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第六章:こんなハーレムいいですか?

スパダリなんて無理に決まってたじゃねーか!!(だからこれしかなかったfrom神)




 私は理由を探ろうと、まず兄であるエドガルドの手紙を見返した。

 最初は一年はかかると言っていたのに私の初めての夏休み基長期休みの前に終わらせると手紙に記すようになった。

 私はごく普通のことしか書いてないが、どうやらフィレンツォから情報が色々と流れているらしく、結果として何かあったらしい。

 母からの手紙も見ると「頑張ってね、ダンテ」と書かれているが、日が近い程にそれが協調されている。


「……逃げるか」


 何となく身の危険を色んな意味で感じた私はさっさと着替えて屋敷を抜け出して施設に引きこもろうと決意した。

 一週間、何故か姿を見せないエリア達の事も気にかかるので、施設でどう情報を探ろうか作戦を練ろうと考えた。

 とりあえず着替えて、部屋を出ると、見慣れない扉が自室の隣にできていた。

「ん? 何だ?」

 嫌な予感がするのでスルーしたいのだが、それをするなとの神様の圧が感じられたので私は扉を開いてしまった。


 ばっと無数の手が伸びてきた。


「ギャー?!?!」


 暗闇に引きずり込もうとする手たちから逃れようと、思わず背中を向けてドア枠を掴んで部屋から出ようとするが、混乱していて通常時の力を出せていない私では部屋から出られなかった。

「良かった、引っかからなかったらどうしようかと思いました」

「フィレンツォ?!」

 目の前に現れたフィレンツォだが、表情はどう見ても私を救う気は全くなさそうだ。

「一体どういう事だ?!」

「まずは後ろをご覧ください」

「はぁ?!」

 私は素っ頓狂な声をあげつつも、背後を見る。

 暗い部屋の中にいたのは――


 エドガルド、エリア、クレメンテ、アルバート、カルミネの五名だった。


「何で貴方方が?!」

「ダンテ、いいから枠から手を離せ」

「いや、兄上その前に事情を説明――」

 目が血走っている――否、どちらかと言えば発情しているような表情を全員している。

 それが少しばかり怖くてフィレンツォの方を見る。

「ダンテ殿下が悪いのですよ、他者には目もくれないのは良いのに、大切な存在が求めようとも、大切だからとそして意味をはき違えて無視をしてきたのですから」

「はぁ?!」

 フィレンツォの言葉に私は混乱する事しかできない。





――ちょっと待って神様!!――

――神様言ったよね、絶対解禁宣言するまでセックスとかするなって!!――

『ああ、お前だから言ったのだ』

――はい?!?!――


 諸悪の根源たる神様の言葉を私は理解できなかった。


『性行為経験は無し。処女、童貞。勿論恋人も年齢=いない歴。そんなお前がスパダリモードのハーレムルートなんて夢のまた夢。ならば、お前ができるハーレムルートを通ることにした』

――ちょっと、だからってこんな展開聞いてないー!!――

『聞いてたらお前は絶対逃げるだろうから言わなかったのだ、諦めろ』

――あたりめーだろ、ふざけんな―!!――

『ええい、往生際が悪い、とっとと戻れ!!』

――ふざけんなー!!――


――どうみても私がなっさけない脱童貞&初セックスになるじゃないかー!!――


 喚いてみたものの。

 神様は無常。

 私は「戻され」てしまった。





「ちょ、ちょっと待ってくれ!! いきなり五人とか体験無しの私にはキツイだろう!!」

「皆様ちゃんと考えてますので、ダンテ様にはちょうど良いかと――」

 フィレンツォはそう言ってドア枠を掴んでいた私の手を引きはがした。


「あ」


「頑張ってください、ダンテ殿下。皆様、ダンテ殿下は経験はないですが、今日までゆっくり休んでいたので万全の状態です。お好きなだけ搾り取ってください」

「フィレンツォー!! 覚えてろよお前ー!!」

 心の底から叫びながら、私は五人に引っぱられた。


 部屋の扉は無常に閉まり、鍵がかかった。


「どわっ?!」


 ぼすんと、広すぎるベッドの上に寝かせられる。


 部屋に完全に入った事で、甘い香りに気づいた。

 城にいた頃に、性行為に不慣れな者同士が行う際に、うまく事が進みやすいようにする等の術がかかった香の香りだと。

「ちょっと、待ってください!! いきなりこういうのは不味いと思います!!」

 上半身を何とか起こして止めようとするが、全員聞く耳を持たないようだった。



「ダンテ……お前は本当に私の事を大事に思ってくれていた……だから最初求めた時、未遂だったのだ……その上それ以降お前はそのようには触れてはくれない私が傷つくのが嫌だからとな……」

「兄……エドガルド……」

 いつもの生真面目な表情ではなく何処か妖艶な色を宿してエドガルドは私の指を舐める。

 肉厚的で紅い舌が私の褐色の指をねぶる。

「でも……私はそれでもお前に触れて欲しくて、抱かれたくて、口づけがほしくてたまらなかった……でもお前は大切だからと与えてはくれなかった」

 歯型が軽くつく程度に指を噛まれ、漸くエドガルドの口から指が開放される。

「私が一番でいいだろう……? 私はお前との子は生せないのだから」

「あの、エドガルドその……」

 エドガルドに、私の言葉は完全に届いていないようだ。

 何があったのかしらないが、色んな意味で切羽詰まった状況にいるのだろう。



 恋とかロクにしてない私だが、自分の方が過ごした年数が多くても。

 きっとエドガルドは「自分は伴侶」にならないというある種のデメリットと、合わせて自分が見てない所で、色んな立場の存在とまぁフラグを立ててる私の存在に我慢できなったんだろう。


 エドガルドの言葉通りなら「伴侶になれないなら、最初が欲しい。ダンテの初体験の相手になりたい」なのだろう。


 他の誰かが手をつける前に。



 エドガルドの言葉を皮切りに、他の皆も各々の願望を口にし始めた。


「僕も、ずっと触れて、抱いてほしかった……こんな汚い体でも綺麗だっていってくれたから、本当にそうだって思いたかった……だから……」



「不必要とされた私に、傍にいて欲しいと大切だと言ってくれた、そして気づかせてくれた。そんな貴方に私は愛されたいのです、触れ合いたいのです」



「初めて会った時、一目で恋に落ちたよ。家の事とか気にするよりも、貴方の傍にいたいと、愛し合いたいと。でも貴方はそういうのには気づいてくれず、ただ大切だからで、先には進んでくれなかった。だからもう、我慢できない」



「アルバート様……いえ、アルバートと同様俺も恋に落ちたんだ。普段の凛としたたたずまいよりも、本来の何処か不器用で、臆病で、それでも優しいお前が好きなんだ。そんなお前と触れ合い、愛を語らいたいのに、お前はいつも『大切だから』で逃げていたからもう俺は、俺達は我慢しない」



 神様からセックスするなという事に関して、私の逃げ方が五人を我慢の限界にまで引き上げてしまっていたようだった。

 セックスレスとか性行為への不快感が別にある訳ではないようだけれども――



――この展開よりマシな展開はなかったんかい?!?!――


 と、心の中で叫ばざる得ない。



『お前がスパダリできるなら考えたぞ』

――無理に決まってますー!!――

『だろう、だから諦めろ』

――うわー!!――

――ちくしょうー!!――



 神様からの止めの言葉に絶叫する。



――俎板まないたの鯉よりも遥かにひどいわ!!――



 そう思いながら、意識が遠のきそうになった。







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