかな?(君のような勘のいいガキは嫌いだよ)




「フッ、二人共、着替えは終わったな?」


 変公が試着室の中の二人に声を掛けた。


「はい、コーチ!」

「いや峰岸先生!! 私本当にこの格好で人前に出るんですか!?」


 嗚呼、やっぱろくでもない衣装を着せられてしまったんだね小牧さん。

 何なら辞退してもらってもいいんだよ?


「フッ、当たり前だろう。大丈夫大丈夫、凄く似合っているぞ」

「見えてないのに適当なこと言わないでくださいッ!!!」

「まあまあ、とりあえず小牧の方からドーン!」

「ああっ!!?」


 変公は無理矢理小牧さんの試着室のカーテンをオープンしてしまった。

 するとそこには――。


「み、見ないで……、見ないでください樋口せんぱーーーい!!!」

「「「――!!!」」」

「こ、小牧……!?」


 何と小牧さんは、幼稚園児が着ているような、スモックと黄色い帽子を身に纏っていたのだ。

 モックリート!?!?

 体育祭の時に変公がまったく同じ格好をしていたけど、欠片も似合っていなかった変公に対し、小牧さんは体型的にもスモック似合い過ぎである……(白目)。


「素晴らしいッ!!! なだらかな胸部を活かしたストンとしたボディラインのスモック!! そしてあどけなさをより引き立てる黄色い帽子!!! そしてそして自分はもうこんなものは着たくないんだ大人なんだと主張することによって逆に強調される幼稚さ!!!! ちっぱいとは斯くやと言わんばかりの完成された芸術作品がここにあるッッ!!!!」

「田島さん!?!?」


 めっちゃ早口で言ってそう(実際言ってる)。

 流石ちっぱいソムリエ。

 これはキモい(辛辣ゥ)。


「ね!? そう思われますよね樋口先輩!!」

「ん? あ、ああ、そうだな。似合ってるぜ、小牧」

「ファッ!? ホ、ホントですか!!? ヨッシャアアアアアアアア!!!!!」


 樋口先輩!!?

 もしかして、先輩もなんですか……!?(戦慄)

 それはそれとして、微居君ジョン○リ・Aマンハッ○ン・トランスファーが狙ってるから、油断大敵ですよ!!


「フッ、どうだ小牧、私の目に狂いはなかっただろう?」

「はいッッ!!! 峰岸先生あざーーーーーーーーっす!!!!! 一生ついていきます!!!!」


 何ッ!!?

 篠崎さんに続いて、小牧さんまで……。

 何故あんな悪意がセーラー服を着て歩いてるようなやつがこんなに慕われるんだ……。

 これが悪のカリスマってやつなのか。


「これは72ちっポイはいっていますね」

「イエス! イエスイエスイエス!!」


 それがどれくらい凄いのかは僕にはわからないけどね。


「フッ、次は篠崎の番だぞ。準備はいいな?」

「はい、コーチ!」

「では篠崎をドーン!」


 さて、篠崎さんはいったい……。

 こ、これは――!?


「ど、どうかな? 変じゃないかな?」

「「「――!!!」」」


 篠崎さんの衣装は、上はフリルの付いた白いボレロ。

 下は黒のシフォンスカートにタイツといったものだった。

 う、うわあ、これはいかにもがお好きそうな格好だな……。


「ハラショーッ!!! 平坦な胸だからこそ似合うフリルの付いた白いボレロ!! そして少女としてのあれやこれやを内包したフワッフワのシフォンスカート!!! そしてタイツ!!!! よくタイツは露出がまったくないので萌えないという意見を聞きますがとんでもないッ!!!! そもそも日本には古来より『包む』というのが文化として根付いているのです。風呂敷然り、ご祝儀袋然り。――その究極系とも言えるのが『タイツ』なのです……! ありがとうタイツ!! ありがタイツ!!! これは108ちっポイはいっていると言っても過言ではないでしょうッッ!!!!」


 田島さん止まんねーなッ!!!?


