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転生裁き
転生裁き
ばばおうちかえる
異世界ファンタジースローライフ
2024年11月02日
公開日
2,989字
完結済
 気が付いたら、白い部屋の中央に立っていた。  目の前には、男性とも女性ともつかない少年。 「貴方には二つの道が残されています…」  レスバトルに負けて死んだ男に与えられなかった、逆転人生の物語。

転生裁き

 気がつけば、白い部屋に立っていた。


「おっ?」

「目が覚めたようですね」


 目の前には、美しい顔立ちの中性的な少年。


「おおっ!?」


 まさか神様か。だっていかにもな状況。

 いやがおうにも期待が高まる。


「貴方はインターネット掲示板に書き込まれた『モテなそう』という言葉に怒る余り死にました」

「やめてくれよマジかよ言わなくていいよ…」


 少し気勢を削がれるも、その程度、切り替えていける。


「しかし嘆く事はありません。80億人の魂から、貴方は選ばれました」

「キタッ」


 思わずガッツポーズをとる男。

 神様?が、にこりと微笑む。


「こちらの世で貴方の魂は完全に消滅します。選択できる道はふたつ。ひとつは無に還る事。そしてもうひとつ、新しい…」

「ぉぉ…」


 胸が踊る。こんな事がないかと、ずっと期待していたのだ。


「無に成る事」

「うそだろおい」


 転生、させてもらえない。


「無って、なに?」

「無くなっちゃうの」


 無くなっちゃうらしい。


「ええー、転生ダメ?こちらの世って、異世界自体はある言い方じゃん」

「傷つけたらごめんだけど、貴方はいらない」

「なんでそんなひどいコトゆーの?」

「魂が臭うから」

「なんでそんなひどいコトゆーの!?」

「オークのワキみたいな臭いする」

「え、嗅いだコトあんの?」

「……………」

「ごめんありがとう。なんかちょっと興奮しちゃった。ごめんなさいねホント」

「さあ!お選ぶといい!」

「まってまって…」


 勢いで圧してくる神様?を、両手を振って制止する。


「あのさ、魂が臭くても関係なくない?なんでオレだめなの?とりあえずソレだけ先ず教えて?」

「徳」

「ひくいかーぇーそんなかぁー?例えばー?」

「ふむ。貴方は不良によく殴られていましたね?」

「掘り返さないでくれない?思い出したくないんだけど」

「チート能力つけて貴方を異世界に送って、例えば冒険者ギルドで美女が絡まれてたとしますね?」

「助けるよぉ。めちゃ親切するぜぇ?」

「どうやって?」

「そら悪者やっつけますわ」

「暴力で従わせる、と?」

「……………」

「現世でも、力さえあれば、不良共を、ぶっ飛ばしてた、と?」


 神様、ズルい。


「ゆ、誘導だ!そんなんズルいすやん!」

「ズルくないね。あれだろ?エルフが美しいからってオークを滅ぼす人間だ」

「そんなん分かりませんやん。オークとエルフの仲を取り持つかもしんないじゃん」

「オスしか産まれないオークは他種族のメスでないと繁殖できないのに?」

「デザインミスだろ。なんでそんな生き物が絶滅しないんだよ」

「強くしたから」

「デザインミスじゃねぇか。じゃあオークでいいよ、オークにしてよ」

「徳が足りないと、お伝えしておりますが?」

「どんだけ足んねえんだよ!?」

「あと徳ひとつ、かな?ぎりスライムいけないくらい」

「虫は!?虫でいいから!」

「虫は世界回してんだよ虫で世界回してんだよ」

「よしんばそうでも『無』じゃ徳つめねぇだろ!」


 ねぇなんとかなんないのぉ?と、地団駄を踏んで喚き散らす。

 だって『無』なんだもん。

 どうなろうがゴネ得なんだもん。


「転生ダメでもせめて何かないの!?無になる前によぉ!」

「あ、成る方にします?じゃあ…」

「まだ選んでないのぉ!なぜなら選んだら無になっちゃうから!」


 なんならずっとゴネるつもりである。少なくとも神様?はうっとりする程に美しく、延々眺めていてもきっと飽きない。

 ここに至っては、性の区別なく愛でる構えだ。


「おら転生無しなんだろぉ!特典くれよぉ!服めくれや!おヘソの有無で有性生殖かどうか確認してやんよ!」

「今この時が特典だけど。五億年くらいほっとこうか?」

「あ、スイマセン」


 五億年はちょっと。例え百万円積まれてもムリである。


「ぇぇ、でもぉ……せめてお慈悲をぉ。無を回避できないならぁ、なぁんかあっても、いいんじゃねぇですかねぇ……ダメですかぁ?」


 へらへらと謙り、しかし全然譲らない。

 そんな無様を見ていられなくなったか、神様?は「はぁ…」と溜め息をつく。


「しょーがないなー…」


 まったく、とか言いながら腰に手を当てた神様?


