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第392話 サーバー対抗戦Ⅱ①

 準備をしていると時間は瞬く間に流れる。

 前回の対抗戦を意識しての連携訓練。 今回は他のユニオンとも積極的に練習試合や共同ミッションを申し込んで合わせやすい味方を増やしていく。 加えて『思金神』主催のイベント戦における対策会議にも参加して可能な限りの備えを行った。


 そうこうしているとあっという間にイベント当日となり――『星座盤』のユニオンホームにはメンバーが全員揃っている。 


 「はい、ではこれからサーバー対抗戦となります。 相手はフランスサーバー。 恐らくですが前回のアメリカ第三サーバー以上の相手と思われるので油断せずに行きましょう」

 「ヨシナリ、質問!」


 マルメルが手を上げる。


 「はい、マルメルどうぞ」

 「マジでどこと戦るかの情報しかないのか?」

 「あぁ、マジで何もなしだ。 ただ、前回と同じ事にならないように『思金神』が例のサテライトレーザーのコントロールユニットを手に入れていたのでいきなり衛星砲を喰らう事はないと思う」


 先日に行った『思金神』との会議で触れられていた。 

 どうも同時に発射命令が出ると判断が出来ずにフリーズするらしい。 

 つまり双方から指示を出し続ければ衛星砲は無害となる。 あくまで中立なのでこういった場合は何もできなくすることはそう難しくはなかった。


 話している間に入場可能になったのでそのまま移動。


 「――これまた分かり易い所に出たな」


 操作を行えば移動は一瞬だ。 全員が機体に乗った状態でイベント用のフィールドへ。

 前回と同様に補給や整備が可能な拠点――と後は橋と水しかない。

 要はヨシナリ達が居るのが巨大な島で、視線の先には同じような島があり、それを繋ぐ巨大な橋。


 横幅数十メートル。 距離は――数十キロといった所だろうか。

 ぐるりと見回すと後は一面水しかなかった。 空には太陽が天頂に位置し、綺麗に晴れており視界は驚くほどに明瞭だ。 


 ――それにしても――


 「嫌な地形だなぁ」


 思わずそう呟く。 守るには楽でいいが、攻めるには中々に厳しい地形だ。

 飛行が難しい機体はあの橋を使わざるを得ない。 切り込めるのはエンジェルタイプかキマイラタイプ、後は高出力のブースター装備のソルジャー+ぐらいだろう。 それ以外はいい的だ。


 ――ある意味好都合ではあるのか。


 ちらりと振り返ると『思金神』を筆頭に大手のユニオンがセントリーガンなどを設置して拠点の強化を図っていた。 最初から総合力では敵わないのは目に見えていたので地形によっては下手に攻めずに守りを固める事で敵の戦力を削いで耐え抜こうといった方針で行くという案が出ていたのだ。


 守ってばかりで勝てるのか?という疑問はあるが、こちらにはラーガストという規格外が居る。

 要は損耗を抑えつつ、ラーガストが敵のSランクを片付けてくれる事を期待するというかなり情けない話になっていた。 ヨシナリとしても異論はないが、あまり好きな考え方ではなかったので本音を言えば乗り気ではない。


 それにないと思いたいが、ラーガストが負けた場合の事も考えた方がいいだろう。

 どちらにせよ最初は様子見だ。 振り返るとマルメルは近くのビルに登り、真っすぐに敵の陣地を見据え、ふわわとシニフィエは何かを話している。 グロウモスは狙撃に使えそうなポイントを探しに行き、ホーコートは落ち着かないのかキョロキョロしていた。


 フレンドリストをチェックするとベリアル、ユウヤは橋の近く、ツガル達『栄光』は島の中央付近に陣取っており、ポンポン達『豹変』はやや後方――橋が東側にあるので西側に布陣している。

 ヴルトムは東側。 ちなみにヨシナリ達の現在地はやや東寄りだ。


 そしてラーガストは島の上空。 あの様子だと始まったら突っ込んでいきそうだった。

 準備時間が終わり、ウインドウを確認すると開始まで秒読みとなる。

 この微妙な待ち時間はなんだか落ち着かないなと思いながらカウントが残り十秒となった。


 ――どんなのが出てくるのか。


 五、四。 周囲のプレイヤー達も僅かに身を固める。

 三、二。 ラーガストの機体に搭載されているエネルギーウイングが輝きを放った。

 一、ゼロ。 イベント開始。


 武器の使用が自由となった瞬間、島のあちこちからミサイルが垂直に空へと登る。 

 それよりも早くラーガストの機体が矢のように敵陣へと飛んでいった。

 ヨシナリがシックスセンスを全開にして敵の拠点を観測。 考える事は同じなようで向こうからも無数のミサイルが飛ぶ。 空中で交差して凄まじい数の爆発が発生。


 日本側は動かない――と思ったが、一部の血の気の多い者達は突っ込んでいった。

 流石に人数が居る以上、完全に一枚岩になるのは不可能なのでこういった者は出るのは織り込み済みだ。 本音を言えばヨシナリも混ざりたい気持ちもあったが、流石に闇雲に突っ込む度胸はないので少しの間は様子見となる。


 ――まぁ、この感じだと割と早く動きがありそうだな。



 ラーガストは背のエネルギーウイングを輝かせて真っすぐに敵陣へと飛ぶ。

 彼の目的は一つ。 フランスサーバーに居る一人のプレイヤーだ。

 レーダーに反応があったので急停止。 位置は橋の中央、ちょうど戦場の真ん中だ。


 フランス側から一機のトルーパーがラーガストの下へと現れる。

 現れたのは黄金の機体。 球体に人型の上半身が埋まっているような異様な形状。

 それを囲むように三つのリングとそのリングに各三つ球体が付いている。


 ラーガストはその異様な機体に特に動じない。


 「久しぶりだな。 チビ」


 口調には僅かな親しみが乗っていた。


 「えぇ、お久しぶりですのよ! ――今はラーガストでしたか? それと、チビはおやめなさいな! 私にはヘオドラという立派な名前がありますのよ!」


 相手の機体から響く声はやや幼さが残った少女のような物だった。 異形の機体はふんと胸を張る。

 フランスサーバーSランクプレイヤー『ヘオドラ』と彼女が駆る機体『ミカエラ=ティファレト』だ。


 「その様子では相変わらずですの?」

 「――あぁ、俺はあの時から何も変わらない」


 それを聞いてヘオドラは苦笑。 


 「えぇ、えぇ、それこそが形はどうあれ旅を終えた貴方が前に進む為の理由なのでしょう。 ですから私からは何も言う事はないですのよ! ――さて、古い戦友の様子も見れた事ですし、ではこれから楽しく遊びましょうか?」


 そう言うとヘオドラの機体からリングが分解。 九つの球体が機体の周囲を不規則に浮遊する。


 「そうだな。 お前の腕が落ちていないか見てやる」


 エイコサテトラの停止していたエネルギーウイング二基が起動。

 四基のエネルギーウイングから光が噴き出した。


 「それはこちらのセリフですのよ!」


 二機のジェネシスフレームが同時に動き、Sランクプレイヤー同士の戦いが始まった。

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