「――――ってな。キマッたところで、そろそろ行ってくるぜ、みんな」
「竜司!」
「竜ちゃん!」
「リュージさま!」
俺は
「小虎、みんなを守ってやってくれ。チマキ、この車の運転はまかせたぜ。それからエルミヤさん――」
「は、はいっ!」
「これまで、いろいろありがとうな。エルミヤさんの魔法がなかったら、俺は生きてこれなかったかもしれねえ」
「リュージさま、そんなこと……」
言葉の途中で、エルミヤさんの目からたちまち涙があふれだした。思えばこの奇妙な冒険は、この不思議な魔女との出会いから始まったのだ。そして、この物語の
「竜司くん!」
「あ、亜也子か? いったいどうした?」
カーナビを見ると、画面いっぱいに亜也子のまん丸い顔がどアップで映し出されている。推定体重三桁を超える彼女は、相変わらず
「針棒組の事務所まで、伍道さんに呼ばれたのよ。今回の
「ああ。『ドラゴンファンタジスタ』ってゲームだ。そういや、亜也子が買収した
「そうよ。
「あいにく俺には、ソースだか
「わかったわ、竜司くん。絶対、死なないでね!」
「まかせとけ。俺はまだ一度も死んだこたぁねえ」
元女房相手に軽口を叩くと、俺はドアを開けた。そしてそのまま、車にしがみつくようにして
「勝負は一瞬だ。いくぜ、
「ギシャアアアアッ!」
渾身の力を込めて
「リュージさまっ!」
RRRR―――― RRRR――――
「だ大丈夫ですかっ? リュージさま!」
俺からの
「ああ。ありがとよ、エルミヤさん。あらかじめかけてくれてた『
「いいや、これは
エルミヤさんとの会話に、伍道が割り込んできた。俺としては、何も言わずとも俺の身を護る最上級の魔法を使ってくれていた彼女に、感謝してもしきれないところだったが。
「いえ、これはお父さまから渡していただいた
「それにしても、大したもんだぜ。もうどこに出しても恥ずかしくない、超一流の
「あ、ありがとうございます、お父さま……」
「どっちでもいいんだけど竜司、いまどこにいるの?」
「俺か? 俺はな――――ここだぜっ!」
小虎の声に答えて、俺は姿を見せた。
「ギャオオオオ?」
「覚悟しな、
俺はひと回り数メートルはあろうかというドラゴンの首に、長ドスの刃先を振り下ろした。熟練の
「すげえ……これが、『伝説の勇者』の力なのか?」
自分自身の力がいまだに信じられない、と思いながら俺は、
「やった! 竜司が勝った!」
「やったで竜ちゃん、さすがやな!」
「おめでとうございます、リュージさま!」
地上に降り立った俺の
しかし俺は勝利の喜びどころか、言いようのない悪寒を全身に感じていた。
「いや、まだだ! ヤツは死んじゃいねえ」
「ああ、正確には、まだ次のヤツがいるぜ」
「つぎの? どういうことですか、リュージさま、お父さま」
「……あ、あれ、いったいなにが出てきたんや?」
「まさか、アレって――――」
消えたはずの黒い煙が、ふたたび同じ場所に巻き起こった。そしてそこに姿を現したのは、あろうことかさっき倒したばかりの
「ギシャオオオオオオオオン!」
「ち……っきしょう…………!」
「コピペだ」
「コピペ?」
「どうやら
「そんな……じゃあ、どうすればいいっていうの?」
「この世界から、存在そのものを消すしかねえ。
「そ、そんなことできるん?」
「できるさ。『ドラゴンファンタジスタ』のプログラムをいじればな。そうだろ? 伍道」
「まさか竜司、
俺の言葉に、伍道は驚いたように答えた。
「竜司さん、そんなの不可能です! 膨大なソースコードの中に、
伍道の代わりに聞こえてきたのは、
「いや、べつに
「えっ、どういうことですか?」
「手っ取り早く、『ドラゴンファンタジスタ』の世界から『ドラゴン』に関する単語や言葉だけを片っ端から消しちまえばいい。ドラゴン、龍、竜……そう、全部だ。それならすぐにできるだろう?」
「ええっと……それはたぶん、プログラムの単語を全選択して消すだけだったら、すぐにでも……」
「リュージさま! それだけは絶対にいけません!」
「ああ。ダメだ、竜司! そんなことをすれば、『竜』の名を持つお前自身も消滅する」
そうだ。伍道の言うとおり、ゲームの世界の住人であるこの俺にも「竜」の字がある。その名前が消えたら、俺自身の存在がどうなるか――――
「いいんだ、頼む、
「竜司さん――――!」
俺は高速道路のど真ん中に一人
パソコンの前の
続く