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第569話 イベント制限戦Ⅱ⑤

 プレイヤー達はこの広大な遺跡となっている惑星から宝を見つけ出すというのが目的となるのだが、無論それだけではない。

 このイベント内で撃破した物に応じてスコアが付与され、終了後に報酬に変換される形となる。


 まずは他のプレイヤー。 

 スコアは撃破したプレイヤーの個人ランクと所持スコアに依存する形になる。

 どういう事かというとベースのスコアがランク依存で撃破対象がこれまでに手に入れたスコアに応じて追加のスコアが付与されるという訳だ。


 高いスコアが欲しいなら勝ち上がっているであろう強そうなプレイヤーを狙っていかなければならない。

 次にエネミー。 この遺跡を守る防衛システムの一部という設定らしく、あちこちに居るので撃破すればスコアが貰える。 


 強力なエネミーであればあるほど高いスコアが得られるので戦闘で稼ぎたいなら積極的に狙っていくべきだろう。

 最後に特殊エネミー。 


 数は少ないが非常に強力なユニーク個体が居るので、撃破に成功すればスコアだけでなく報酬が追加で出るらしい。

 制限時間は無し。


 「無し!?」


 思わず声が漏れる。 

 どうやら終了条件が存在し、それを満たさない限り終わらないらしい。

 終了条件は宝を発見したプレイヤーの出現か、参加プレイヤーの全滅。


 途中のログアウトは可能だが、特定のポイント以外からのログアウトはリタイアとみなされる。

 その為、抜ける場合は諦める時となる。 

 特定の離脱可能ポイントからログアウトすれば戻ればするが、五時間以内に戻らないとリタイア扱いとなるようだ。


 スコアに関しては撃破されれば半分が没収されるが、リタイアすればペナルティはない。

 要は適度に稼いで抜けるというのも選択としてはありだ。


 「それはそうと相変わらずくっそ拘束してくるな」


 拘束時間の長さに関してはいつもの事なので気にするほどではないが、ルールに関しては理解した。


 「思ったのと違う内容になって来たけどやる事は変わりません。 クリアを目指して頑張りましょう」

 「宝の獲得を目指すって事でいいんですよね?」


 マルメルがそう確認するとカナタはもちろんと頷く。

 想定とは大きく違った展開になったが、やる事自体はそこまで変わらない。

 カナタが先行し、少し離れた位置にマルメル、アリス、更に離れた位置にエーデとまんまる。


 都市ではあるが、背の高い建物はなく、視線は良く通る事もあって奇襲は今のところは問題なさそうだ。

 荒廃している所為か砂の混じった風が常に吹いており、ステルスも効果が落ちる。

 エーデ、まんまるはセンサー系を強化している事もあって索敵能力は高い。


 「宝を探しなさいと言う話でしたけど、宝が何を指すのかも分かりませんね」


 少し移動すると沈黙を嫌ってかカナタが話を振り始めた。


 「字面だけで考えるなら金銀財宝っすけどこのゲーム的に微妙じゃないですか?」


 マルメルはそう言いながらもなら何だと尋ねられても上手く想像ができなかった。

 このゲームの世界観を踏まえても見当も付かない。


 「わ、私もわからないですぅ。 何か凄い物なんじゃないですかぁ」


 まんまるからはマルメルと同様にぼんやりとした回答。

 彼女的には一目でわかる何か凄い物といった漠然としたイメージのようだ。


 「うーん。 ここは遺跡って設定だし、古代兵器とかそんなんじゃない?」


 エーデの意見はなるほどと思えるものでありそうな話ではあった。

 ちなみにアリスは小さく肩を竦めるだけで一切喋らない。


 「仮にそうだった場合、かなり大きなものって事になりますね」

 「あー、だったら探すんなら専用の建物か、地下とかですか」


 少なくともこの周囲にはそれっぽい建物は見当たらない。 

 マルメルとしては地下が怪しいなと思っていたが、それより前に見ておきたいものがあった。


 「まぁ、探すの前にここがどんな感じなのかを確認するのが先でっすね」

 「ですね。 そろそろ到着するので先に上がります」


 先行したカナタの機体が急上昇。 壁に到着したのでそのまま壁の上へ。


 「何か見えました?」

 「凄い事になってますよ」


 マルメルはちらりとアリスに視線をやると彼女は無言で反転し、近くの建物の屋上に着地。

 警戒してくれるようだ。 マルメルはどうもっすと感謝を短く伝えて上昇。

 壁の上に着地すると――


 「こりゃ凄ぇ」


 思わずそんな声を漏らした。 

 壁の向こうも同じように壁に覆われた区画が存在し、似たようなエリアが大地を埋め尽くしている。

 とんでもない光景だった。 


 少なくとも見えている範囲は全て壁に仕切られており、内部に様々な建物が所狭しと並んでいる。

 僅かに遅れてまんまるとエーデが上がって来て、マルメルと同様に景色に驚いていた。

 景色に圧倒された時間も僅か、それぞれが現状の把握に思考をシフトする。


 マルメルは余りの広さにどこから手を付ければいいか分からず、一先ずは周囲に敵影や危険がない事を確認しつつ他のメンバーの様子を窺う。

 カナタはぐるりと周囲を見回しており、まんまるは自機の射程内の索敵、エーデは風景よりも自機のセンサーシステムに意識を割いているようだ。 


 アリスは何処を見ているのか分からないが、持っている武器を僅かに持ち上げる。

 何だと視線を持ち上げると何かが光ったと認識した頃にはカナタが背の大剣を抜いて何かを防いでいた。


 金属質な音がして何かが大剣に弾かれる。 

 何だと飛んできた方に視線を向けた頃にはエーデ、アリスは壁から飛び降り、まんまるも射線を取る為か大きく後退。 


 ――景色に気を取られて警戒が疎かになっていた。


 何なんだよと飛んで来た方向に視線を向けて最大望遠。 

 移ったのは――何だこいつ等は? 最初の印象は人型の虫といった印象だった。

 特徴的な長い触覚はカミキリムシを思わせる。 


 離れている事もあって分かり辛いが、武装はブレードと手が大きく膨らんでいるのは防具だろうか?

 推進装置は既存の物でなく、背の羽根を振るわせて高度を維持している。

 明らかにプレイヤーではない。 間違いなくエネミーだろう。


 合計で十機。 散開して襲い掛かってくる。


 「来ます! 全員、訓練通りに!」


 カナタから普段の余所行きの口調は消え失せ、リーダーとしてのそれに切り替わる。


 「ま、まずは散らしますぅ」


 まんまるが両肩に乗っているプラズマキャノンを発射。 

 榴弾は空中で爆ぜ、エネミーは避ける為に散る。 

 速い。 見た目の時点から予測は出来ていたが、かなり機動性に振っているようだ。  

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