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第30話 その頃の彼

 同時刻。


(腹減ったな……もうこんな時間かよ……)


 トレーニングルームにいたデューイは、使用していたランニングマシンを停止させる。

 周りを見れば、それぞれ自由に休憩したり、他のトレーニングメニューをこなしている者達がいる。

 このトレーニングルームは、トロイメライ戦隊隊員達だけでなく、このヴェルト・アル=ズィーゲリンに配属されている全ての乗務員が利用出来る。

 搭乗機の相棒であるハナはおらず、また、他の隊員達の姿もない。


(みんな忙しいし、しゃーねぇよなぁ……)


 デューイは自分の中で結論づけると、更衣室へと向かう。

 備え付けのシャワールームに入り、汗を流すとロッカーの鍵を解除して扉を開け、着替える。

 トロイメライ戦隊隊員服へ着替え終わると、デューイは携帯端末を取り出し、次の予定を確認する。


(あー……午後からシミュレーションルームで戦闘訓練なら、十三時過ぎだし昼飯食うか!)


 こうして、デューイは食堂へ向かうため、艦内を移動し始めた。


 ****


「あー! デューイだぁ! 今から昼ごはんかぁー?」


 声をかけて来たのは、シャオだ。

 彼は、相変わらずゆったりとした口調で、どこか幼さを感じさせる。

 だが、デューイはそれがシャオの性格であり個性なのだと認識しているため、特に気にならない。


「シャオも昼飯かい? にしちゃあ遅い時間じゃあねぇか?」


「オレは食べ終わったぞー! デューイ見かけたから声かけてみたんだ!」


「おー気遣わせちまったな? ありがとよ! シャオはこれからなんかあるんだろ?」


「機体の調整があるぞー!」


「そうかい。んじゃ、お互いやる事すませようぜ! じゃあ後でな!」


「おう! またなー!」


 シャオと別れたデューイは、食堂に入り、入り口に置かれたトレーを手にして、バイキング形式で配置されている食事を次々と乗せていく。

 デミグラスハンバーグ、ポテトサラダetc……。

 気付けば、たんまりと食べ物が乗っかったトレーを、豪快に今日の気分で選んだテーブルに置くと、デューイは椅子に座りカトラリーからフォークを取って、食べ始めた。

 食べっぷりも豪快なデューイは、食堂でもよく目立つ。

 ……もっとも、トロイメライ戦隊隊員達に言える事ではあるが。

 この艦内の食事は、栄養は勿論、味もしっかりと考慮されている。つまり、とても美味しいのだ。

 それもあり、デューイの食事を摂る手は止まらない。

 そんな彼の隣に座ったのは……予想外の人物だった。


「ホッホ。良い食べっぷりじゃのう?」


 トロイメライプラン総括にして大将、コズモ・ブルーノが何気ない口調でデューイに声をかけてきた――

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