「ふーやっぱりここの城は涼しいッスね~ここに住みたいッス、ねアカツキさん」
「別名白雪の城。快適な涼しさに保つ術がかけられてるからなここは。全然」
白亜の廊下を三人並んで歩く。
どこでも三人の態度は変わらず、門番はいつでも楽しそうで、暁とカナタはいつでも飄々としている。
「きゃーカナタ様よ!」
「今から星夜様に会われるんですか? やめておいた方がいいですよ~今すごく機嫌悪いですから」
廊下ですれ違う侍女たちに笑顔で対応するカナタ。あちらこちらから黄色い声が飛び交い、暁はそれを無視し、何故か門番が手を振っている。
「はは、楽しみだね黒猫君」
「楽しみなわけあるか」
めんどくさい。いつものことながら、ここにはめんどくさい奴しかいない。
長い廊下の先にはいかにも重そうな金色の扉。
カナタが緊張感の欠片も無い笑みを浮かべたまま、扉を開ける。
「学園王生きてますー?」
「えー生きてるに決まってるじゃないッスかあ! 不死身の不死身で有名ですし、仕事の鬼ですからね!」
「一応人間だから」
口々に言いながら入ってきた三人を男が睨む。物凄い剣幕で。
淡い金色の髪に、翡翠の瞳。一見王子様風の外見だが、童話の王子様とは程遠い、真逆の性格。
“優しさの欠片も無い王子様”と言うのが、周りの認識で常識である。
「人間で悪かったな。生憎だが、俺は生きてる。ヒナタ、お前は今すぐ下がれ。邪魔だ」
「はーい」
厳しい口調にもあっけらかんとしたヒナタは、すぐに出ていく。門番である彼が付いてくるのは、最早今に始まったことではない。