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第3話 縮まり始める距離

「先程から、爆発音がすると思ってきてみれば。なんだこの壁は?」


「あの向こうに、あいつがいるんだよ!!」


「あいつ?」


 私は、自分の身長の倍はある壁の横側から、顔をだす。


「リチュ!!」


 リードさんが、自分の腰についている剣に、手をかける。

 私は、慌てて両手を上げる。


「やめてください!私は、貴方達と争いに来たわけではありません!!」


「誰が、そんな言葉信じるかってんだ!!」


 リズさんが再び、火のマナを集め始める。


「待て!リズ!!」


「『火炎魔弾ファイヤーボール』」


 リードさんの静止を無視して、彼女は火の玉を放つ。

 私は慌てて、壁の中に隠れる。私がいた場所の後ろにあった木が、倒れ、燃え上がる。


「待て!すぐそうやって攻撃をするな!!」


 リードさんの声が、近づいてくる。


「話を聞かずに攻撃したのは、謝る。しかし、あの場面を見れば、警戒してしまうし、今も続く子供の行方不明もあって、こちらも心に余裕がないんだ。」


 リードさんが、私の前に立つ。彼は、剣に手をかけてはいるものの、その剣を抜くわけでもなく、話を聞いてくれそうだった。


「私は、子供達を誘拐なんてしていません。」


「その言葉を、信じたいのだが、さすがにあの光景を見た後では…」


「なら、スライム達の村に来てください!そこに子供達がいなければ、信じてもらえますか?」


 リードさんは、自分の顎に手を当てる。


「そうだな、それなら… 今までよりかはマシになる程度ではあるが。」


「それでもいいです。すこしでも、信用してくださるなら。」


「私達が、ついていく途中に、ブラックドラゴンに襲わせるつもりじゃないだろうな!!」


 リズさんが、私の方に近づいてくる。

 私は、手を上げる。


「そ、そんな、私は…」


「おい、リズ。いい加減にしろ。警戒するのは仕方ないが、彼女の言葉をすべて疑っていては、話が進まない。」


「そうやって、こいつは、私達をだましたろうが。」


 リズさんが、私の目の前に、杖を突きつける。すると、私の上にいるヘッドさんが、目を開けた。


「あっ!」


 私は、道中に出会った人間達を思い出し慌てるが、時すでに遅し。


「えっ?」


 リズさんは、驚いた声を出し、突風によって吹き飛んだ。


 ——————————


「おい、リード!見ただろ⁉ 完全に私を攻撃してただろ!この鳥も、リチュの仲間だろ⁉」


 リズさんとヘッドさんは、お互いを睨みつけていた。


「敵意を見せたら、攻撃もされるだろう。さっきまで、寝ていたんだぞ?まぁ、しかし…」


 リードさんが、リズさんの方を見て注意をした後、私の両肩のナイトバードを見る。


「ナイトバードも、味方につけているとはな。他種族同士にもかかわらず、良く仲良くしているな。」


「あの、ドラゴンの方は、私の仲間じゃないんですけれど…」


 私は、未だ晴れていない誤解の一つを否定する。そして、3羽を見て話す。


「この子達は、私が『ヒューマ』の村にいる時に、夜、スライム達の村に行く途中で、餌を与えてたら、なつかれました。」


 リズさんが、私の方を睨む。


「『ヒューマ』の村の、食料を勝手に取っててたのか?」


 私は、頭の上でリズさんを威嚇するヘッドさんの、頭を撫でて落ち着かせつつ、話す。


「い、いえ、そもそも、スライムは、人間族の食事を取りません。ただ、スライムであることを隠さないといけなかったので、食事を隠しておいて、この子達にあげていたんです。」


 私の言葉を聞き、リードさんが発言する。


「ふむ、分かりきったことかもしれんが、念の為聞かせてくれ。なんで、スライムであることを隠していた。」


「バレてしまったら、一緒に生活してくれないと思いまして。」


「やはりか。しかしなぜ、人間族と生活を共にしようと思ったんだ?」


「モルガナさんという人から、人間族は非力ですが、知識と団結力で、生きてきたと聞いたので、私達スライムも、生き残るためにその知識を頂こうと思いまして。」


 私の言葉を聞いて、リードさんは自分の顎に手を当てる。


「モルガナ?リズ、知っているか?」


「いや、知らん。」


 リードさんの質問に、ヘッドさんを睨みつけながら答えたリズさん。

 リードさんは再び、顎に手を当てる。


「スライムであった、リチュに話しかけ、人間族と生活を共にすることを進めた者。なにかありそうだな。」


 リードさんは、私の方を見て聞く。


「モルガナというのは、何族なんだ?」


「見た目は、人間族と同じでした。体の中にマナがありませんでしたし。」


「体の中のマナまで、見れるのか⁉」


 私の発言に、リードさんは驚く。


「え、ええ。そこに驚きますか。」


「ああ、すまん。俺らには、スライムの目に何が見えてるか、分からんからな。驚いてしまった。」


 私達は話しながら、森を進んでいった。

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