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第564話 賽河原 ツミキのユニオン戦

 「みーんなー! こーんにーちはー! 賽の河原系アイドル『賽河原さいかわら ツミキ』でっす。 よろしくね☆」


 配信が開始されバーチャルアイドル賽河原 ツミキは配信を開始した。


 『こんにちはー』『こんにちはー』『そろそろFランから上がれそうっすか??』

 『そろそろ勝てよ』『こんにちはー』『がんばえー』『キタ――(゜∀゜)――!!』『うえーい』


 「今日は事前告知通り、ユニオン戦を配信するね☆ 応援よろしくー!」


 ICpwが配信を限定的に許可した事で彼女のような配信者がプレイ配信を行うようになっていた。

 最初は転生前が早々にバレたりとアクシデントもあったが、リスナーを順調に増やした彼女はユニオンを結成する事に成功したのだった。


 ユニオン名は「賽の河原」


 流石に誰彼構わず入れる訳には行かないので知り合いだけで固めたメンバーだが、Bランクプレイヤーも混ざっているので同ランク帯のユニオン相手なら充分に戦えるはずだ。

 ここ最近はランク戦の配信とそれに関しての感想ばかりだったので、そろそろ変化を付けないと飽きられると判断したツミキはこうしてユニオン戦を配信する事を決めたのだった。


 『ランク戦楽しみー』『有名な所と当たるかな?』『で、こいつらのウチ、何人とヤったの??』

 『そういうの止めとけって』『デカい所はユニオンランク高いから弱小としか当たらねーよ』

 『そうなん? この前、Aランクの混ざってるクソみたいなユニオンと当たったぞ』 

 『え? 無所属か一時所属じゃないなら大抵は大手だろ? 何処だよ?』

 『星座――』


 「あ、マッチングしたみたい☆ こっちは五人だから五対五になるよー! 応援してね!」


 喋りながらツミキは自機の最終チェックを済ませ、対戦相手を確認。


 「えーっと相手のユニオンは何処かな?? 『星座盤』? 何か聞き覚えあるなぁ、取り敢えず対戦よろしくお願いしまーす」


 『あ(察し)』『うわ、出たよ』『終わった』『早々に地雷を踏み抜いてて草』 


 コメントに反応しようとしたがそれよりも前に戦闘が開始。 

 ステージは渓谷。 

 マップの中央を横断する形で巨大な谷があるので地上よりも空中戦が重要視されるステージだ。


 「よーし。 皆、がんばろー!」


 コメントに付いて聞きたかったが、このゲームは気を抜くとすぐ死ぬので戦闘中はかなり忙しい。

 その為、いちいち確認してられないのだ。


 『相手の面子どんな感じ?』

 『ヨシナリ、マルメル、グロウモス、ホーコート――うわ、ベリアルがいる」

 『ひぇ、ヤベー奴じゃん』『ベリアルって誰?? そんなにヤベー奴なん?』

 『簡単に言うと超強い厨二病。 くっそ痛々しいセリフ垂れ流しながら襲い掛かって来る奴なんだけど、Aの中だとかなり強い部類に入る』

 『ってかAなん??』『Aなんだよ。 当然、ジェネシスフレームだ』

 『このランク帯でジェネシスとはもはやイジメの域だな』

 『えぇ、ツミキたんまた負けるん??』『こいついっつも負けてんな』

 『まだ始まってもいないのに負けを確信されてて草』

 『真面目な話、かなりしんどいと思う。 ツミキたんのチームは本人がFでメンバーがDランク二人、C、Bが一人ずつだから他を早めに処理しないとベリアルを止められないからな』

