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第535話 第二次防衛戦⑰

 対して即興ではあるがこちらの攻撃の組み立ても形になって来た。

 ツガルが機体を振り回すように加速しながら機銃を連射。 

 弾をばら撒いてとにかく削るつもりのようだ。 敵は黒を前に出して攻撃を防ぎつつ後衛を守る動き。


 白と茶色が黒の脇から無数のドローンと無人機を繰り出し、紅が砲で狙いを付ける。

 ツガルではなく比較的当て易いまんまるを狙っていた。

 ヨシナリは近くの無人機をエーテルで保護した拳で頭部を殴って破壊し、行動不能へ。


 無人機は頭部に受信機を搭載しているので頭を潰せば動かなくなる。

 持久力に話にならない差がある以上、勝負を急ぐ必要があった。


 ――何処から崩すか。


 ヨシナリとしては集中を削いでくる紫が一番目障りだったので、真っ先に潰してやりたいが逃げに徹しているので余程の隙を晒さない限りは狙えない。 

 下手に執着して粘られたら目も当てられなからだ。 

 なら狙うべきは――


 「黒い奴は俺に任せろ!」


 要領を掴んだのかツガルが黒の周囲を旋回しながら銃撃を浴びせる。

 彼の機体は機動性はトップクラスではあるが、火力に関してはお世辞に高いとは言えない。

 その証拠に黒の展開した障壁を突破できずにいたが、動きを封じる事には成功していた。


 常に視界に居座って銃撃を繰り返し、焦れた敵機が仕掛けに来たタイミングで回避。

 挑発を繰り返して自分にヘイトを向けさせる動きだ。

 だが、複座なので一人でも冷静であったなら拘らない判断をしてくる可能性は高いので、そこはツガルの腕の見せ所と言える。


 無人機が壁のように他の機体を隠しながら攻撃を仕掛け、その隙間からドローンが銃撃。

 徹底して近づけない動きだ。 

 機体のコンセプト的に後衛が多いのは無人機とドローンに前を任せる事が前提だからだろう。 


 これがもう少し小規模な争いであったならかなり効果が高かったが、この近辺だけでも数百の機体が入り乱れる戦場では死角を完全に消す事は不可能だ。

 無人機は挙動と常に通信が発生している点から自動ではなく遠隔操作である事が分かる。


 操作可能数は二十機前後。 減った傍から補充されるのでこれが操れる上限なのだろう。

 ドローンは約四十。 倍だが、攻撃と防御と比較的ではあるが挙動が単純なので操作の負担が少ないからと見ていい。 そしてリソースの全てをヨシナリ達に割けない点も数少ない好材料だ。


 ただ、最も脅威度の高い対象と見ているようで半数はこちらに割いている事もあり、やはり突破は容易ではない。 

 仮に突破できたとしても緑が居るので少々の損傷は即座に復旧させる。

 その時間を紫や紅が稼ぐと。 


 ――なるほど、考えられている。


 攻撃に数を繰り出せるからこそ後衛に力を入れるのは理に適っていると言えた。

 個々のスペックも高く、間違いなく強敵ではある。

 だが、ヨシナリに言わせればそれだけだった。 こいつ等の強みは基本的に単体で完結している。


 要は性能に頼った戦い方なので連携、個人技に関してはそこまでではない。

 連携に関しては役割に徹しているだけあって行動に拡張性がないのだ。

 特に紅はそれが顕著でひたすらに砲撃を繰り返すだけ。


 あの機動性があるのなら不意を突いて前に出るという選択肢もあるはずだが、恐らくは間違ってもしないだろう。


 ――何故なら仕込まれたモーションパターンにそんな物は入ってないからだ。


 ホーコートを散々見て来ただけあってこの手の挙動をする連中の相手には慣れてきていた。

 役割を十二分に果たす為の挙動。 そこだけ切り取れば優秀と取れるが、裏を返せばそれだけしかしない・・・・・・・・・、つまりは与えられた役割から逸脱した挙動ができないのだ。


 砲戦なら砲戦のみ、回復なら回復のみ、それ以外の選択肢を排除しているので一通り動きを見てしまえば何が出来て何ができないのかは分かる。


 ――だから――


 ヨシナリはリミッターを解放。 機体の表面がエーテルで覆われる。

 出力は250%。 これだけあれば充分だ。 変形させて一気に加速。 

 無人機の鼻先でバレルロールしながら大きく旋回。 


 すると後衛に回り込もうといった意図に気付いた無人機、ドローンが守るように薄く展開する。


 「まんまるさん!」

 「は、はぃぃ!」


 即座にまんまるがプラズマキャノンによる砲撃で薄く展開した敵の一部を消し飛ばす。

 ポンポン、ニャーコが正面から突破を図る。 近づけまいと紅が砲撃しようと狙いを付けるが、いつの間にか真下に回り込んでいたタヂカラオがエネルギーリングを連射。


 下からばら撒くように放たれたリングは広がりながら飛ぶので少し距離を開けた状態で放てば攻撃範囲はかなり広くなる。 躱さない――いや、躱せない・・・・敵機はどうするのか?

 黒がツガルを無視して盾になりに行き、他がその防御範囲に入る。


 フィールドの範囲を拡大。 エネルギーリングの干渉力場に抗う。

 系統が同じフィールドで防げるのかと思いながら敵機が固まったので、ニャーコが肉薄。

 狙いは紫だ。 やり過ごしたと同時に敵機は散開するが、的は絞っているので何の問題もない。


 光学迷彩で姿を隠すがシックスセンスによるセンサーリンクを受けている以上は無意味だ。

 無人機とドローンが即座にカバーに入る。 周囲に配置していた十機中三機を使う。

 黒はツガルが纏わりつくように銃撃を繰り返して動きを封じる。


 まんまるがニャーコを援護する為に砲撃。 

 割り込んだ無人機とドローンを数機消し飛ばすが、即座に他が代わりに入る。 

 タヂカラオが動きを封じる為に更にエネルギーリングをばら撒きに行こうとしたが紅が砲撃で封じ、紫がウイルス攻撃を仕掛けて挙動を遅らせていた。


 紫の挙動に関しても分かった事がある。 

 ウイルス攻撃を行う瞬間に通信のような物を行うので、ハッキングの瞬間を読み取れる。

 効果に関しては恐らく視界や観測データを改竄して来るので兆候を読み取れるだけでもありがたい。


 タイミング的に感染してから十秒以内にチェックから駆除作業を行えば影響は出ない。

 ただ、いちいち操作を要求してくるのが非常に煩わしいが。 

 まんまるに消し飛ばされた機体の補充には数秒かかる。 


 加えて紫のフォローに数を割かせた。 黒はツガル、紅と紫はタヂカラオが引き付けてている。

 これで本命が手薄になった。 一番目障りなのは紫だが、一番落とした時の効果が大きいのは何か?

 答えは――

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