遠い未来、とある絵本はこう記す。
このせかいは、いせかいから
しょうかんしゃたちをよびよせて
いました。
あるとき、そのしょうかんしゃのなかに
まおうがきてしまいました。
まおうはあっというまに、せかいじゅうを
しはいし、かっこくのおうにたいして
こういいました。
「もっとおまえたちがころしあうところを
おれはみたい。
だからもっとひとがふえるよう、おれが
てつだってやろう。
20ねんご、ひとがいっぱいふえたら、
くにどうしでせんそうをはじめろ。
そして、さいごのいっこくになるまで
あらそうがいい。
ふははははははは……!」
かっこくのおうたちはなやみました。
どうすれば、こんなむちゃくちゃな
ようきゅうからのがれられるのか。
そんなとき、ひとりのこどもが―――
まおうがだしたじょうけんをみて、
こういいました。
「みんなでなかよくしちゃ、だめなの?」
そう、まおうがだしたじょうけんのなかに、
「もしどうめいをくんだくにがさいごまで
りょうほうともいきのこったら、そいつらは
りょうほうともいかしてやる」
と、きめてしまっていたからです。
かっこくは20ねんご、みんなでどうめいを
くんでしまいました。
これでは、どこともせんそうはできません。
このことをきいたまおうは、じたんだを
ふんでいかりくるいましたが、どうにも
なりません。
だって、まおうがじぶんできめた
じょうけんだからです。
「もしおまえたちがせんそうをかってに
はじめたら、そのときおれはもどって
くるぞ」
そういいのこし、まおうはさって
いきました。
そうしてせかいはへいわになりました。
めでたし、めでたし。
「……これ、事実でしょうかね」
オフィスビルのような建物の中で、
ある研究者がその絵本を見ながら語る。
「さてなあ。
その絵本、200年以上前のものだろ?
それに今の技術の元は、召喚者たちが
もたらしたものとされているんだ。
まあ、召喚者を
そんな記録にして残した可能性は
あるがな」
上司と思われる女性が男言葉で答え、
「ですよねえ。
わざわざ戦争させるために人を増やす
なんて、意味がわかりませんし」
研究者の青年は注意しながら、その
古い絵本を閉じる。
「でも召喚者がいたのは、
事実なんですよね?」
「まあ、そうは言われているな。
確かにある時を境に、急激に文明・
文化が発達しているし―――
それに我がアスタイル共和国でも、
先祖が召喚者だと称す家は多い。
アマギリ家とかクマガヤ家とか、
シラハセ家とかが有名だ」
それを聞いた彼はため息をつき、
「うへえ。
みんな、王国だった時代からいる、
財閥とか名門とか言われる家じゃ
ないですか」
「ただ、国家貢献度は高いぞ。
ほら、この前『スキル解放戦線』とかいう
テロ組織が出てきただろう」
女性上司の言葉に彼は首を傾げ、
「確かにいたような気がしますけど、
すぐに逮捕・鎮圧されたんじゃなかった
でしたっけ。
ていうか今時、スキルの優劣で
身分を決めろなんて流行らないッスよ。
特にこれだけ魔導具が発達している
現代じゃ。
それがどうかしたんスか?」
「それを裏で叩き潰したのが、その三家って
噂があるんだ。
召喚者というのは
持っていたと言われているが、彼らの
元の世界には、そんな能力は無かった
らしい。
だからスキルで好き勝手するのは、
許さないよう自重していたんだと。
そしてその家訓が今でも生きている
ようだ」
へえー、と感心する研究者に、
「そんな事よりお前、シュロランド市国で
開催される、学会の用意は出来ているん
だろうな?」
「あ、それは後―――
シーライド民国から資料が届けば、
終わります。
それより、新しく出来た料理店に
行きませんか?
何でも、グレメン連邦のうまい料理を
食わせてくれるみたいで」
「辛いのであれば可」
「多分あるんじゃないですか?
それじゃ行きましょう!」
そして男女の研究者が部屋を出ていくと、
一冊の絵本だけが残された。
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『バグ無双・自分に当たり判定はありますが攻撃判定は
ありません』後書き
最後までご愛読頂き、ありがとうございました。
アンミンです。
ネオページオリジナルでは初の完結作品となりました。
(;・∀・)ていうか、本当は題名を
バグ無双・自分に当たり判定はありますが
ダメージ判定はありません
に変更したかったんですが変更の方法がわからず、
完結までやってしまいました。
表題が変更出来るみたいだし、そこ変えれば
いいのかな?
また、ネオページで新作を書くかどうかは未定です。
もし機会がありましたら、その時まで失礼いたします。