朝起きたら右手がコッペパン、左手がジャムパンになってた。
少し気にはなったがあまり気にはせずに顔を洗いに洗面所に向かう。
顔を洗おうと両手を水につけた瞬間に全身から力が抜ける。
パンが濡れると体に力が入らなくなるらしい。
母さんに頼んでコッペパンとジャムパンを買ってきてもらった。
いかんせん両手がパンなので自分では交換できず仕方なく母親に濡れたパンを引き抜いてもらい新しいコッペパン(生クリーム入り)とチョコパンに付け替えてもらった。
元気が百倍近くに回復した。
朝ごはんはさほど美味しくないパンだった。
父親が生きてるパンを狩ってきたそうだ。
野生で育ったパンは臭味が強い。
僕はパンを半分残して家を出た。
「あーかーさーたーなー」
道すがら同級生が見るからに悪の組織のボスに襲われていた。
「どうしたんだいキャバドレスくん?」
僕が声をかけるとキャバドレスくんは襲われているはずなのに状況を事細かく説明し襲っている張本人も何もしないで説明が終わるのを待っていた。
どうやらこいつの名前はダイキン漢と言うらしく、キャバドレスくんの身に着けている24金のネックレスに対して自分が金属アレルギーって理由で因縁をつけてきたらしい。
「キャバドレスくん、もう安心して朝ごはんは食べたのかい?」
キャバドレスくんは朝ごはんを食べていないと答えた。
「僕の左腕を喰らいなよ」
チョコパンの左手を差し出すとキャバドレスくんは美味しそうにムチャムチャと喰らい始める。
ダイキンマンはキャバドレスくんが食べ終わるまでその場できちんと待機していた。
「止めないかダイキン漢! くらえ! コッペスクリューパンチ!!」
「おののこーまちー!!!」
ダイキンマンは空高く舞い上がりコンクリートに激しく体を強打した。
「喰らえ」
流石にかわいそうなので殴って形が変わったコッペパンをダイキンマンの口に詰め込む。
あ、忘れていた。
パンがなくなって力が出ない。
意識が朦朧とする中、遠くからワゴンRのエンジン音が近づいてきた。
「あんたっ! お弁当と水筒忘れてたわよ!!」
母親だ。
投げてきた弁当箱を右手に、水筒を左手に装着する。
装着はできたがしっくりこないやはりパンじゃないと駄目らしい。
僕の人生はこの日から激変してゆくのだが、それはまた今度話そうと思う。
「さーて、遅刻、遅刻っと」
「待ってよーコッペヒューマンくーん!」
僕とキャバドレスくんは学校へと走っていくのであった。
コッペパン明瞭編 完