ホッタンの村にて。夕食を済ませた、就寝時間でのことである。
「……ねえ、
「
「
「どないしたん? 寝られへんの? 小虎ちゃん」
「小虎嬢ちゃんも、寝といたほうがいいっスよ? 明日は早いんスから」
「うーん、そうなんだけどさあ。なんだか目が冴えちゃって。レベリルは――――もう寝ちゃってるか」
Zzz…… Zzz…… Zzz……
「ねえ、ちょっとお話ししない?」
「べつにええけど……。竜ちゃんは、今頃もう眠ってるんかなぁ」
「それにしても、
「そりゃ、竜司は『伝説の勇者様』だもん。パーティーメンバーとは、それなりに扱いも違うってことなんじゃない?」
「まあ、ちゃんとベッドが
「うん、あの――エルミヤさんのことなんだけど」
「ああ、あれにはびっくりしたっスね! 急にいなくなったと思ったら、いきなり婚約しただなんて」
「ホンマやで! ウチはてっきり、竜ちゃんとデキてるんちゃうかって疑ってたのに」
「デキてるって? どういうこと? ちま」
「だってエルミヤさん、竜ちゃん
「やっぱりそうなの? あの二人、なーんか距離が近すぎと思ってたけど」
「ここだけの話、
「ホンマに? 伍道さんの親戚のコやって
(首輪でお散歩か…………正直、悪くないかも…………)
「どないしたん? 小虎ちゃん」
「顔赤いっスよ、小虎嬢ちゃん」
「なんでもないなんでもない! そういえば、あれも驚いたな。まさか、
「まあ、考えてみればあの三人ってみんな、この『ドラゴンファンタジスタ』っちゅう
「はー。そこんとこ、チマキさんはよく納得できるっスね。
「せやけど、実際にこっちの世界に来れてるんやからしょうがないやん。ウチはどうなろうと、竜ちゃんのこと信じてるし」
「私も信じてるよ? 竜司は竜司だもん」
「
「……ところでさ、ひま。前から思ってたんだけど。婦警さんがヤクザと付き合ってもいいの? ほら、世間的に大丈夫?」
「いいかダメかで聞かれたら、まあダメっスね。警察官たるもの、反社会的勢力との交際は厳に慎むべきっス」
「ほなアカンやん」
「いいんス。いざとなったらすっぱり警察辞めて、実家とも縁を切るっス。尾形
「へえー、わりと意外! ねえ、ちまは?」
「ウチもぜんぜんかまへんで。べつに、竜ちゃんに継いでもらわへんでも、ウチが二代目社長になって千石モータース経営していくし。竜ちゃんはヤクザでも土建屋でも、やりたいことやってくれれば」
「伝説の勇者は?」
「ははっ。それはまあ、できれば適当に切り上げてほしいとこやけどな。ホンマ、命がいくつあっても足りへんもん。……ところで、小虎ちゃんはどうやの?」
「なにが?」
「シンガポールの大学、卒業するんやろ? その後は?」
「うーん。私も、竜司しだいかな。海外で就職もいいし、起業もしてみたいから。
「ほー。小虎嬢ちゃん、夢が広がりんぐっスね!」
「あ、新婚生活は、することちゃんとしたいよ?」
「それが一番重要やな!」
「それは譲れないっス!」
「ねえ、話は戻るんだけど……。エルミヤさんの婚約、どう思う?」
「あー、あれな。最初はええんちゃうって思ったけど、どうやろな」
「おんなじ世界の人だしおんなじ耳長の人だしお似合いなんスけど」
「あのシャルクって結婚相手! なんかさ、どーもうさん臭くない?」
「せやろ? ウチも晩御飯のとき思ったけど、なんか二人の様子がおかしいで」
「もし、エルミヤさんの婚約が意に沿わないものだとしたら、どうするっスか?」
「私は、エルミヤさんの方に付く」
「ウチもや」
「そうなんスか? 小虎嬢ちゃん、さっきは
「正々堂々と勝負、とも言ったでしょ? もし――――」
「――――どないしたん? 小虎ちゃん」
「シッ!」
「小虎嬢ちゃんのトラ耳が、ピクッと動いたっス。何か聞こえたっスか?」
「ちょっと待って。ドアの方、見てくる――――」キイィ
「ちま! ひま!」
「なんなん?」
「なんスか?」
「向こうの竜司の部屋! 今、エルミヤさんがノックして入ってった!」
「マジでー?」
「マジスか?」
「見に行く?」
「当たり前やん!」
「当たり前っス!」
「物音立てないでよ、気づかれちゃうから。静かにね……。ほら、レベリルも起きて! 行くよ!」
「…………ほが?」
第九話(六)に続く