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T083  フッ!ケイサンドーリ!(汗)


「あれ、まじか…」


「ほんとにクリアするとは…」


「無茶苦茶ですわ…」


「あいつ目ん玉。何個付いてやがる…」



『…は?』

『何今の…?夢?』

『クリア…』

『えっ?…えっ?』


「さすがナユカだね〜」




 目の前で起こったことに整理がつかない会場の面々と動画の向こうの視聴者は、ただただそうつぶやくしかできない。

 唯一、ユキだけがさも当たり前のようにしている中で、次第に歓声の声が大きくなっていった。




*>>ナユカ視点




 ミニゲームを終え会場から出る。入口には次にワンライフをするべく並んでいたユキが待っていた。




「おつかれ〜。ナユカ。凄かったよ〜」


 ユキはとてもニコニコしている。


「次はユキの番だよ?行ける?」


 少し疲れ気味に私がユキに問うと…


「もちろん!クリアしてみせるよ〜。だから応援しててね?」


「うん」



 ユキはそう言ってこっちに笑顔でそう答えそのステージへ歩んでいく。その背中はやはりあの頃と変わりなく頼もしくて。




*>>ユキ視点



 この場には興奮冷めやらぬギャラリーと何より少し疲れた顔のナユカの心配そうな眼差し。ゲーム開始前の少しの静寂がやけに気になる程度には自分は緊張しているのだろう。

 ゲーム内では汗は演出以外ではかかないが、たぶん現実にある自分の体は汗でびっしょりになっていると思う。

 さあ〜…。ちょっとこれは厳しいぞ〜

 あれをどうクリアしたものか…。真剣に悩んでいた。


 使えるスキルは無し…。単純たんじゅんな観察能力と身体能力が物を言う…。か〜。まあ、これでも守り人だからね。あとは気合かな〜






《3…》


 目をつむり静寂と響く機械音声を聞く。





《2…》


 そのまま深呼吸して。






《1…》


 ゆっくり息を吐き出す。





《ゲームスタート!!》



 そして私は目を開ける。迷いは無い、私はナユカの願いを全力で叶える。

 そうして飛んできた魔弾を前に私は思いっきり走り出すのだった。





*>>三人称視点




「おつかれさまです。ナユカさん」


「ありがとー」



「まさかほんとにクリアしてしまうとは思ってもいませんでした。よくあの初見殺しをかわせましたね?」


「いや、結構びっくりしたよ?なにあれ反則だよ!」


 帰ってきてから文句を言うナユカを見て、それを躱せるナユカは一体?と、なかなかに今のラフなナユカとの違いに。…うん。これも良き!と、ひとり納得しつつカメラを向ける。


「それで…、ナユカさんに聞くのですがユキさんは本当にクリアできるのですか?」


 帰ってきたナユカにねぎらいの言葉と疑問を飛ばすビュア。現在もそのまま生配信中であり、視聴者もその疑問を思っている者が多く。その代弁をビュアは始める。


「ユキは強いよ。私が生まれてから見た中で2番目に強いかな?」


「えっと?ユキさんが強いのは皆さん知ってますが…。これはスキルなしですよ?なかなか厳しいんじゃないですか?」


 ワンライフが始まり、大きく体を動かし始めたユキをナユカはどこか遠くを見つめるように眺めている。少し含み笑いを浮かべ、ナユカはビュアに言った。


「違うよ。ユキはゲームの外でも強いからね。前に私を守ってくれたことがあるんだよ…。変な人間からさらわれそうになった私を、ユキは素手で助けてくれた。…だからユキはスキルがなくても、このくらいなら自力で何とか出来ると思う」


 唐突に飛び出した情報に困惑するビュアと視聴者にナユカふっと笑う。


「ユキは強いんだよ」


 はかなくも無垢むくなその横顔は、そのまま視線をユキに戻し、ナユカはそれ以上は語らず、ただただユキを眺める。


 彼女の瞳に映るのは今か、それとも遠い過去の記憶か。

 その真実はナユカにしか分からない。






*>>ユキ視点





 大きく動く。それは常に一定の場所には留まらず、まるで鬼ごっこでもしているかのように逃げる。相変わらず激しさを増すその弾幕に方角は変えども前進し、後退は絶対にしない。




 要は全部誘導ゆうどうしてあげればいいんでしょ?

 こういう避けげーなら、パターンさえわかってしまえば。あとは誘導しながら空いたスペースに体を滑り込ませてあげるだけでいい。



 パターンとしては

0:00

私狙いの魔弾

私狙いの弾幕

1:00

ランダムな魔弾

ランダムな弾幕

私の横狙いの魔弾

2:00

弾速早めの魔弾

弾速遅めの魔弾

私の周囲を狙った弾幕

3:00

動作系のスキルの魔弾

動作系のスキルの弾幕

3:30

私狙いの特大の魔弾

進行方向狙いの極小の弾幕

3:45

ランダムな極小の魔弾

ランダムな特大の魔弾

4:00

造形系のスキルの魔弾

造形系のスキルの弾幕

4:15

命令系のスキルの魔弾

命令系のスキルの弾幕

4:30

属性系のスキルの魔弾

属性系のスキルの弾幕

4:38

変化系のスキルの魔弾(複数カテゴリーの合成弾)

4:45

剣術系のスキルの斬撃

設置系のスキルの使用

転移系のスキルの使用

4:58

全方位弾



 と私は予測している。問題は4分からの情報が若干不足気味なところかな?

 4:45以降はまだ何かあるかもしれない。ちなみに軌道だけなら私狙いか、私の周囲に飛んでくるか、ランダムかの3種類しかない、とも言い換えることが出来る。なので後退はしない。そんなことしたら、この3種類の弾幕に囲まれることになる。

 私狙いの魔弾は逆に言ってしまえば動いていれば当たらない。全て後ろを通過していくだけた。あとは前後から魔弾が来たら横にズレればいい。


 そうすれば退路の確保はできる。常に余裕をもって回避に専念せんねんしつつ、前に進んでいけば当たらない!それが属性を帯びても同じ、私狙いの魔弾は動いていれば当たらない。進行方向を妨害するような弾幕も減る。



 問題はここからか。


4:45





 何が来る?




スパッ!!


 斬撃!!横から来た!ナユカに習ってスライディング!次!


 ん〜!?引っ張られるッ!?て周りの弾幕もそれに引き寄せられていくように!!ブラックホールかなにかそんな感じの物か!?

 吸い込まれないように直進前から吸い込まれに来る弾幕は気合いよけ!!


ピンッ!キッキッ…


 今度は…


「物理的な爆弾んんんんんーーー?????!?」




 こっちに来るなッ!んりゃァー!


ガキッ!!…ドカーン!!!!




 よっし!完璧なシュートッ!咄嗟とっさり飛ばしたけど衝撃で爆発しなくて良かった!!


 んで、最後の全方位弾は…



 全ての着弾点はここ?中心?


…発射されるタイミング的には…


「上だァ〜〜!」



*>>三人称視点



 タイミングを合わせてジャンプしたユキは、少し上昇。ジャンプの頂点で読み通り弾幕がピタッと止まり消えていった。



 ナユカの予想通り、ユキはゲームをクリアする。そして振り向きながら笑うのだ。


「ブイ〜!」




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