 『どうやったら勝てるん?』『いや、ベリアルの話ばっかりしてるけど他も相当だぞ』

 『だなー。 あいつ等、三軍とはいえ「思金神」に勝ってるからな』

 『は!!?? マジで??』『しかも一回戦は「栄光」でしっかり勝ってるからマジでヤバい』

 『「栄光」ってカナタの所か。 俺ちょっと喋った事あるんだけど、感じいいよなぁ。 あんな彼女ほすいー』

 『キモ』『じゃあ「栄光」入れよ』『加入申請したんだけど断られたんだよぉ(泣)』 


 そんな会話の裏で戦闘が始まったのだが――


 『うへ、もう二機やられた』『真っ先にBランクの人が落ちたな』

 『狙撃で一発かぁ』『雑っ魚、辞めたらこのゲーム』

 『あの距離で当ててくんの怖いなぁ』『なに使ったか分かるか?』

 『多分、ロングレンジのレーザーライフル。 照射時間が長かったから延長用のバレルと追加のバッテリーか何か消費してゲロビぶっぱするタイプだな』『重くね??』

 『重いけど邪魔になったら捨てればいいから集団戦だと割と使えるぞ』

 『味方のフォローが期待できるからなぁ。 ついでに言うとユニオン戦って頭数がいる関係で個人戦よりマップが広いんだよ。 だから、接敵までちょっとかかるんだよなぁ』

 『そういやそうだな。 個人戦だと使い辛いけど団体戦だと割とありかもなぁ』

 『撃ったの誰?』『えーっと多分、グロウモスって奴だな』

 『滅茶苦茶当てるの上手いな。 有効射程ギリギリだろ?』

 『だなー。 俺もライフルは割と使うけど真似できねぇよ』

 『あの、誰かやられたCランクさんに関して何か言ってあげて……』 

 『何か言う事あるか?? 高度を落とした所でベリアルに瞬殺とかどうしようもねぇよ』

 『ってかいきなり現れたんだけどアレ何? 空間転移?』 

 『そうだよ(白目) アレ、マジでチートだぞ。 いきなり死角から現れていきなり刺してくるからな』

 『クソ過ぎる! どうやって躱すんだよ!?』

 『知ってるか? あんな化け物みたいな奴でも勝率六割前後なんだぜ』

 『マジかよ。 Aランク魔境すぎひん??』

 『Aランクは大手ユニオンに媚び諂って維持するゴミか、ゲームに魂売ってる廃人しかいないから……』『何があいつらをそこまで駆り立てるんだよ!』

 『金だよ!(迫真)』『まぁ、金じゃね? Pの換金レートくっそエグいからな』


 「え、えぇ、ちょ、待って待って待ってぇぇぇぇ!!!」


 『おいおい、話している間に我らのツミキたんが死んだぞ』

 『はっや』『負 け る 事 し か で き な い 女』

 『こいついっつも負けてんな』『いつ勝ってんの??』

 『たまーに勝ってるぞ』『レア過ぎてアーカイブ漁らねぇと分からねぇよ』

 『相手ヨシナリっていったっけ? 動き綺麗だなぁ。 飛行形態からのインメルマンターンで背後取ってライフルで一発』『あっさり当てすぎてて簡単に見える』

 『いや、キマイラの空戦機動って割とムズいぞ。 特に変形してからの攻撃移行は相当慣れてないと当たらんし』『俺もキマイラ使ってるけどあの動きは無理。 インメルマンターンまでは行けるけど、変形して当ててんのなんなん? ツミキが雑魚なの差し引いてもくっそ上手めぇ』


 「あ、あははー負けちゃった☆」


 『おつかれー』『戦闘時間一分弱wwwwwww』 

 『早すぎて草不可避ですよwww』『そろそろ勝って?』

 『まぁ、相手が悪かったわな』


 コメントを見ながらツミキは内心で歯噛みする。 


 ――何なのよあいつ等! 折角、チームメンバーも見つけていい所を見せようと思ったのにー!!


 『星座盤』ね。 覚えたから! 絶対に潰してやるからね!

 にこやかにコメントに反応しながら賽河原 ツミキは微かに闘志を漲らせた。

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