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第31話 総括からの言葉

「コズモたいしょ、大将ぉぉぉぉっ!?」


 驚くデューイに対し、コズモは気にする事なく隣で食事を摂り始めた。コズモの食事は、サラダを中心としたバランスの取れた物が並んでいる。


「最近、健康に気をつけろと言われていてのぅ。デューイ少尉くらい昔は食べられたんじゃが、歳を感じるわい」


「そ、そうですかい? というより! 総括がなんで食堂に!? 普段個室ですよねぇ!?」


 階級が高い者ほど、セキュリティの高い個室が用意されている。当然、食事も運ばれてくるため、食堂に赴く理由がない。

 にも関わらず、コズモは今ここにいる。

 未だ動揺を隠せないデューイに対し、コズモは微笑みながら告げた。


「たまには誰かと、食事を摂りたくなるものでのう。ホッホ」


「は、はぁ……? そういうもんですか?」


「そういうもんじゃよ。して、ハナ少尉とはどうじゃ?」


「ハナと……? 何故気にされるんですか? も、もしかして何か問題が!?」


「そう意味ではないぞ? ただ、二人はコンビネーションが重要じゃろう? ハナ少尉は繊細じゃから、ちとな?」


 ――ハナは繊細。

 その言葉に、デューイは考え込む。

 確かに、最近のハナはどこか元気がない。何度か声をかけたが、その度に気にしないでほしいと言われてしまい……実際そうしていたのだが。


(それじゃ、ダメっつー事……だよな?)


「デューイ少尉、食事を摂る手が止まっておるぞい? 食べてからじっくり考えると良いぞ?」


「は、はい! ご助言ありがとうございます!! 総括!!」


「ホッホッ」


 コズモは食事を再開し、デューイの横で美味しそうに食べている。

 その光景を見つめ、とりあえず早く食べ終わろうと思い至ったデューイは、食べる手を早める。

 なお、デューイが総括であるコズモと食事をしたという話は、すぐに艦内に広まり、以後、語り種となるのであった――

 その理由は、コズモの行動があまりにも珍しいからである……。


 ****


 その頃。

 ヴェルト・アル=ズィーゲリンは、地球の軌道に乗りつつ、宇宙空間を航行している。

 その宇宙空間を、自室の窓からハナは見つめていた。


 (あれ以降、カタストロイも疑似怪獣ハイ・カタストロイの反応もない……不気味ね)


 彼女が憂いているのは、今後についての事。


(カタストロイには、知性がある……何を考えているのかしら?)


 カタストロイが敵意を持っている事は間違いない。

 そして、人々に何かを伝播させて変異させているのも。

 だとしたら、その目的は一体なんだというのか?

 そこが気になり……ハナの顔は曇っていた。


(考えても分からないけれど……でも……!)


 その時だった。

 扉の端末から音がした――

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