アイスティーなら氷だよね。
冷凍庫を開けようと紅茶缶を置いたあたしの頬にイチが手を伸ばしてきた。
視線が絡む。
でもねー。ガチャリとジュニアの部屋のドアが開く音で、そのままふわーっと手はどこかへ行ってしまった。
おいおいおい。
「ジュニアもアイスティーでいい?」
ちょっぴりプイッとなりながら、ジュニアに声をかける。
「うん」
パソコンの電源を入れる音に、イチがそそぉっとキッチンから出て行った。
むぅ。なんか腹立つっ。
パソコン画面の見える位置にあるソファーに座って、イチは一瞬目を閉じる。
(何やってんだ。俺)
背後にイチの座る気配を感じて、ジュニアはキッチンで勢いよく割られる製氷皿の音を聞く。
(なんかあったな。僕もう知ぃらない)
氷が泳ぐ音をさせて、ソファー脇のローテーブルにお盆ごとアイスティーを置く。
「何か見つかった?」
そのうちの1つをジュニアの座るパソコンデスクの隅に置いて、画面を覗き込んだ。
「うーん。今回の一連の動きはさ、どこからだと思う?
製薬会社の地下室、爆破。
黒スーツ。
越智ダヌキ、榎本課長。
僕たちのバンで爆弾を運んだ
カエを襲撃した3人組。
公安。
東田副総監」
ジュニアが羅列していく言葉にイチと顔を見合わせる。
「線引きっつうか、爆弾の事とカエの襲撃は別なんじゃねぇの?」
イチもアイスティーに手を伸ばす。
「だよね。んっっ。痩せ男のスマホ」
イチにピシッと指を立てる。
「あたし達全員の写真と名前が入ってた。リカコさんに報告してないや」
「つまり、今回の襲撃はカエ個人を狙ったものじゃなかった。って事?」
ジュニアの頭の中ではきっと、いろんな情報が入り乱れてるんだろうなぁ。
「公安だよねー。榎本、越智、東田」
ジュニアの手がキーボードを
あたしもソファーに座ってアイスティーを手に取った。
「ちょっと見て」
ジュニアの声に画面を覗き込む。
警察の制服を着た1人の男。
「この顔。誰かに似てる……」
見たことのある目鼻立ち。
経歴書の名前は
「
「越智ダヌキの息子か?」
あたしの言葉をイチが引き継ぐ。
「そ。6年前に入庁して、2年目から公安に異動。
どこまで七光ってるか知らないけど、順調出世コースだね」
『公安⁉︎』
あたしとイチの声が重なる。
「えっと。ちょっと待ってよ。じゃあ今回の1件に越智ダヌキが関わっているのは明白じゃないっ」
「ところがね」
あたしの言葉にジュニアが再び画面を動かす。
「公安に移動して半年で。
っ!
「まだ25、6だろ……」
イチが呟くように口にする。
正直、明日は我が身……だ。
「で。その時の公安部長が、今の東田副総監」
ジュニアの声に、イチと顔を見合わせる。
関係者揃い踏み……かな。
パソコンの画面を占めるにこやかに微笑む東田副総監の顔が何だかすごく怖く見えた。