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第390話 リフォーム②

 ホーコートが去ってやる事がなくなったので、ヨシナリは公式サイトをチェックしていたのだが、よくよく見ると次のイベントの情報が上がっていた。

 サーバー対抗戦。 対戦カードも発表されており、ヨシナリ達の相手はフランスサーバーとの事。


 以前にポンポンと話した際に挙がっていた内の一つだ。 

 つまり、Sランクを複数抱えているか、ラーガストと同格のプレイヤーがいる可能性が高い。


 ――いや、これは無理じゃないか?


 前回のアメリカ第三サーバーは規模的には格上だったにもかかわらずに勝てたのはラーガストが居たからだ。 サーバー対抗戦で勝利に最も必要なファクターはSランクプレイヤーの存在。

 この勝負はいかにSランクプレイヤーを勝たせるか、もしくは有利に戦わせるかで変わって来る。


 ヨシナリ個人としてはそう思いたくなかったが、前回の戦いが目に焼き付いて離れない。

 圧倒的な個の力。 文字通りの一騎当千、戦場を切り裂き、ダース単位のトルーパーを瞬殺したあの姿を。 同じジェネシスフレームにもかかわらずアメリカ側の上位プレイヤー達がまるで歯が立たなかった。 あんな物を見てしまえば小細工の介在する余地がない事を嫌でも理解させられる。


 小さく溜息を吐く。 それでもやれる事をやろう。

 他人は他人、自分は自分だ。 今回は前回以上に厳しい戦いになるだろう事は明らかだった。

 機体の強化も済ませ、個々の技量も大きく向上している。 前回のようなやられ方はしないと思いたいが、勝てる自信はあまりなかった。


 そんな事を考えていると不意にドアが一つ開き、中からマルメルが現れる。


 「うーっす。 部屋に家具やらをセッティングしたぜー」

 「へぇ、見てもいい?」

 「おぅ、いいぞ!」


 マルメルはそう言うとドアを開けて手招き。 

 ヨシナリはどんなんだろうとちょっとワクワクしながら中へ。


 「おぉー」


 壁紙はメタリックな装甲を思わせるデザイン。 

 壁際には壁紙に合わせたデザインのメタリックなベッド、反対側には棚があってトルーパーのフィギュアが並んでいる。 よく見るとマルメル、ヨシナリ、ふわわの機体だった。


 これまでの機体なので三人の機体はⅠ型時代の物からある。

 ちゃんとポージングも格好よく決まっており、背景はよく使っている市街地ステージだ。


 「この棚はな。 ウインドウから操作ができるんだ。 こう操作すると――」


 背景が市街地から機体をメンテナンスするハンガーのような場所に切り替わった。


 「どうよ?」

 「へぇ、よくできてるなぁ。 俺達の機体の再現度もすげぇ!」

 「フィギュアはフレーム売りされててな。 ソルジャータイプのフィギュアを買うとデザインは割と好きに弄れるんだ」


 ヨシナリは相槌を打ちながらウインドウを開いてショップを呼び出す。

 マルメルに教えられた商品を検索して確認すると商品名はトルーパーフィギュア。

 各フレームの素体を購入すると割と自由にデザインを弄れるらしい。 武器などにも対応しているが、基本汎用品なので個有名のついた高級装備は別売りのようだ。


 例外としてジェネシスフレームは個別売りらしい。 

 ちなみにジェネシスフレームのフィギュアは売れると利益の一部が当人に還元されるとの事なので店に並んでいるという事は本人に許可を取っているので問題はないようだ。


 「俺達三人分だけなのか?」

 「いや、実はこのフィギュアちょっと高くてだな。 他はボチボチ揃えていくつもりだ」


 値段を見ると確かにちょっと高かった。 

 買えなくはない微妙なラインなのも割と絶妙な値付けと言える。


 「いや、こうして改めて見るとヨシナリの組んでくれた機体、格好いいよなぁ」


 最新のアウグストフィギュアをマルメルはうっとりと眺めている。


 「はは、気に入ってくれて嬉しいよ」

 「いやぁ、こうして並べると楽しくなるな!」


 マルメルと二人で笑っているとふわわが開きっぱなしのドアから部屋を覗き込んでいる。


 「あ、どうもです。 そっちも終わりました?」

 「うん。 終わったよー」

 「ちなみに見ても良い感じですか?」


 言ってからヨシナリはしまったと僅かに後悔した。 

 アバターとは言え、女性の部屋に入れろと言うのは無作法ではないだろうかと思ったからだ。


 「ええよー」


 そう言ってふわわが小さく手招き。 ヨシナリとマルメルは顔を見合わせる。


 「なぁ、どんなのだと思う?」 

 「思いっきり少女趣味か、思いっきり実用重視かのどちらかだと思う」


 リフォームに一番乗り気だったのは彼女なので力を入れている様だったので気合は入っていそうだ。

 ふわわの性格上、傾向的に的はそこまで外していないと思うが―― 


 「な、なんかすっげー気になるな。 ってかちょっと見るのが怖いっつーかなんつーか……」

 「安心しろ。 俺もだ」


 マルメルの言う通り、ヨシナリも変に気になってしまっていた。

 ふわわに誘われるまま、その後に続いて彼女の部屋へ。 足を踏み入れると二人は同時に思った。 


 ――そう来たかー。


 巻き藁が三つ並んでおり、壁には刀や槍などの武具がかかっている。

 それだけでは飽き足らず天井からも色々とぶら下がっていた。

 ベッドの類はなく、床には申し訳程度に動物をモチーフとした大きなクッションがいくつか転がっているのは来客用だろうか?


 「あのーその巻き藁はこれから可哀そうな目に遭う感じですかね?」

 「巻き藁? これ凄いよー。 何してもリセットボタンを押すと元通りになるんよ!」


 そう言ってふわわは壁の刀を取ると凄まじい速さで抜刀して両断。

 ずるりと斜めにズレて上半分が床に落ちた。 ふわわがウインドウを操作すると次の瞬間には元通りになる。


 「あ、ヨシナリ君もやってみる?」


 そう言って刀を差しだされたので無言で受け取って抜く。

 手頃な重さだ。 巻き藁を一瞥し、袈裟に両断するべく振るうがザクリと食い込んで半ばで止まった。 ヨシナリは何度か力を込めたが完全に刃が止まってしまった。


 ――恐らく芯の部分に何か固い物があるな。


 「おいおい、何やってんだよー」

 「だったらお前もやってみろ。 これ、かなり難しいぞ」

 「マジで?」


 ふわわがウインドウを操作すると巻き藁が元に戻り刀が床に落ちる。

 マルメルが落ちた刀を拾うと確かめるように素振り。

 よしと気合を入れると野球のバットのようにフルスイング。


 刃は半ばまで食い込んで――ぽきりと圧し折れた。

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