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第89話:エチュード⑥

「うふふ、じゃあBチームのテーマは『関ヶ原』でどうかしら?」

「フッ、是非もない」


 関ヶ原だと!?!?

 完全に戦国武将に寄せてきてるじゃんッ!!

 これはまたわらわら出てきそうだな、武将達が(倒置法)。


「フッ、文字通りこれが天下分け目の戦いだ! みな死力を尽くせ! エチュードエチュードエッチュッチュー!」

「「「エチュードエチュードエッチュッチュー!」」」

「…………エチュードエチュードエッチュッチュー」


 いつもながら超渋々だけどやってくれる微居君……!(萌)

 さて、今回も念のためBチームのメンバーをおさらいしておくと、変公、孝一兄ちゃん、篠崎さん、絵井君、微居君という顔ぶれである。

 注目はやはり初参戦の孝一兄ちゃんがいかに立ち回るか。

 ……そして戦国武将はどれだけ出てくるのか(迫真)。

 少なくとも東軍の総大将の徳川家康と、西軍の総大将の石田三成はほぼ確定だろうな。

 あと他に関ヶ原の合戦に参戦した有名な武将って誰がいたっけ?


「押忍! 相模センパイ! 頑張ってくださいっす! 狙うは大将首っすよ!」

「いやこれ演劇だから。合戦じゃねーから。……まあ、るからには精一杯ってみるさ」

「押忍ッ! 応援してるっす!」


 また孝一兄ちゃんと熊谷さんがイチャイチャしてる(呆れ)。

 でもあんま見せつけてると、微居君ロックマンロックバスターで狙われるから気を付けてね!




「こ、ここがあの関ヶ原かあ」


 ――!

 が、蓋を開けてみたら、何と最初に舞台に立ったのは孝一兄ちゃんその人であった。

 おお、マジで頑張ってるじゃん孝一兄ちゃん!

 そんな孝一兄ちゃんのことを、熊谷さんは目をハートにしながら見つめている……。

 君は本当にわかりやすいね。

 でも孝一兄ちゃんはいったい何役なんだろう?


「まさか突然謎の光に包まれたと思ったら、戦国時代にタイムスリップしちゃうとはなあ」


 そういう設定!?!?!?

 ……いや、でもこれは案外悪くない選択かもしれない。

 演劇初心者がいきなり戦国武将の役をるのはハードルが高いもんね。

 現代人の役であれば自然体で演技ができるし、孝一兄ちゃんなりの苦肉の策なのかもしれない。


 ――と、そんな孝一兄ちゃんの前に微居君が。


「岩はいらんかねー。拾いたてゴツゴツの岩だよー」

「っ!?」


 また岩屋さんッッ!?!?!?!?

 君はそれしからないなッッ!!!!

 狂気的とすら言える岩への執着!!


「どうだいそこのおにいさん。今日のオススメはこの程よい硬さの安山岩。今なら特別に99800円でいいよ」


 電動キックボード買えちゃう!!!!

 前回より値段上がってんじゃねーかッ!?!?

 てかなんで戦国時代なのに通貨が円なんだよッ!!!

 ――関ヶ原はどこいったんだよッッ!!!!!


「え、えぇ……。いや流石にその値段はちょっと手が出ないですねえ」

「まあまあそう言わずに、よく見てくださいよ――ホラッ!!」

「――!!」


 微居君は程よい硬さの安山岩を、フルスイングで勇斗にブン投げたのである。

 微ッポリート!!!

 ま た 投 げ た!!!!

 やっぱさっきの熊谷さんとのイチャイチャを根に持ってたんやッ!!!!

 最近の微居君は、完全に我慢ができない子になっているッ!!!

 こ、孝一兄ちゃん――!!


「フッ、確かにこれはなかなか質の良い安山岩だ」

「「――!!!」」


 が、孝一兄ちゃんのピンチを救ったのは、意外や意外変公であった。

 変公はおっぷぁいの谷間から取り出したロボットアームで、安山岩をガッチリキャッチしたのである。

 お前もたまには人助けとかするんだなッ!?!?

 でもこれでお前の普段の悪事おこないがチャラになると思ったら大間違いだからなッ!!!

 不良が捨て犬に傘を差してあげて好感度アップみたいな流れは、僕は許さないからなッッ!!!!(変公に厳しい)


「あ、あなたは……」

「フッ、なあに、私は通りすがりのしがないチュパカブラハンターさ」

「……はぁ」


 チュパカブラハンター久しぶりッッ!!!!!

 確かにUMAを出すのは禁止にしたけど、チュパカブラハンター自体はUMAじゃないもんねッ!!

 こいつは一本取られたね!!(膝をピシャリ)


 ――と、そんな混沌とした空間に、おもむろに絵井君が現れた。


「説明しよう! チュパカブラハンターとは、チュパカブラのハンターである!」


 何となくそんな気はしてたよッ!!

