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繋がり届く思い~一緒に島へ~(歩目線)2

 目の前にある襖1枚隔てた向こう側には、お父さんとお母さんが寝ているのだが、どうしても確かめたかったことがある俺は、颯爽とタケシ先生の布団に潜り込み、後ろから抱きしめてやった。


 その途端に右側にある跳ねた後ろ髪が、ぴくりと揺れる。暫しの間のあと、タケシ先生は深いため息を漏らした。


「こら……いきなりなにをするんだ、バカ犬」


 隣に聞こえないように押し殺した声で言ったせいで、いつもより怖さが倍増されたけど、おののいている場合ではない。俺にとっては、切実な問題なんだ。


「だ、だってよぉ……どうしても気になったんだ。その、御堂にキスされたっていうのがさ」

「ちょっ、ま――」


 タケシ先生が返事をする前に、がばっと覆いかぶさり唇を塞いでやった。


 おいおい、隣の部屋に親父とお袋がいるんだぞ(照)←周防の心の声


「っ……ぁ、うっ……」


 抵抗できないように、タケシ先生の両腕をガッチリと握りしめ、布団に磔にしてやった。ヤル気満々な状態の俺に、目の前で心底イヤそうな顔をして眉根を寄せる。


「タケシ先生、アイツに触られたのはお尻だったっけ」

「お、おい……なにをする気なんだ、お前?」

「なにって、舐めて拭うだけ」


 ケロッと言い放ってみたら、首を激しく横に振りまくった。


「ばっ! 港で両手を使って掃いまくっただろ。あれでチャラになってるって」

「俺の気が済んでない。だから舐める」

「マジメな顔して舐めるとか言うな! 隣に聞こえたらどうするんだ?」


 顔を真っ赤にして大声で言ってる時点で、丸聞こえだと思うぞ、タケシ先生。つぅか冗談が通じないとか、どんだけ錯乱してるんだろ。


「だって、タケシ先生のことが好きなんだ」


 俺はいたって冷静でいたため、きちんと声を抑えて言った。やっぱハズカシイからな、うん。


「す、好きだからって舐めるとか、絶対におかしいから!」

「おかしくないぜ。他のヤツに触られて、そのまんまにしてるのが変だしさ。俺のもんに勝手に触るとか、マジでムカつくってぇの」

「ムカつくのはわかるけど、場所をわきまえろって」

「そうよ。お父さんもいい加減に襖の前から離れて、ふたりのことを放っておいてあげなさいって!」


 隣から聞こえてきたお母さんの声に、タケシ先生と顔を見合わせてから襖を見てしまった。


「とにかく……自分の布団に戻れ。続きは地元に帰ってから、ちゃんと聞いてやる」


 かなり呆れながら告げられた言葉だったけど、お父さんのお蔭で帰ってから、タケシ先生とイチャイチャできたのは、ラッキーだったかもしれないな。

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