「先程から、爆発音がすると思ってきてみれば。なんだこの壁は?」
「あの向こうに、あいつがいるんだよ!!」
「あいつ?」
私は、自分の身長の倍はある壁の横側から、顔をだす。
「リチュ!!」
リードさんが、自分の腰についている剣に、手をかける。
私は、慌てて両手を上げる。
「やめてください!私は、貴方達と争いに来たわけではありません!!」
「誰が、そんな言葉信じるかってんだ!!」
リズさんが再び、火のマナを集め始める。
「待て!リズ!!」
「『
リードさんの静止を無視して、彼女は火の玉を放つ。
私は慌てて、壁の中に隠れる。私がいた場所の後ろにあった木が、倒れ、燃え上がる。
「待て!すぐそうやって攻撃をするな!!」
リードさんの声が、近づいてくる。
「話を聞かずに攻撃したのは、謝る。しかし、あの場面を見れば、警戒してしまうし、今も続く子供の行方不明もあって、こちらも心に余裕がないんだ。」
リードさんが、私の前に立つ。彼は、剣に手をかけてはいるものの、その剣を抜くわけでもなく、話を聞いてくれそうだった。
「私は、子供達を誘拐なんてしていません。」
「その言葉を、信じたいのだが、さすがにあの光景を見た後では…」
「なら、スライム達の村に来てください!そこに子供達がいなければ、信じてもらえますか?」
リードさんは、自分の顎に手を当てる。
「そうだな、それなら… 今までよりかはマシになる程度ではあるが。」
「それでもいいです。すこしでも、信用してくださるなら。」
「私達が、ついていく途中に、ブラックドラゴンに襲わせるつもりじゃないだろうな!!」
リズさんが、私の方に近づいてくる。
私は、手を上げる。
「そ、そんな、私は…」
「おい、リズ。いい加減にしろ。警戒するのは仕方ないが、彼女の言葉をすべて疑っていては、話が進まない。」
「そうやって、こいつは、私達をだましたろうが。」
リズさんが、私の目の前に、杖を突きつける。すると、私の上にいるヘッドさんが、目を開けた。
「あっ!」
私は、道中に出会った人間達を思い出し慌てるが、時すでに遅し。
「えっ?」
リズさんは、驚いた声を出し、突風によって吹き飛んだ。
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「おい、リード!見ただろ⁉ 完全に私を攻撃してただろ!この鳥も、リチュの仲間だろ⁉」
リズさんとヘッドさんは、お互いを睨みつけていた。
「敵意を見せたら、攻撃もされるだろう。さっきまで、寝ていたんだぞ?まぁ、しかし…」
リードさんが、リズさんの方を見て注意をした後、私の両肩のナイトバードを見る。
「ナイトバードも、味方につけているとはな。他種族同士にもかかわらず、良く仲良くしているな。」
「あの、ドラゴンの方は、私の仲間じゃないんですけれど…」
私は、未だ晴れていない誤解の一つを否定する。そして、3羽を見て話す。
「この子達は、私が『ヒューマ』の村にいる時に、夜、スライム達の村に行く途中で、餌を与えてたら、なつかれました。」
リズさんが、私の方を睨む。
「『ヒューマ』の村の、食料を勝手に取っててたのか?」
私は、頭の上でリズさんを威嚇するヘッドさんの、頭を撫でて落ち着かせつつ、話す。
「い、いえ、そもそも、スライムは、人間族の食事を取りません。ただ、スライムであることを隠さないといけなかったので、食事を隠しておいて、この子達にあげていたんです。」
私の言葉を聞き、リードさんが発言する。
「ふむ、分かりきったことかもしれんが、念の為聞かせてくれ。なんで、スライムであることを隠していた。」
「バレてしまったら、一緒に生活してくれないと思いまして。」
「やはりか。しかしなぜ、人間族と生活を共にしようと思ったんだ?」
「モルガナさんという人から、人間族は非力ですが、知識と団結力で、生きてきたと聞いたので、私達スライムも、生き残るためにその知識を頂こうと思いまして。」
私の言葉を聞いて、リードさんは自分の顎に手を当てる。
「モルガナ?リズ、知っているか?」
「いや、知らん。」
リードさんの質問に、ヘッドさんを睨みつけながら答えたリズさん。
リードさんは再び、顎に手を当てる。
「スライムであった、リチュに話しかけ、人間族と生活を共にすることを進めた者。なにかありそうだな。」
リードさんは、私の方を見て聞く。
「モルガナというのは、何族なんだ?」
「見た目は、人間族と同じでした。体の中にマナがありませんでしたし。」
「体の中のマナまで、見れるのか⁉」
私の発言に、リードさんは驚く。
「え、ええ。そこに驚きますか。」
「ああ、すまん。俺らには、スライムの目に何が見えてるか、分からんからな。驚いてしまった。」
私達は話しながら、森を進んでいった。