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T082  モウワンライフ


*>>ナユカ視点




《3…》


 大丈夫。今回は初めっから本気で全部見切る…!







《2…》


 もう油断なんてしない…!







《1…》


 ありとあらゆる弾幕を…!







《ワンライフスタート》

「全部かわす!!行くよッ!!」






*>>三人称視点





「やっぱりナユカさん…。相当悔しかったんですかね?」


「意外と負けず嫌いなところはあるからね〜」


 今、このブース。ワンライフの会場付近は、妙な人だかりが生まれていた。


「相変わらずの混み具合で。しかも順番待ちの時間で噂を聞いて集まってきたんだろうな…」


「あァー、ガヤガヤうるせぇー…」


「ミカさん、口悪いですよ?」


『見た目ロリが1番口悪い‪w』

『身長的に中学生』



「だぁーれがロリだッ!シバくぞ!」


 現在ビュアにより生配信されている動画は、カウンターが壊れたのかと言うほど視聴者の数がどんどん跳ね上がっていっている。

 唐突に始まった生配信。最近流行りに乗っているビュアのチャンネル。その他の情報ネットワークや広場などのコメントで瞬く間に拡散されていったのである。

 その結果が視聴者の上昇なのだが、そのことを知ったプレイヤーなどがここ、ワンライフのブースに集まってきていた。


「それよりユキさんは大丈夫なんですか?この後、ユキさんもワンライフを挑戦するんでしょう?」


 ナユカに頼まれその後にワンライフをする約束をしたユキだが、その約束の中にはワンライフのクリアも含まれている。

 闘技大会が始まってから、未だにクリア者がいないこのミニゲームをナユカはユキにクリアして欲しいと言ったのだ。


 そもそも、スキル使用禁止。HP1でこちらは避けるだけというシンプルかつ難しいゲームな訳だが…。時間経過によりどんどん難しくなっていくそれは、後半からクリアさせる気なんて毛頭ないような密度の弾幕へと変わるのである。

 ついでに飛んで来る弾幕はスキルをふんだんに使って曲がったり止まったりと容赦ようしゃがない。それを知っていてもユキは。


「何度も言うけど大丈夫だよ〜。そのために今、ナユカが頑張って避けてるの見てるんだからね〜」


 自信満々に言うユキに、ビュアはどこからその自信が来るのか少し考えたが結論は出ない。そういうもの、と割り切るしかないようである。


「初めの方は割と簡単そうだよね〜」


「問題はここからですか…」


 そんな観客に見守られながらナユカのワンライフは3:30を越えていく。







*






 3:30をえたタイムを見て、これから魔弾が大きくなったり小さくなったりすることを意識する。


 大きい魔弾を躱すために大きくそのステージを動かなくてはならず、今までよりもさらに難易度が上がった避けゲーを、ナユカは真剣な表情で躱していた。

 避けた先にある小さな弾幕をスライディングでくぐり抜け。

 曲がって接近する低めの魔弾を咄嗟とっさに体をひねりながら躱し。

 さらに体の状態を起こすという芸当を難なくこなす。





(うん、4分まではこんな感じて集中してたら余裕で見えるね)


 もう既に、余裕すら生まれつつあるナユカを観客は好き勝手に、「すげー」だの「チート」だの言っているが、ナユカ自信には全く聞こえてはいない。今回は生配信のコメントもオフにしてある。


 そして、4:00。


 魔弾が様々な形へと変形しておそってくる。


 あるものは棒状。

 あるものは円ばん

 星や、弾丸、三角錐のような変な形まで。


 それらがさらに回りながら。

 又はゆらゆらしながら。

 途中でピタッと止まりながら…


 そんな無茶苦茶にデタラメな弾幕の中をひとつひとつ躱していく。


(しっかり目で見て、どんな変化が起こっても大丈夫なように意識しながら射線を予測して!油断しないように集中!)


 そんな思考のナユカだが一般的に全てを予測するなんてまず無理である。だがナユカはそれを。全ての弾幕を回避しているのだ。もちろん1発も当たらずにである。


 そしてその時はやってきた…





4:30




(来た…。属性弾)


 ナユカを襲っていた弾幕は、次々に水やら風やら火やらへと姿を変えて現れる。


 火弾は近ずき過ぎると熱ダメージでアウト。

 水弾は落ちた先の水しぶきが当たっただけでアウト。

 風弾はそもそも見えにくく。

 土弾は他の弾幕に当たって変に飛び散る。

 中には毒々しい魔弾が飛んできては足元に毒をいたり。

 木が突然生えて障害物が増えたと思えば。

 唐突に赤と白を交互に繰り返し点滅させながら爆発弾が、他の弾幕を回避しながら飛んできていたり。


 もう何が起こっているのか、その会場に訪れ遠巻きに全体を見ているものですら分からない…。約1名を除いて。


 それでもナユカは全てを回避する。





4:45


 唐突にそれは現れた。他の弾幕を切り裂きながら現れる〔魔法〕に会場中が変な声をあげる。



 魔弾ではなく、魔法がナユカを襲う。


 ナユカへ接近するそれに、その場にいた誰もが「危ない!!」と叫びたそうに、しかしあまりにも唐突過ぎたそれに、そんな声は誰一人あげることはできない。

 その魔法の斬撃はナユカへ向かっていく。


「ッ!ハッ!!」


 それでもナユカは回避した。障害物として設置されていたであろうものに、咄嗟とっさに足をかけそのまま宙返り、近くに生えた木に捕まり、体を一瞬宙に浮かせてその他の弾幕をやり過ごし全てを回避しきる。


 もはや声にならない悲鳴をあげるギャラリーと生配信を見ていた人間は全員、口をぽかんと開けて。ただただナユカを眺めることしか出来ない。




4:52


 斬撃に続き現れるのは完全に瞬間移動の類で現れた魔弾がナユカの進路に現れる。ノンアクションで胸の前に現れたそれに、回避不可と思われたそれをナユカは…。


「んっ!!」


 自分からコケるように前に倒れることで(ついでに頭を右に傾げて)ギリギリで下に抜ける。




4:54


 即座にクラウチングスタートのように飛び出し、後続から来る燃える棒状の弾幕から逃げ。

 前方にあった毒の水溜まりを飛び越え。

 横から来た爆弾を反復横跳びのような急制動で躱す。




4:58




そして最後。全ての弾幕が消え…









4:58.5








 全方位360度、上も全ての方角から弾幕が一斉に飛び出してきた。







4:59.0






 全ての人間が無理だと悟り。





















4:59.5














 高速で飛来する無慈悲な弾幕に。













4:59.7

























「ここッ!!!!!!!」





























4:59.8























 ナユカは前方左斜め前に思いっきり飛び出しながら体を縮こませて




































4:59.9













ナユカに全ての弾幕が「そこ」目掛けて集まり。


















































5:00.0






全てがナユカに当たるギリギリで消え去った。









《ゲームクリア!!》









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