「え?え?ぇいいの?」


 おヘソ?おヘソみれるの?お、おお、おヘソマジおヘソ?神のヘソ知る?っべーぇマジ?おヘソ?


「ひとレスだけだよ?」


 差し出されたのは、スマホ。

 画面には、死因となったらしい例の掲示板が映し出されている。


「ソレはもういーつぅの」


 おヘソじゃなかった。ぴえん。

 ぴえん超えてぱおん、いやもう寧ろお◯ん◯んである。


「神様おち◯ち◯じゃないすか…」

「そーゆーとこだぞ?」

「つうかオレの人生32年で積んだ徳、レスひとつっすか?」

「なんにもしてなかった、からね」

「それ言われちゃうとなぁ…」


 言われて納得してしまうのも、また悲しい。

 確かに人生、何にも。

 何にもしてなかったのだ。


「正直、腑に落ちざるを得かねない」

「うんその言い方とかマジで。あっちに送ってもつまんそーだし」

「………………」


 それが本音っぽいが、それが本音だったら泣いてしまうので聞かなかった事にする。


「つーか今更だけど何でオレ憤死したの?よく覚えてないんだけど?」


 スマホを見返す。



名無し。3:26

いっき見してようやく最新話に追いついたわ。キュアドフラミンゴ先輩。侠気ぱねぇな!次の37話で漸くファイナルフォームか。


名無し。3:34

先輩がファイナルフォームになるのは38話ですね(^_^;)

37話はまだ先輩を曇らせてる回でした。配信勢だからかな?いーなーアマプラ羨ましいなー(;_;)

でもみんなはテレビの話をしています(*^^*)

おーい(*´艸`*)

まだ追いついてないですよー(^o^)


名無し。3:34

こいつモテなそう。



「オマエが悪い」

「オマエよばわりすんなよオレ悪くねぇよ」

「いーからいーから。ほれ、はよ書き込んで無に帰そうや」

「無、一択なら選択肢増やすなよ…」


 ったく。と、言いつつスマホをポチポチ叩く。


「えっと『妻子持ちですが何か?』と…」

「人生最後の言葉がウソでいいのかオマエ」

「ええ?うーん……『オマエもな』と」

「オマエだよ」

「うるさいなあ!どうせ何にも残んないだから何でもいいだろうがよ!」

「そうやって、なぁんもしなかったんだろ?」

「………………」

「ムダっつーなら人生なんて全部そーだろ」


 ほろり。

 何故か一粒、涙が溢れた。


「う、うるせぇ……うるせぇ……うるせぇんだよホント。な、なんでオレが。クソ…」


 恥じ入るように、顔が熱い。涙こそもう出ないが顔は自覚できるくらいクシャクシャである。

 ガチャガチャとスマホを弄り、一気にレスを打ち込む。


「ほらっ、こ、これでいーよ」



名無し。4:27

すまんな。レスありがとうやで。

ついでにオヤジとオフクロにも言っとくわ。

ありがとうな。



「……………ふーん?」


 突き返されたスマホを眺めて、神様?は、ゆっくりと頷いた。


「な、なんだよ?」

「あとひとつ、徳が足りてないといったのを、覚えていますか?」

「え?」


 突如、部屋の光が強くなる。


「えっ?えぇ?」


 違う。自分が光っているのだ。


「貴方はこのレスによって、観たもの皆をほっこりさせました…」

「……あぁ……ぁぁぁ…」


 作法など何も知らないが、この時ばかりは膝をつき祈る様に手を組む。


「貴方に、ひとつ。私から与える事にしましょう…」

「ありがとう……ありがとうございます…」


 今度こそ涙は溢れ、全ての罪が解かれるように、身も、心すら軽く…


「amaz◯nポイントを」

「徳じゃねぇのかよおいマジでふざ…」


成った。

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