「あ、あははは……。ありがと、勇斗くん」


 何だかんだ照れつつも嬉しそうな篠崎さんである(真顔)。

 もちろんそんな篠崎さんの彼氏に微居君ヴィ○ァーノ隕石プラ○ット・ウェイブスが直撃しようとしてるから、阻止して絵井君ジョ○ーン!!


「フッ、これは負けてられんな、小牧」

「はい、コーチ!」

「「「――!!!」」」


 むむ!?

 いつの間にか他の衣装に着替えた小牧さんが変公の横に立っていた。

 てか小牧さんも変公のことをコーチと呼ぶようになってる……。

 もうこの学校はお終いだ……。

 ただ、今回の小牧さんの衣装もなかなかになかなかだな。

 何と小牧さんは、婦警さんの格好をしていたのである……!


「婦警さんキターーーー!!!! 何故ちっぱいに婦警さんと思われるかもしれませんが、婦警さんは法を取り締まる側の人間ですから、やはりグラマラスな体型よりもスレンダーでシュッとした体型の方がより『取り締まってる感』が出ると私は思うんですね。もちろんグラマラス婦警さんに萌える方の気持ちもよくわかります。極論萌えというのは人それぞれだと思いますので他の方の萌えを否定するつもりは毛頭ございません。――ただ今回の勝負はあくまでちっぱい対決です。この場に敢えて『婦警さん』という要素を取り入れた小牧さんに、私は畏敬の念を感じずにはいられません。――256ちっポイ獲得です!!」


 ちっぱいについての解説本でも出すつもりかな!?!?


「うっひょおおおおおお!!!! これはもう勝ったも同然でしょーーー!!!! 樋口せんぱーーーい、どうですか私ッ!!? どうですか私ッッ!!!?」

「ああ、可愛いと思うぞ」

「地球に生まれてよかったーぁ!!!!」


 ううむ、こうして並んでる二人を見ると、最早カオスだな。

 ただ、言わずもがな微居君吉良○影爆弾岩シアーハートア○ックが「コッチヲ見ロォォォ!!」と言ってるので、絶対見ちゃダメですよ樋口先輩!


「フッ、では最後に、篠崎にはを着てもらうか」

「コ、コーチ!? をですか……!?」


 ん?

 何だろう?

 ここからじゃ変公が陰になってよく見えないな。


「わかりました! 私、着ますッ!!」

「フッ、その心意気や良し!」


 ……そこはかとなく嫌な予感がする!!




「お、お待たせいたしました」

「「「――!!!!!」」」


 そして満を持して登場した篠崎さんは、ビキニのスク水の上に猫耳パーカーを羽織り、更にメガネまで完備という、あざとさ5億%という出で立ちだったのである……!!


「にゃーーーん!!! にゃにゃーーーん!!!! にゃにゃにゃにゃーーーん!!!!! にゃにゃにゃにゃちっぱいにゃにゃんにゃにゃーーーーん!!!!!!」

「田島さーーーーーん!!!!」


 遂に田島さんが猫そのものになってしまった……(落涙)。


「篠崎さん、5000兆ちっポイ獲得ッ!!!!! 篠崎さんの勝利ですッ!!!!!!」

「クソがああああああッ!!!!!!」

「あ、あははははは……」


 とんでもない茶番を見せられた(無)。


「びえええええええん、樋口せんぱーーーい!!!!」

「よしよし、俺は小牧の方が可愛かったと思うぞ」


 泣きながら観客席に飛び降りて樋口先輩に抱きついた小牧さんは、樋口先輩に頭をナデナデしてもらってご満悦のようであった。

 ただ樋口先輩、後ろから微居君ツェ○リ男爵岩カッター波紋○ッターが今にも放たれようとしてるんで、今すぐ逃げてくださいッ!!!(パパウパウパウ)


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