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番外編 まどろみのkiss周防編

 せっかくの休日だっていうのに、枕元にいる飼い犬が、朝からウルサイ。散歩に連れて行けと騒いでるワケじゃなかったけど、俺の体を勝手に触りまくりって、好き放題している。


 どのタイミングで起きてやったら、一番驚くだろうか――


『疲れを引きずらせちゃダメだもんな。イチャイチャしたいけどガマンだ』


 なぁんて労わるようなことを言ってくれた言葉を聞きながら、されるがままでいてやることにした。


 そしたらいきなり左手を掴んで、スリスリ自身の頬に擦りつける。頬擦りなんてして、何を考えているのやら。構える時間はそれなりに遊んでやっているというのに、まだ足りないのかコイツ。


 内心呆れ果てている俺を尻目に、どんどん行動をエスカレートさせていく太郎。顔に息がかかったと思ったら、


『タケシ先生、大好き……』


 囁くように言ってから、オデコにちゅっとKISSをした。


(っ……ちょっ、いきなりそれはないだろうよ)


 太郎の予測できない行動に、バクバクと心臓が高鳴ってしまう。


 オデコの次は頬っぺたか? それとも唇にKISSされるかもしれない。次の衝撃に対して、心の準備をすべく身構えていたら。


「タケシ先生の迷惑にならない程度に、力になりたいんだ」


 ぽつりと呟かれた言葉に、疑問符が頭の中に浮かぶ。もしかして――


(忙しいとか邪魔だとか、結構乱発してるところがあるかもしれないな。だからコイツなりに、気を遣っているのか)


 ずーんと反省した矢先だった。


『タケシ先生……タケシせんせ』


 俺の名前を愛おしそうに連呼する太郎。


 ――俺は寝ているというのに気を遣うなら、そういうトコからしろっていうんだ!


 デリカシーのない行動にイライラして、起きてやろうかと思ったら。


『タケシ――』


 いきなりの呼び捨てのせいで、胸がぎゅっと鷲掴みされたみたいになった。普段から呼ばれるのは苗字ばかりで、こうやって名前を使うのは太郎だけ。特別な感じがしていたけれど、呼び捨てにされるというのは、思っていた以上に衝撃が半端ない。


 動揺しまくりの俺の手に、太郎の手が重ねられる。その大きな手に包まれて、安心感に身をゆだねていると。


『タケシ……好きだよ』


 大胆に告げられる告白に、どうしていいか分からない。ヤバイよ、ヤバイよと頭の中で、出○哲郎が走り回っていた。


 なのに――


『――タケシ、すっげぇ愛してる』


 (*・-_-*)ポッ


 もう無理だと判断した俺は慌てて腕を抜き去り寝返りをして、太郎に背中を向ける。


(動揺した顔を、コイツに見られてたまるか!)


「……全部、聞いてたとか?」

「…………」


 問いかけを一切無視して、必死こいて寝ることに専念した。そんな俺の顔に、太郎の息がかかる。どうやら覗き込んだらしい。何を思ったのか泣きボクロにいきなりKISSをしてきたので、体をビクッと震わせてしまった。


((( - )・-_-*)チュッ♪


「おはよう、タケシ」


「……朝っぱから煩いんだよお前は。ひとりで遊んでな」


 動揺しまくりの俺の顔をじっと見て、嬉しそうな表情を浮かべてくれる。


「なぁドキドキしてる?」


 そんな言葉を耳元で囁いてから耳朶を甘噛みされ、くすぐったくて体をよじらせてしまった。


「っ……やめろって」


 太郎の頭目掛けて振りかぶった腕を素早く掴まれたと思ったら、反動を使って仰向きにされる。


「その顔、すっげぇ反則なんだけど」


 太郎の目は俺のことが欲しいと言っているのが、ありありと分かりテレまくるしかできない。


「やめろよ。そんな目で見るな……」

「だったらタケシも、そんな顔するなって。どうして顔を赤くしてるんだよ?」


 俺の行動を先読みしたのか、もう片方の腕もさっさと掴まれた。これじゃあ防御ができないじゃないか。


「朝っぱらから何やってんだ。いい加減に離せって……」

「離さない、だって、ほら――」


 空いてる手で下半身を弄られたのだが、困ったことにそれは硬くなっている状態だった。


「うっ……それは、その、朝なんだから、しょうがないだろ」

「ウソばっかついて、かわいいよタケシ。嬉しくてこんなになったんでしょ?」


 何度も呼び捨てされる度に甘い衝撃が胸に走り、言葉がうまく出てこなくなった。


「そんなの全然嬉しくなんてないっ。ふざけるな、バカい――」


 一生懸命に言った苦情を塞ぐため、無理やりKISSをした太郎。舌を絡められただけで、体の全部で太郎を求めてしまう。


「タケシ、愛してる……」

「――歩、俺も……」


 告げられた言葉をぎゅっと噛みしめて、自分の気持ちを言ってやる。ありきたりな一言だけど、今の俺には十分すぎるくらい幸せに感じる言葉だよ。


 だけどな――


「飼い犬に何度も呼び捨てされる、ご主人様はいないんだよっ! いい加減にしろ太郎」


 コトがめでたく済んで、一緒にブランチを食べてからの午後。まだイチャイチャしたそうな顔の太郎に、ここそとばかりに命令してやる。


「罰としてこの間教えてやった資料をもとに、課題を20ページで仕上げること」


「そっ、そんなぁ。タケシ……」

「凸(・`△´+) ナンダト!!」

「ひっ!? タケシ先生、ごめんなさいですっ! 喜んでやっつけさせて戴きます!!」


 大学生の太郎に有意義な時間を提供してやった俺は、恋人としてタイムリーだと自負したのであった。


 めでたし めでたし

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