「ここか……」
「数十年に1度スタンピードを起こし、
シーライド王国に
もたらす、といわれている
ダンジョン―――」
アスタイル王国の使者と、シーライド王国の
召喚者同士の会議から2週間ほどして、
俺たちは王国の王都から離れた、とある
辺境の洞窟のような場所へと来ていた。
シーライド王国の召喚者たちは、
『いざという時』は動員される予定だった
ため、現地に何度かおとずれており……
「スタンピードってアレだよな?
魔物の群れが出てくるっていう」
「ゲームとかではお馴染みのようだけど、
実際はどうなのかしら?
入り口をふさぐとか、そういうのじゃ
ダメなの?」
そのダンジョンの近辺を見ながら話す。
「入り口をふさぐのは試した事があるみたい
ですけど、その時は別の場所から魔物が
出て来たようで―――
容量が一線を超えると、どうも出て来る
らしいんですよ」
「ですので今では……
定期的に様子を見て、それで対応する事に
しているようです」
シーライド王国側の召喚者が口々に語る。
「ですが確かに、これを封印もしくは
消滅させる事が出来れば……
たいていの要求は通るでしょうね」
話し合いの場にもいた、女性召喚者が
両手を腰につけて軽く一息つく。
結局、あの会議では―――
シーライド王国が提案した、
『
無い限り』
という条件を逆手に取り、
『ではそれくらいの手柄や功績を上げた
場合、話を通すという事で』
という形で妥協、落としどころとし、
長年シーライド王国を悩ませている……
このダンジョンへとやって来たのだった。
「しかし、このダンジョン―――
正確にはこの中にいる魔物たちを全滅、
もしくは住めなくすればいいと思うの
だけど」
「達成条件としてはそうですが、
どうなんでしょうね……
ダンジョンコアとか―――
ダンジョンマスターがいれば話は
早いんですけど」
俺と武田さんが隣り合って話す。
「シーライド王国でも、全容はわかって
おりません。
何度か調査隊も組まれたそうですが、
全員未帰還。
召喚者である我々は一応戦力として、
スタンピードがあった場合の切り札
ですから、本格的な調査には同行して
いませんし」
彼らはあくまでも王都防衛用なのだろう。
それをスタンピード前に失うような使い方は
出来なかったに違いない。
しかし、魔物がここで繁殖しているのは、
疑いようのない事実。
とにかく調査をしない事には始まらない……
アスタイル王国・シーライド王国召喚者
連合は、ダンジョンへと足を踏み入れた。
「たあっ!!」
「ハッ!!」
『
『
先頭で次々と魔物を蹴散らす。
出て来る魔物はゴブリンやオーガタイプが
中心だが、虫やコウモリのようなものも
時々出現し、
「さすがアスタイル王国の使者に選ばれた
召喚者―――
さすがですね」
「こちらにも『
使い手がおりますが……
出番は無さそうです」
シーライド王国側にもそれなりの
スキル持ちがいるようだが、
何せ洞窟内なのだ。
あまり破壊力の大きな魔法は使えない。
下手をするとこちらまで巻き込まれる
からなあ。
そして俺たちはどんどん、ダンジョンの
奥へと進んでいくと、
「ずいぶんと広い場所に出たが―――」
「?? あれは?」
まるで体育館のような広い空間に出た
俺たちは、魔物から身を隠すようにして
中の様子をうかがう。
すると、何かの宗教儀式のように大勢の
亜人タイプの魔物が、何かに向かって
跪いて祈りをささげているように見え、
その先は……
玉座に座る何者かの姿があった。
「もしかしてダンジョンマスターか?」
「アイツがラスボスって事ね」
「―――?
いや、ちょっと待ってください」
戦闘準備を始めた彼らを制し、俺は
周囲に視線を送る。
そこには、明らかに人工的に造られたで
あろう、四角い水場、
そして直線と直角で造られた、仕切りの
ようなものや、台所らしきものも存在し、
「ゴブリンやオーガは、ああいうものを
作るんですか?」
俺の質問に……
シーライド王国側の召喚者たちは
首を横に振る。
「いや、集落を作ったり道具を使ったり
する事はあるが」
「ここは明らかにレベルが違う。
ダンジョンマスターがいるとはいえ、
ある程度文明的な営みをしている。
これは異常だ―――」
困惑しながらも分析と理解に努めようと
していると、
「グギャアアァアアッ!!」
「! 気付かれたか!!」
そこで俺たちは、魔物の群れとの戦闘に
入った。