 微居君が岩屋さんだった時点でねッ!!


 ――関ヶ原はッッッ!?!?!?!?


 未だに戦国武将がただの一人も出てきてないんですけど!?!?

 テーマが職員室だと戦国武将出しまくるクセに、関ヶ原だと一人も出さないなんて、何てひねくれた連中の集まりなんだッ!!!(血涙)


「これはこれはみなさんお揃いで」


 ――と、そこへ、最後の演者である篠崎さんが……!?

 頼む……!!

 せめて篠崎さんだけでも関ヶ原感(関ヶ原感?)を出してくれ……!!(祈)


「え、えーと、あなたはどちら様で?」

「はい、私は通りすがりの同人作家、ぶるうちいずと申します」

「……えぇ」


 終ーーー了ーーーーーー!!!!!!!

 結局戦国武将一人も出ないまま終わったよッッ!!!!

 ひょっとしてここ、『関ヶ原』って名前の同人イベント会場だったりするのかな!?!?(名推理)


「説明しよう! ぶるうちいずとは、アオカビによって熟成を行うチーズである!」


 そっちの説明をするんだ!?!?


「な、なんで同人作家さんが関ヶ原こんなところに……?」

「はい、それはですね、私が次に出す同人誌のネタにするために、秀吉×信長を取材に来たからです!」

「んんんんんん????」


 いやそりゃ孝一兄ちゃんもそんな顔になるよッ!!!!

 見事に孝一兄ちゃんも受けたようだね、エチュードの洗礼を!!!(倒置法)

 てかそもそも関ヶ原の合戦の時点では秀吉も信長も死んでるよね!?

 張り切って取材に来た割には、その辺の下調べはガバガバだねぶるうちいず先生!!


「で、でも、この時点だと秀吉も信長も既に死んじゃってますけど……」


 うんうん、言ってやってよ孝一兄ちゃん!


「フッ、そこでこのチュパカブラハンターの出番というわけだな!」

「え?」


 いや少なくともお前の出番ではないよ???

 誰もチュパカブラの話題なんて出してないからね???


「フッ、何を隠そうチュパカブラハンターになるには、イタコの資格も必須なのだ! 今からここに秀吉と信長の霊を呼び寄せてやろう!」

「ほ、本当ですかチュパカブラハンター!」


 適当なこと言ってんじゃねーぞこのエセカブラハンターがッ!!!

 架空の職業だからってやりたい放題だなッ!!!!


「フッ、来い来い来来来い、霊よ来い!」


 何そのクソダサ掛け声!?


「フッ、来い来い来来来い、霊よ来い!」


 ――!?

 気のせいか……?

 今インチキイタコ女が、僕と勇斗のことをチラ見してきたような……?

 ――ま、まさかッ!!

 さっきのAチームで、僕と勇斗が信長と秀吉役だったから、僕達に舞台に立てとでもいうのか……!!?


「フッ、来い来い来来来い、霊よ来い!」


 ……えぇ。

 何でいつもBチームは、敵チームの演者も出そうとするんだよ……。

 普通にズルくない、それ?


「――ともくん、お願い、ぶるうちいず先生を助けてあげて」

「……まーちゃん」


 またこの流れなの?


「うふふ、やっぱり秀吉×信長といえば、あなた達以外にはれないわよね」


 ……優子。

 いや、僕と勇斗はついさっき初めてったばかりなんだけど……。


「押忍! 浅井君、正拳突きのコツは、インパクトの瞬間までは身体をリラックスさせることっすよ!」


 ……熊谷さん。

 何故今正拳突きのコツを?


「智哉、見せてやろうぜみんなに。俺とお前の”本気”をよわっさほーい」


 ……勇斗。

 もう初期の頃のキャラが薄かったお前はどこにもいないんだな(メタ発言)。


 ……ハァ、わかったよ、見せてやろうじゃないか、僕と勇斗の”本気”を!(倒置法)


 ――僕と勇斗は颯爽と舞台に躍り出た。


「お館様! この猿めが、お館様の草履とハートを懐で温めておきました!」


 草履とハートを!?!?


「う、うむ、是非もなしでノッブ」

「エクストリームヘヴンフラーーーーーーッッシュ!!!!!!!!」

「説明しよう! エクストリームヘヴンフラッシュとは、……えーと、……アレ、アレのことである!」


 わからないなら無理しないでッッ!!!!


「フッ、ハァーイオッケェ!! 今回はまさに関ヶ原並みの激戦だったな。――どうだ有栖、今回の勝負も引き分けというのは」

「うふふ、是非もないわ」


 僕は是非もあるけどね!!


 ――今度こそ、絶対に絶ーーーッ対に二度とエチュードはやらないからなッッ!!!!!!(様式美)

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